表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
31/644

31.戦闘

「『陰王いんおう発剄はっけい』!」

「やめましょうよ……」


 呪刀を出し臨戦態勢を整えた今村に対し、気が進まないながらも殺されるわけにはいかないと臨戦態勢に入る祓。最初に動いたのは今村だった。ローブを地面に突き刺し、思い切り伸ばすことで推進力として祓に斬りかかる。


「『呪死じゅし裂断れつだん』っ!」


 振り下ろしざまに技名を言いながら祓の前で刀を振り下ろす。するとその直線状に黒い斬撃が生み出され、祓に襲い掛かる。だがそれは呆気なく避けられた。


(ちっ……最初に食らったのが痛むな……テンション上げていかねぇと……)


「あの……それは危ないので後で返しますから今は奪わせてもらいますね……? 後で返しますから。」


 避けた祓は今村が痛みで思考を逸らしていた隙に今村に急接近していた。祓が手を出し、呪刀を奪おうとする。しかしそれはローブによって弾かれた。


「舐めんなよ? 『アルカホル』っ……」

「それは隙だらけですっ!」


 痛みを鈍化させるために術を発動させ、一瞬だけ酩酊状態になった今村。しかしそれは祓にとって絶好のチャンスとなってしまう。


(いやに乗れない……何でだ?)


 今村は疑問に思うがそれよりもと目の前のことに集中する。今度こそ今村から呪刀を奪いとることに成功した祓。しかしその直後、呪刀から祓は弾かれ、呪刀を近くに取り落したそれを見て今村はにやりと笑う。


「俺専用の呪いがかかってるんでな……いくぞコラ。」


 今村がそう言って襲い掛かろうと地を蹴る。その刹那祓は短く言った。


「……許してくださいね……『我が願い聞き届けたまえ』」


 二人の間に一瞬の間が訪れる。そしてその瞬間に祓は今村の腹部に双掌打を打ち込んだ。今村は息がつまり空中で静止し、動けなくなる。


「……ごめんなさい……でも……」

「別に謝んなっと。」


 しかしすぐに復活した今村は至近距離にいた祓の左腕を取ると背後に回り関節を極めた。さらにそれだけでは留まらずローブを使い、足関節も極める。そしてそれが終わると自分で極めていた関節もローブ任せにして立ち上がった。


「これでよし。後は……何でカードで戦ってるんだあの理事長は……もっといい武器あるだろうに……」


 関節を極めた今村はタロットカードを用いて戦う理事長とチャーンドの方を見る。するとチャーンドもこちらを見て攻撃を強くし始めた。


「こりゃ気ぃ遣わせちゃったかな……? ってうおっ!」


 チャーンドの戦いを見ていると背後から急に衝撃。見ると祓が立ち上がっていた。


「うっそぉ……人間なのに、自分で関節外した……? 痛くねぇの……?」


 あの拘束から逃げ出したということはそういう事であるとわかってはいるものの訊かずにはいられなかった。祓は律儀に答えてくれる。


「それは痛いですよ……でも……やっぱり、無傷じゃ無理ですか……先生、ごめんなさい……」

「咄嗟に衝撃逃がさなきゃ脊椎不随になってるなこりゃ……」


 途中から独り言になっている祓の言葉を無視して短い思考で自分のダメージを確認する今村。対する祓が関節を外したというのに平然としているのを見て能力を推定する。


「回復出来るのか……厄介な。」

「騙されているんですよ先生は……後で治すので許してください……『我が願い聞き届けたまえ』」


 その瞬間祓のスピードが急上昇。今村は虚を突かれるも咄嗟に防御に回った。乱撃に次ぐ乱撃。その中で今村も反撃に転じようと攻撃に出る。


「ッ痛っ!」


 しかし、その攻撃は戦闘開始からあったダメージと先ほど新たに加えられたダメージで鈍ってしまった。


 その隙を見逃すほど祓は甘くない。全方位にしていた攻撃を攻撃のために空いた空間に叩き込む。


「ちぃっ!」


 今村はそこに意識を集中させてしまった。その直後空いた空間に意識を集中したため防御の意識が薄かった今村の頭に今まで一度も使っていなかった祓の蹴りにより強い衝撃が叩き込まれた。


「っが……」

「本当にごめんなさい……」


 今村が踏鞴を踏んだ瞬間。祓はアッパーカットを放った。そして今村の意識は刈り取られる。

 祓はそれを優しく受け止め戦闘時に邪魔にならないように「死に中州」の端に横たえた。


「後でいっぱい謝りますから……」


 そう言ってチャーンドの方を睨んだ祓。今村に土がかからないように少しずれた所から飛び掛かろうとして急に頭上が暗くなったことで異変に気付く。


「……? 何か暗い……?」


 気になって後ろを向くと血の様に真っ赤な水が上から迫って来ていた。


「? 何これ……」


 呆気にとられているとその水は今村を包み、崖の下へ運搬を始める。それを見て祓は今村を持っていかれるにはいかないと今村のいる場所の少し下に攻撃を加え水の流れを止めようとする。だがその水に触れた矢先、祓の腕は溶け落ちた。


「っ―――! 『キュアモーラル』っ!」


 声にならない悲鳴を上げ、術を使う。すると腕は元通りになった。


「はあっ……はあっ……先生は!?」


 自分の身に起きたことを理解してすぐに今村を探す祓。酷い怪我を負っているのではないかと心配するも何故か今村は溶けていなかった。


「よかった……でも今は大丈夫でもどうなるか……怪しいのはイシュアバル……! 早く倒さないとっ!?」


 今村を気遣っている間に祓は背後から急襲を受け、背中を袈裟切りに斬られる。しかし、それはすぐに元に戻った。


 祓は何事もなかったかのようにしつつも冷たい怒りと共に襲撃者の方向を振り返る。


「……あなたがいなければ先生を攻撃なんてしなくてもよかったのに。」


 怒りのこもった目でチャーンドを睨みつける祓。チャーンドは同じような視線をぶつける。


 新たな戦端が開かれ、激闘が繰り広げられる。そしてその戦いが始まりしばらくしたとき、「死に中州」の上のどこを探しても今村はいなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
よろしければお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ