表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
15/644

15.答えない答え

 部屋を出てすぐの祓は今村に憤懣やる方ないと言う状態だった。


(……もう少し私のことを見て、話をしてくれても……)


 祓にとって今村は最初は自分のことを襲わなさそうというだけの認識で、次に理事長が言うから仲良くしようとした対象。


 しかし、それから毎日顔を合わせ、会話をしていく間に祓はだんだん自分の意志で今村と仲良くなりたいと思っていた。

 そんな祓に対して今村は忙しそうに最低限の会話しかしない。祓の方から歩み寄っているのにもかかわらずだ。そのため今回の宿泊で祓は少しは時間に余裕が出来るはずの彼ともう少し話をしようと思っていた。


 そんな所に先程のような今村の言動。まるで赤の他人のように扱われた祓は今村に何とかしてこちらを向いてもらおうと少なすぎる対人関係の経験と知識を思い起こしてして考える。


(……先生が魔導書を読んでる間に見た本にはこの国には『裸の付き合い』というものと『ノミニケーション』というのがあった……今から夕飯。まずは……)


 祓は持っていた携帯を使い小声でどこかと連絡を取り始める。その間の今村はずっと刀を見て、目の前にある動く物に付いて行くのに必要な分だけしか辺りを見ていないので祓の様子に気付かない。


「あ、えっと……私です。あの、大至急シャドー・クリマン・バルザッグとコルマン・シャルルマーニャ……あとモンラッツェ・マルト・ド・ラギッシュ……年代はいつものでいいです。あ、後追加でシャトー・ディエケムも……後は……アフトクラトリアの自治区の肩へおすすめのお酒を大量に……」


 祓は一気にこれだけ頼むと一方的に電話を切った。そして今村の方を見て内心で呟く。


(……コミュニケーションです。)


 その眼は何かの決意が固められていた。




 短い移動中にこんなことがあったと知らない今村は刀を見ながら祓の部屋に入る。部屋に入ると流石に刀をしまい。テーブルの上にあるものを見て絶句した。


「……これ全部お前が作ったのか……?」

「? はい。」

「……今の時間で?」

「はい……どうかしました?」

「凄すぎるだろ……」


 テーブルの上には所狭しと料理が並べられておりそのどれもが美味しそうな匂いをたてている。そんな状況に驚いていると部屋の一角に急に酒瓶や樽が現れ部屋を酒気で満たす。


「……転移陣か。便利そうだしメモっとこう。」

「あの、本日は飲みますよ。先生。」


 急に現れた酒類にそんな感想を抱く今村の目の前に祓は酒を持って来る。そんな祓に今村は若干訝しげに尋ねた。


「……お前14だったよな? お酒は15になってからだぞ?」

「フェデラシオンでは12からです。」


 はっきりと断言する祓。今村は首を傾げてどっちに従ったらいいのかと考えるが割と自分も13歳くらいから飲んでいたのでどうでもよくなり、思考放棄した。


「まぁいっか。飲むか。」





 二時間後。


「あっはっは。うん。美味しい。白ワインは辛いのが多くてあんまし飲めなかったけどこれ美味しっ甘いのも美味しい。」


 いくつか空にするほど飲んだ今村は上機嫌で酔っていた。そろそろ頃合いかと思った祓は話を切り出す。


「……それで、さっきはどうしたんですか?」

「ん~? 大したことはないよ~? ちょっと『呪式照符』の情報で前世の記憶が結構戻っただけ~記憶酔い? 的な感じ。」

「……そうでしたか。」

「うん。だからまぁ色々やらないといけないことができたんだよな~ま、単純作業の抜け道思い出したからプラマイゼロって感じ~」


 若干ウザい口調になった今村。言っている内容があまりよく分からなかったので祓は更に訊いてみる。


「……やることとは?」

「ん~? 『白礼刀法はくれいとうほう』と~『かぞえ殺し』。体のなまりが心配だね~」


 今村はそう言ってさらに酒をあおる。これから急に危ないことをするわけではないと分かった祓は安心し、次の質問、核心に迫ることへと移る。


「……あの……私と……もっと仲良く……できませんか?」

「ん~? 仲良くって何やるの?」


 今村は質問に質問で返す。しかし、祓はそう聞かれて困った。これまでテレパスと魅了チャームの所為で仲良くした経験がないのだ。


「……何を? ……そうですね……とりあえずもっと話しませんか?」

「これ以上? 何を?」


 頑張って会話を増やそうという提案をした祓に胡乱な目で今村は尋ねる。祓はいよいよ困った。


「……えっと……お互いのことをもっと知るための会話とか……」

「知っても大したことはないと思うけど?」

「いえ、知りたいです。」


 この質問には即答する祓に訝しげな視線をぶつける今村。祓はそれを受け止める。しばらく沈黙が場を支配するが、今村が先に折れた。


「あ~大して面白いこともなかった人生だが……まぁ知りたいならいいか。でも今日は今から『雲の欠片』作るからまた今度。」


 今村はそう言ってまた酒をあおった。




 ここまでありがとうございました。


 一章が終わったら一応この世界の説明入れますけど思ったより長いので少しだけ。


 この世界は基本今私たちがいる世界と同じ世界水準です。そして世界は五つの国で構成されてます。(名前は後程)


 成人年齢は各国で違いますが今村がいる場所は15で成人です。


 魔法はごく一部の人が存在を知ってますが、一般的にはないという感じです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
よろしければお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ