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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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16.雲の欠片

 一応祓との話が終わり、場に残った食べ物も少なくなると今村はおもむろに呟く。


酒気円分化しゅきえんぶんか


 そう言い終わると今村は急に素面に戻り、祓に告げる。


「ご馳走様。美味かったよ。」

「あ……どうも。」

「じゃ、『雲の欠片』作りに行ってくるから…何かあったら言って。」


 そう言って今村は席を立つ。しかし、祓は今村を呼び止めた。


「あの……それ、手伝うことはないですか……?」

「あ~? いや……そこまでやってもらうわけには……」


 今村はやんわり拒否しようとするが祓は何故かここでも引かなかったので今村はその申し出を受けることにする。




 実験のための部屋になった一室へと移動して、今村は祓にもわかるように理論を省いて何を作るのか説明することにした。


「じゃあ説明します。えー『雲の欠片』ってのは要するに大気中の水分を形状記憶させて凝固することをを思念操作で可能にする為の装置的なものだ。」


 祓は今村のこの説明では何を言っているのかわからなかった。それは今村にも伝わったようで今村は言い直す。


「……要するに水のベッドを念力で作る為の装置を作ります。」

「あぁ……そうなんですか。」


 今度は何となくわかった祓。今村はそれから簡単に祓にやってもらうことを説明した。しかし、今村的にはわかりやすく説明つもりだが、祓には殆ど理解出来なかったので魔力で水分の安定だけしてもらうことにする。


(……やっぱり前世の時代の技術はなくなってるのかな~あの三神生きてるなら説明しとけよ……)


 そう心中で愚痴りながら「雲の欠片」を作り続ける今村。しかし、そんな今村にとって余裕の製造方法の中には危険で難しすぎる工程が盛りだくさんだ。

 細かい力の使い方が苦手なあの三神では説明も実践もできないということをこいつは分かっていなかった。

 無論、横で見ていた祓には危険が分かっていたが……その部分だけ見ていないことにして一人お風呂に向かった。


 そんなこんなで時は流れて夜が明け、空が明るくなってき始めたときにそれは完成した。


「お~これで外でも快適に寝られる。」

「んぅ……完成ですか?」


 徹夜明けでも普通に、いやむしろ逆に元気な今村とかなり眠そうな祓。とりあえず今村は雲の形を模したブローチを手に、起動してみる。


「『雲の欠片』」


 今村がそう言うと部屋の中に黒雲が立ち込め始めた。


「ちょっと待て、何で黒雲? 普通、白いはず……」


 今村の呟きを無視して黒い雲は実験器具の少し上の方を覆い尽くした。今村は目の高さにあるそれを触って頷いた。


「まぁいっか。うん。言われて見れば俺が創る物ってこんな感じになってた気がする。ということで成功にしよう。あ~やわっこいねぇ。これでよしだよ。ローブ『ウォッシュ』」


 今村の命令でローブから水が出て今村の表皮が濡れて汚れを浮かせると、次の瞬間には燃え上がり、綺麗さっぱり汚れなどを燃やし尽くす。その確認を終えた今村は綺麗になった。


「よし、寝よう。」

「……あの、急に燃えられるとびっくりするのでやめてもらえませんか……?」

「いつもはしてない。今回はこれ早く使いたかったし、家には合宿の終わりの時間を昼時って言ってるから、帰るまでの時間がもう残り僅かになってて使っただけ。お休み。雲。枕。」


 今村は祓の抗議を流してローブで雲の欠片の上に上がると横になった。すると頭の部分が隆起してちょうどいい高さの枕になる。


 だが祓はそれよりも気になることがあった。


(……結界が張られてる……『幻夜げんやの館』にすでにあるのに……自分の周りにまた張ったんだ……が襲ってくるかもしれないと思って……)


 今村が自動的に結界を張って寝ているのを見て祓は悲しくなる。自分位は信用してくれてもいいのではないか。私のことを敵だと見做しているのか。そんな思いが胸に宿ると祓はないと言っていた感情がまた揺れるのを感じる。


 彼女は考えて、どうするか悩んだ。そして一つ考えを思い付いたのでそれを実行した。


(私が、無防備でも何もしないって、分かって貰わないと……それなら私も警戒してちゃダメだ……同じように、しないと……)





 AM12:30今村は目を覚まし、固まった。


(何かいるし……)


 今村の至近距離には無防備に眠っている祓の姿があった。今村は状況が全く理解できなかったがとりあえず祓を起こさないようにそっと抜け出そうと試みる。


「……ん……おはようございます。」


 だが祓は若干の色っぽい声と共に伸びをして起きた。今村はとりあえず内心頭を抱えながら真顔で言った。


「……えーと? 何してんの?」

「? 寝てました。」

「……それは見ればわかる。あのさぁ『雲の欠片』は確かに寝心地最高だから眠くなる気持ちも分かる……けどなぜこんな至近距離に?」


 今村は未だ形の良すぎる花が触れあわんばかりに近くにいる祓に問いかける。祓は首を傾げて訊き返した。


「? 何か問題でもありますか?」


 その様子を見て今村は諦めた。


「あー…もういいや。間違っても他の男にするなよ? 俺は変人だから大丈夫だったが、大体こういう状態は大変なことになる一歩手前だからな? こういうのは本当に好きになった奴としかやるな。」

「好きな人ならいいんですか?」

「……時期を見てな。すぐにそういうことしたらダメだからな?」


 親のように説教をする今村に祓の思いは届いていないようだった。そして今村は一通りの説教をすると家に帰った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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