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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
章間5
112/644

三です。

人物紹介


 サラ:サラ・ドラゴニカル・ヘヨルミ。地獄の女帝。破壊的な胸囲を誇る美女。



 チャーンド:今村の友人役。少なくともチャーンドはそう信じている。女と見間違えられる美しさだがれっきとした男。




 ヴァルゴ:ヴァテン・ルへテン・ゴクハブラ。今村に助けられて今村に惚れる。完全なる幼児体型に丸顔。美幼女。最近新しい体に入って神になった。



 タナトス:妻帯者。相手は寧々。本人は関与を否定し、アリスを好きだと言い続けている。



 アーラム:今村達がいる世界の創造神。今村のことをぃと呼んで慕っている。美少年。ショタ。




 アリス:絶世の美女。今村の姉を自称。だが、異性として今村のことを愛している。本格的な出番はもっともっとずっと後。

「さて…この者の魂の逝き場所についてだが…」


 ある日の魂の裁判所、そこには閻魔がいて、判決に困っていた。


「…お前は可もなく不可もなく領地を治めておったが、晩年に今村仁様を殺害しようとして返り討ちに遭った。その際、天明祓…コロル・ネージュを襲った…その罪で通常地獄逝きなんだが…」


 魂の持ち主、リッシュもとい毘舎利はそこで詰まる閻魔を見て黙って判決を待っていた。


「天界から引き渡し要請が出ている。」

「なっ!」


 毘舎利はそこで顔を跳ね上げた。人を襲ったのに天界に行けるというのだ。これを踏まえると相手を殺してもよかったという事に…


「何でも仁さんに手を出した馬鹿は私が直々に苦しめると天界の主が言っておってな…」


 天界からの要請書の『仁さんに手を出したゴミの処遇について』という文言から似たような言葉を抜粋する閻魔。そこで毘舎利が顔を顰めて考え込む。


「あいつ一体何者…?」


 あいつ呼ばわりしたことで周りの不快感が煽られ、雷が落とされる。内臓が焼かれる痛みをしっかり感じ取りつつ毘舎利はその場に崩れ落ちる。


「…それでお終いならば良かったが…冥界からも引き渡し要請が出ていてな…何でも仁に手を出そうとした阿呆をズタズタにすると冥界の主が言っていてな…」


 返事は出来ない。声帯も焼かれているからだ。…が、魂なので無理矢理治癒される。その様子を見ながら冥界からの要請書『仁に手を出したクズの処遇について』から同じような文言を取り出した閻魔。


「さて…儂としては法廷の独立を重んじたいところで、地獄逝きにしたいのだが…ふむ…困った。創造主様の耳に入ったらその程度じゃ済まないだろうしの…」


 真剣に悩む閻魔に対して毘舎利は震えていた。選択肢はどれにしても地獄しかないのだから。


(お…俺は何に喧嘩を売っていたんだ…?)


「なぁお前…どれにするべきだと思う?」


 閻魔は側近に尋ねた。すると、側近はすまし顔で、


「全て回せばよろしいかと。その頃にはアーラム様もお手が空かれると思います。」

「おぉ…それはいい案だ。よって貴様はまずは天界から行ってもらう。」

「えぇと…あぁ天界軍の実戦用斬りかかり人形になるんでしたね。壊れても肉体が壊れるだけです。安心して斬られてください。では『転移』。」


 側近の言葉が最後まで聞こえることはなく、毘舎利は暗闇の中に呑み込まれていった。



















「…さて、それでは四界会議を行う。まず報告からだ…」

「そんなことより、早くうちに毘舎利とか言うクズを渡せ!」


 開口一番チャーンドがキレた。ヴァルゴが軽くそれを受け流す。


「え~ですがまだ2日しか切り刻んでないんですよ~?その程度じゃ私の心が済みません~」

「こっちは2日も待っているんだぞ!」


 ヴァルゴとチャーンドが言い争いを始めるとそれを見ていたサラがその争いに入る。


「それならこっちも言いたいことはあるぞ?何故地獄の領分に手を出すのじゃ?」


 言い争いが始まると実力行使が近くなる。サラはともかく、ヴァルゴとチャーンドが争いを始めたら本気で大問題になるので今回の会議の進行役でもある現世の3男神の一人、タナトスがそれを止める。


「あー…それなら新しく空間を切り開いてそこで仲良く地獄を始めたらどう?」

「空間を切り開くって…そんな事出来るわけないに決まっておろう…」

「そうだ。仁じゃあるまいし…」

「まぁ流石に無理ですね~仁さんじゃないですので~」

「…その仁というのに会ってみたいんじゃが…」


 サラだけがよく分からないまま話を続ける。実際はサラも今村とは会っているのだが、名乗っていないのでサラはそんなことに気付かない。


「…じゃああのよく分からん空間でどうだ?」

「あそこは…」


 タナトスの言葉にチャーンドが難色を示す。そこがどこだかわかっているが、正確に把握しているのは今村が最後の戦いに連れて行ったメンバーだけ。

 その時半人前だったタナトスは知らないので、何故かある空間としてしか認識していないのだ。


「…魔界。かの?」

「そうだ。あそこなら大丈夫だろ…」

「む~…あそこ面倒なのがいっぱいだから嫌なんですけどね~」


 何も知らない3人はそれぞれの反応を示す。


(…あそこの正体は誰にも知らせないのが仁との約束…それに封印は解けないだろう…黙って送ってもいいか…?)


 いつの間にかそこに行くこと前提で話が進んでいる状態になっているのでチャーンドは了承する流れでそれに従った。


(さて、それはそれとして、地獄を見せないといけないからな…最初は何から始めるか。まぁ無難に爪からいくか…)


 今村の拷問術を思い出しつつチャーンドは毘舎利への拷問を考え始める。



 結果、今回の四界会議は報告すら無しで、毘舎利への拷問方法と処遇のみの話となった。



















「はっ!さっき何かもの凄い悔しいことが起こった気がする…」

「冗談とか言ってないでぇも頑張ってよ!」


 その頃、アーラムとアリスは2ヶ月ぶっ通しで戦い続けていた。相手は第2世界の神軍だ。


「やってるわ…それにしても…とっても嫌ぁな気分…ひとくんが何かしたのかしら…」

「前見て前!」


 第3世界の神では普通第2世界の神と戦うことはできないが、二人は軽い会話をしながら戦うことが出来るレベルに達していた。


「『全』様を返して貰おうか…」

「うるさいわ!『ブリエグラス』!」


 光り輝く氷塊が接近してきた敵を打ち砕く。


「あ~…『テンプテーション』!」

「そろそろこっちもかな『ファシネイト』!」


 アリスとアーラムが顔を向けた方の敵が裏切り行為を行い、敵の一部が混乱に入る。


「くっ…また…」

「愛は全てアリス様のために!」

「アーラム様のために!」


 敵の一部が混乱している間はほんの少しだけ休憩が出来る。そこでアリスは呟いた。


「…私のすべてはひとくんの為にあるんだけどね…」

「それ聞こえたらみんなやる気無くしちゃうから…」


 アーラムが呆れ顔でアリスを窘める。だがアリスはそんなことは聞いていない。


「それなのにひとくん見つからないし…あぅぅう…」

「うっ…」


 うっかり「魅了」されかかったアーラム。文字通り桁違いの魅力を放つアリスは別に意識したわけでもなくただ少し落ち込んで弱いところを見せただけだ。

 だが、それだけでアーラムですら「魅了」がかけられるほどの力を持っている。


(うぁ…姉ぇ…美人過ぎる…)


 かつての味方でもアリスを直視してその魅力に抗えたのはアーラムが知る限り2名。今村はその中の一人で、アリスが頑張っていたのに完全に無視するどころか別の人とくっつけようなんてしていた化物だ。


(ふふ…あの頃みたいにぃが今を本当に楽しむことが出来たらなぁ…姉ぇを兄ぃにすぐに引き合わせるんだけど…)


 かつてのことを思い出したアーラム。そして楽しい未来を思い浮かべる。だが、それにはまだ時間と切っ掛けが足りていない。


(今姉ぇと兄ぃを引き合わせると兄ぃの力じゃ姉ぇは振り切れない。姉ぇは兄ぃのことを崇拝の域まで達してるから兄ぃのことはもう大丈夫と思ってべったりだけど…)


 そこで一度敵を見てまだ大丈夫か確認する。まだ大丈夫そうなのでアーラムは思考の海に戻った。


(兄ぃは膨大な時を過ごして、表面上は戻ってるけど水面下じゃ大戦の時の心の傷が癒えてないし…もっと取り返しがつかない状態になってる。長く生き過ぎた兄ぃはどこかで終わりを求めてる。)


 アーラムにとって膨大な時は今村を元気づけるという目的、そしてその先に今村と一緒に遊んで過ごすという目標もあったため短く感じた。だが、今村には何にもない膨大な時は唯意味もなく流れ、結果残ったのはその時その時を楽しく過ごせれば後は別にどうでもいいという思考だ。


 今が楽しければそれでいい。だから自身の命を軽んじる。


 今が楽しければ後はどうでもいい。だから必要ないと思った過去のことをすぐに忘れる。


 自身の命を軽んじて、自分が人に何をしたのか過去をすぐに忘れる。だから人がどれだけ心配しても気付かない。


 そんな軽く、一人だけの生をアーラムは今村に生きさせるつもりはない。


「…頑張らないとね。」


 アーラムは心にもう一度そう誓い直して戦いを再開し始めた。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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