第二章「衝動は、その身を焦がす」12話
「はぁ⋯⋯」
大方予想通りの回答に、少しでも緊張した自分が情けなくて、ため息を吐く。
だが、当事者以外の2人は違った。
「凪様が⋯⋯」
「⋯⋯柊様が、“ノヴァ”研究の代表⋯⋯?」
驚きを隠しながら、どこか納得したように頷く美夢と、驚きを押し殺しきれず、驚愕と困惑の表情で埋め尽くされている鈴川さん。
まあ、俺の身近な活動と、〈武天鷺〉の実績のどちらを知っているかで、評価は変わるのだろう。
特に、〈武天鷺〉は〈SDK〉揃っての精鋭部隊。
戦闘能力に特化している節もあるだろうが、それだけではないのだ。
一芸だけでは生きてられない。
二芸も三芸も持っていなければ、生きてられない。
だから――というか、それを持っていることが移籍の条件であり、その才能も、何人もいるようなことでは、条件を満たすことが出来なかった。
まともな異能者であれば、不可能だろう。
俺は生憎、普通ではない。
「別に、隠してたわけじゃない」
「⋯⋯言う必要がなかった、と言いたいんですね?」
美夢の言葉に頷き、言葉を続ける。
「知ってると思うが、俺は元々第九番隊の人間でな。〈武天鷺〉に移ったのだって、研究結果が買われたからなんだぞ?」
「研究?」
「“ノヴァ”って言うより、異能者に対する研究だな。こことは違う研究所なんだが、そっちに資料は結構残ってるはずだ」
研究内容。
異能者の中でも、俺と似た境遇の人間。
その成り立ちと能力について、2年あまりかけて調べていた。
自分自身で実験することもあれば、遠出をして情報を探ることだってある。
研究結果が認められて、俺は〈武天鷺〉に移籍することが叶った。
「とはいえ、この場では俺以外関係ない話だ。そこは重要じゃない」
俺の研究は、“ノヴァ”の性質が、生命体へとどう影響し、どのように変異させるのか、それを確かめるものだった。
「皐月、俺の力では、お前の研究を手伝うことは出来ない。俺は、“ノヴァ”を放出できない。お前が作った回路に干渉することすら不可能だろう。機械いじりだとしても、俺よりも腕が立つ人間などいくらでもいる」
「ですが、僕の眼の前にいるのは、凪先輩です。これは、等価交換です。凪先輩だって、少しは興味ありますよね?」
興味がない、といえば嘘になる。
実際、構造についても案はあった。
なら、何故ここまでごねているのか。それが、自分でも分からない。
俺の困惑が顔に出ていたのだろう、美夢少し心配そうに、皐月はどこか苦しげな表情で俺を覗き込む(実際は俺のほうが身長は高いのだが)。
「⋯⋯凪様?」
「凪先輩、忙しいのは重々承知です。ですが、これは、僕たちだけの問題じゃない。今後の世界の問題です。だから、僕は、自分にできることを成し遂げたい。自分が生きている限り」
何とも気高い志だ。
確かに、これは俺達の、俺達だけの問題ではない。
だから――
「英雄とは、世界の味方だ」
「お前はまだ、英雄になることは出来ない」
「お前のいる世界では、英雄になることはない」
「ぐぁっ!?」
突然の頭痛に、膝の力が抜け、崩れ落ちる。
周囲は慌てて俺に駆け寄ってくるが、俺の意識は既に別のところにあった。
この声。
また、この声だ。
どこかで聞いたことがある声。
あれは――
「星は三度巡り合う。だが、近くに見えて輝きは違う」
「次に会う時は、その輝きが消えていないことを祈るぞ。柊凪」




