49.キリーナ3(ライゾン目線)
大量に持ち帰った栗をシャーロットは独自の勘で、すぐに茹でるもの、数日置くもの、ご近所に配るきれいなものに振り分ける。
「去年食べた皮ごと煮たものがいいわ」
キリーナはマロンペーストもいいし、実は焼き栗が一番好きと目を輝かせる。
「渋皮煮ですね。じゃあまずはそれを作りましょう。キリーナ様、手で剥けるだけでいいので周りの硬い皮だけ取ってくださる?」
シャーロットが言う。
「もちろん」
キリーナが目で手伝えと訴える。
「わかったよ、俺もする」
「こう割れかかってるのが剥きやすいですわ」
シャーロットが小型ナイフを渡してくれた。
「ありがとう」
こう淡々とする作業が苦手なのかもしれない。キリーナとシャーロットは連携を取り、キリーナが剥いた栗の産毛のようなものをシャーロットが串で取り除く。
「砂糖漬けにすると保存食にもなるんでしょう?」
昨年シャーロットがキリーナに教えたことだ。忘れないなんて偉いな。自分のためになることはすぐに覚える性質らしい。手と口をよく動かし、二人は次々に栗を処理してゆく。
「もういいだろう」
と俺が口を挟むまでしていた。
「そうですわね」
シャーロットまでも没頭してやってしまったようだ。向き不向き、得意不得手が誰にだってある。ちまちま、黙々なんて大の苦手だ。金にもならん。栗の鬼皮が爪に入り込んで痛い。
「こうして数回茹でこぼします」
シャーロットがキリーナに教えている。
「いつまで? この色が出なくなるまで?」
「いいえ。二、三度でいいかと」
「ふむふむ」
利口なキリーナはメモなど取らなくても記憶する。キリーナの特技だよ。
「こうして瓶を熱湯消毒して乾かしておきます。砂糖はこれくらい。塩も少し。冷めてから瓶に移します」シャーロットも自分の娘に話すように教え込む。「ライゾン様は甘いの苦手ですから、そんなに甘くないケーキやガレットにこの栗を乗せてもいいかと思います」
は余分だ。
「わかったわ」
キリーナもそんなこと覚えなくていい。いつまで一緒にいるのかもわからないのだから。
「あら珍しい。ライゾン様がうとうとしてる」
恐らくシャーロットが背中にブランケットをかけてくれた。
「忙しいのに私に付き合ってくれたんだわ。ありがとう」
とたぶんキリーナが突っ伏している俺の頬に軽くキスをした。そんなことしなくていいと父親ならば言うのだろうか。父親じゃないからちょっと嬉しい。
先程と同じように二人はまたぺちゃくちゃとお喋りに戻った。甘い匂いが立ち込めている。砂糖で煮詰めているのだろうか。別に目を閉じて聞き耳を立てているわけではない。本当に眠いのだ。安らかにさせる君の声のせいかもしれない。
そうか、王子はきっとキリーナの幸せを優先してくれたのだ。それだけキリーナを気に入っていたということ。
さて、困った。キリーナを自由になんてしてあげられそうもない。いつか手放すと思っていたのだが。そのとき、キリーナはどんな反応をするのだろう。泣き顔だけは見たくないよ。
おわり
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブクマ、評価いただけると嬉しいです。




