拷問にあったよ
狩野さんの妹を治療したあと、私は意識を失った。
能力の使い過ぎで、体も能力も満足に動かせない。
(ねぇポン吉、しりとりしようぜ。しりとり!)
《しりとり結構好きだよなお前。りこん》
(終わってんじゃん! ちゃんとやってよ!ンジャメナ)
《なん》
(おっま、ふざけんなし。ンゴロンゴロ)
《ロン》
(そうくると思ったぜ……ンババネ)
《お前どんだけしりとりしたいんだよ》
(だってさー、色々歴史修正してきたけどさ。狩野さんはなんか忠義の人になってるし、珠洲ちゃんには第二のお母さんと思われてるし……お母さん……って)
《涙拭けよ。嫌われてないだけいいだろ?》
(お母さんは、恋人になれません!)
《必死すぎて笑う》
ポン吉と、だらだら部屋で休んでいたとき急に誰かの気配を感じた。
(ポン吉……?)
《違う。コイツは……》
部屋のドアが、開く。
そこには――白いタキシードに白いシルクハット。顔には、ピエロの仮面。
ピエロマスク。
(なんで!?)
《おい、逃げろ!》
(動けない……)
私は、必死に体を動かそうとする。
でも、指一本動かない。
「やあ、ごきげんよう」
ピエロマスクが、ゆっくりと近づいてくる。
「あなた、何なんですか?」
その声は、低く落ち着いている。
「私のシナリオに存在しない。一体、誰なんです?」
(この世界ではわたしは異物だから、今まで認識されていなかったってこと?)
「シナリオの修正に次ぐ修正。原因はあなたですか?」
ピエロマスクが、私を見下ろす。
(いっつもそうだけどコイツほんと話聞かないよな)
「話をしに、一緒に来て頂きましょうか。」
《話聞く気ないやつに話しようとか言われても》
(ほんそれ、ってかまじやばい今何も抵抗できない……)
《まじのマジでやばいやつじゃん》
ピエロマスクが、私を抱きかかえる。
(まじのマジでやばいやつ)
抵抗できない。
(意識も保て……なさ……)
体が、言うことを聞かない。
そして――私は、連れ去られた。
気づいたら、廃屋にいた。古びた建物。壊れた窓。
私は、椅子に縛られている。
(ぶっちゃけ半魔を椅子に縛り付けたところでだよな)
《ほんそれ。まぁお前は文字通りでも足も出ない状態ですが》
「抵抗できないのは、好都合ですねぇ」
(ピィンチ!)
ピエロマスクが、笑う。
《ピンチのやつのセリフじゃねぇな》
「それで、話す気はないですか?」
(話したら全てがパァじゃん。ってか主語無いからなんのことかわっかりませーん)
《強気な姿勢はいいけどよ。今絶対絶命だぞ》
「あなたは、誰ですか? 何者ですか?」
(どうしよっか、これなんかされるパターンだよね)
私は、黙る。
《絶対痛いやつだぞこのあと》
話すわけにはいかない。
(襲われるとかじゃなきゃまぁ……)
「話す気はないですか、そうですか」
ピエロマスクが、ため息をつく。
「では、体に聞いてみましょう」
その瞬間――。
ピエロマスクが、ナイフを取り出した。
(痛いやつきたー)
「まずは、爪からですね」
ピエロマスクが、私の手を掴む。
「やめ――」
ブチッ。
爪が、剥がされた。
「ああああああ!」
痛い。熱い。痛い
マジ痛い。
超痛い。
「ほう、あなた不思議な体をしているんですねぇ」
ピエロマスクが、興味深そうに見る。
「血が飛び散らないので、楽で良いですね」
(くそ……もう戻らないんだぞ!)
《バイバイ爪さん》
(ちゃか……すな)
次の爪。
また次の爪。
全ての爪を剥がされた。
顔が、涙と汗でぐしゃぐしゃになる。
(やばいよおポン吉もう無理ぃ。喋っていい?)
《喋ったら殺されておしまいだぞ、多分》
「強情ですね。痛みで顔がぐしゃぐしゃなのに」
ピエロマスクが、指を掴む。
「では、お次は一本一本折っていきますか」
乾いた音が身体に響き、強烈な痛みが襲ってくる。
「あああああ! いっ……たいなあああああ!」
指が、折れる。
また一本。
また一本。
全ての指が、おかしな方向に曲がっている。
(痛い……本当痛い!)
《おい昴、お前……指の関節……増えてる!》
(まじボケるのやめて、殺すよ!)
その時――。
ピエロマスクの携帯が鳴った。
「おや」
ピエロマスクが、電話に出る。
(魔物が携帯使うとかシュールだな)
《シュールとか言ってられる状況じゃねぇがな》
「……そうですか。わかりました」
電話を切る。
「すみませんねぇ、私が直接やりたかったのですが」
ピエロマスクが、立ち上がる。
「別件でここを離れなくてはいけないので。あとは、この方にお願いしますね」
(痛い、一生この指なのー、やだぁ。治らないのにぃ)
扉が、開く。
そこには――女性が立っていた。
長い茶髪。色白の肌。グラマラスな体に大きい翼と長いしっぽ。
「はぁーい、私、色欲のラスト」
(この後絶対えっちなやつじゃん)
女性が、笑う。
《貞操の危機!》
「原罪魔群の一角よ。私、こういうの得意なの」
(快感って人間耐えらないんじゃなかったっけ……)
「痛みで口を割らなかったら、快感で割らせてあげるから」
《特にお前弱そうだからな》
女性が、近づいてくる。
「楽しみにしておいてね」
(ほんそれ。でも今は、痛みでそれどころじゃないんだよお)
それから――地獄が始まった。
「指はもう折れてるしぃ、いちいち聞くのもめんどくさいよね。あなたもそうでしょ? だ、か、ら」
ラストは両手で右手を持つと、膝に肘を置きぽきんと折られる。左手も同様に
(う……う……展開早すぎぃ)
《昴負けんなよ》
両足も同様に足を折られた。
「ああああぁぁぁ!」
(まけりゅ、もうまけでいいからぁ。ポン吉変わってぇ)
《昴……かわってやりてぇ。本当にできるならかわりてぇよ》
「これでもダメなの? うーん。骨折じゃ治るもんね。喪失の痛みがないと喋らないか」
(ごめんなさい、骨折も治らないのぉ。もうやめてぇ)
体は動かないと言うのに痛みだけは鮮明感じられる。痛みも麻痺してくれたらどれだけ良かったか。
ラストは置いてあったナイフを手に取るとスッと腕を振った。熱さを感じ手を見ると指を切り落とされていた。
「!!!!」
声にならない声が口から出る。悲鳴すら出ない。
涙が止まらない。
(もうやだよポン吉)
《……》
足の指を切り落とされた。
腕を切り落とされた。
足を切り落とされた。
(乙葉を抱く腕がなくなっちゃった……)
痛い。たすけて。
痛い。やめて。
痛い。もうやだよ。
だがそれよりも何よりも、手も足も失った醜い姿では、乙葉に愛してもらえない。
その事が一番辛かった。
「まだ話さないの?」
女性が、笑う。
「すごいね。普通なら、とっくに気絶してるよ」
(もういいよ……)
《昴、残った体は動くか? 能力は?》
(こいつは絶対殺す。殺すったら殺す)
「じゃあ、次は……」
女性が、何かを取り出そうとする。
その瞬間――。
(動く……使える)
まだ残っている肩がピクリと動く。
(殺せる)
《そしたら昴》
(ポン吉……)
《ああ、反撃だ》
欲望解放・深昇化
豪奢なタキシードドレスに身を包まれポン吉が、妖艶な狸仮面へと変わる。
虚空から這い出す光の線が四肢を形取る。
腕が、足が、指が、生成される。
見た目は全て元通り。しかし全ては虚構。されど実体を持つ四肢。
「え……?」
ラストが、驚く。
私は、椅子から立ち上がった。
「あんたは私を怒らせた。私の夢を奪った。だから……。」
私は、拳を握りしめる。
「お前の欲望、喰らってやるよ」
「……面白い」
ラストが、笑う。
「手足全てを失った状態から、復活するなんて」
「お前は殺す。わたしの未来をぶち壊しにしたんだ。それくらいしてもいいだろう?」
私は、ラストに向かって走る。
虚な複製品――槍と剣を作り出す。
ラストも、迎え撃つ。
未来で弱倒した相手だ。点は知っている。奴に攻撃系の特殊能力はない。
槍を放ちながら、剣で切り込む。
ラストは槍は避けられたが、わたしの剣により片翼を切りつけられる。
「強い、わね」
ラストは、笑っているがその顔に余裕はない。
ジリジリと撤退を狙っているのがみて取れる。
「でも、まだまだ!」
ラストの鞭が、私を襲う。
でも――。
(こんなもの防ぐまでもない)
剣で切り払い、ラストの背後から槍を出現させ翼を穿つ。
「くっ!」
ラスト、驚く。まだ撤退を諦めていないらしい?
「なら、これは!」
女性が、何かを放つ。
魅了の波動。私は薔薇色に包まれた。
その一瞬、脳裏には乙葉の笑顔が浮かぶ。
(ウケるな。そんなの聞くと思ってる事自体に)
《乙葉にとっくに魅了されてるもんな》
(その通り)
私は、昇化で少しずつ自分の速度を加速させる。ゆっくりけれど確実に。
「効かない……?」
ラストが、焦る。わたしが怯んだ隙に撤退しようとでも思っていたのか。
「なら!」
ラストが、全力で攻撃してくる。
私は、それに応じない。加速した今ラストの攻撃など止まっているも等しい。
剣で切りつけるが、戦闘向きではないとはいえ原罪魔群。体が硬いく傷が浅い。
(今)
私は、ラストの隙を突いてハンマーを生成。ガラ空きの腹に一撃を放つ。
ラストが、吹き飛んだ。
「がはっ……!」
ラストが、血を吐く。
「やるじゃない……」
「私はね、怒ってるんだよ」
私は、ラストに近づく。
「あんたはこれから死ぬ」
「……無理よ」
ラストが、笑う。
「私は、オリジンシン。そう簡単には……」
その瞬間――。
ラストの遥か後ろから飛来した槍が胸を貫いた。
「……え?」
ラストが、驚く。
「どうして……?」
「あなたは、私の夢をぶち壊した」
私は、冷たく言う。
「だから、許さない」
ラストが、崩れ落ちる。
「……そ」
そして――ラストは、消えた。
私は、その場に座り込んだ。
体中が、痛い。
能力の使い過ぎで、また意識が朦朧とする。
(ポン吉……)
《よく頑張ったな》
(手足なくなっちゃったぁよおおおおおお)
思い出したかのようにまた号泣する。
《能力で隠し切れば大丈夫だろ!?》
(わかってる……でもベッドシーンは!?)
《その時は……乙葉に攻めて貰えばいいだろ》
私は、立ち上がろうとする。変身が解けて手足の生成も解けていたようだ。
手足がなくちゃ体が動かない。
(そっか! それもありだねってなるかあ! もう一生おっぱい揉めないんだぞ! 私の夢が奪われた!)
《そのためだけに頑張ってきたのにな……性欲が原動力のお前にはさぞ辛かろう》
(そうだぞポン吉何とかしろ! ってか切断面めっちゃ痛てぇええええええええ!)
《ポジティブに考えようぜ。手足戦闘中どんだけ傷付いても再生できる様になるんだぜ!》
(百害あって一利しかねぇ!)
主人公を痛い目に合わせないと気が済まない性分で




