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第2話 盾役、有名配信者(同級生)を助ける

「この辺りだったような……」


 駆け足で声の方へ向かうと、開けた場所に出た。

 こういう空間には、中ボスクラスのモンスターがいることが多い。



 案の定、遠くに女性冒険者と大きめなモンスターがいた。

 

 あの大きな角の生えた姿は……。


「ミノタウロスか」


 ――ミノタウロス、牛の頭を携えた人型のモンスターだ。この距離からみても結構大きな固体だ。

 

 女性冒険者はと言うと、腕を押さえ片膝を付いていた。

 冒険者の要である機動力を失っている、あれじゃ逃げるのも難しい。


「――おーい! 大丈夫かぁー!!」


 大声を上げ、呼びかける。

 女性冒険者は鬼気迫る顔で叫んだ。


「君、早く逃げなさい! ここは危険よ!!」


 怪我してる方が言うのか……逃がしてくれようとするのはいいけど、自分のことはまるで考えてないんだな。


 グオオオオ!!!!


 ミノタウロスは大斧を振りかぶる。

 狙いは女性冒険者だ。


「させないよ」


 俺は剣で盾の表面をゆっくり引っ掻く。


 ギリィィィィ!!!!


 引っ掻き音が波となり反響、ミノタウロスの動きがぴたりと止まる。

 これはスキル【盾の咆哮】、モンスターのヘイトを自分へ向ける盾役専用のスキルだ。


 グルルル……。

 ミノタウロスの首が俺の方へ向く。

 そして、一目散に駆け出した。


 グルアアアアア!!!!

 巨大な斧が振り下ろされる。

 これを生身で喰らったらひとたまりもない。

 

「――危ない!!」


 バギィィン!!


「喰らったらの話だけどね」


 俺は左手の盾で防御、ミノタウロスの斧攻撃を受け止めた(・・・・・)


 グオ!?!?

 ミノタウロスが動揺する。

 攻撃を受け止められるなんて微塵も思ってなかったんだろう。

 大斧を盾に接触させたまま押し潰そうとするが、あいにくその程度の攻撃じゃ俺はやられない。


「コイツは俺が引き受けるよ、早く逃げ……」


 女冒険者はポカンとした顔を浮かべていた。


「あれ、聞いてる?」


 返事はない。

 やっぱ珍しいんだろうな……盾役で冒険者してる人って。

 きっと物好きな奴とか思われてるんだろう。

 今日も同接がなかった俺にその目は効く。


 グオオオオ!!

 ミノタウロスは再度斧での攻撃を試みる。

 このまま攻撃を貰い続けるのはジリ貧、なので反撃させてもらう。


 俺は盾で大斧を受け流すように弾いた。


 ガキィィンッ!!

 独特の金属音が鳴り響く。

 力の方向がずれ、ミノタウロスの身体がよろける。

 スキル【パリィ】、盾役の真骨頂とも言えるこの力。

 

 グ、グオオ……!?

 パリィを決められた相手は、数秒間スタンする。


 そして……。

 この状態で俺が繰り出す攻撃は、必ず致命傷(・・・・・)となる。


「もらった!」 


 ザシュ!!

 ミノタウロスの腹部に剣を突き立てる。

 分厚い皮膚を簡単に貫通し、傷口から血が舞い飛ぶ。

 俺の純粋な筋力だけでは、ミノタウロスを傷付けることは敵わない。

 しかし、パリィを使うことでこのように簡単に倒すことが出来るのだ。

 


 グオオオオ……。

 ずしん、とミノタウロスは倒れた。


 ほんと、過小評価しすぎだ。

 盾役は良い職なんだよ、昨今の地味なイメージだけが先行してるんだ。

 そりゃ出来たらカッコいい戦技とか使いたいよね、分かるよ。

 今日も今日とて同接は伸びなかったし。

 心折れるわ、0人は流石に。

 ほんと、ほんとさ……。


「――盾役を舐めんなああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 四つん這いになって地面にぶち撒ける。

 何だ、みんな派手好きか!

 見てくれだけで判断するな、中身を見ろ中身を! そこが1番大事だろうが!


「あ、貴方、大丈夫なの……?」


「ああ、悪い取り乱した」


「助けてくれてありがとう、この恩は忘れない」

 

 女子冒険者はペコリと頭を下げた。

 さっきまで気付かなかったが、綺麗な銀髪をしている。

 まるであの人気女子高生ダンチューバー、姫路トウコのように。


「気にすんな、俺もたまたま近くにいただけだし」


「ミノタウロスの攻撃を受け止めるだけでなく、一撃で仕留めるなんて……貴方みたいな冒険者は初めてみたわ」


「ははは、どうも」


 ミノタウロス程度(・・)のモンスターなら何回も倒したことはある。

 このくらいならどうってことない。


「私の『桜花』の斬撃がまるで通用しなかった……新宿ダンジョンの下層を甘く見ていた」


 女子冒険者はそう言うと、自らの得物の刀を撫でた。

 刀装備か……珍しいな。

 

 まるであの人気女子高生ダンチューバー、姫路トウコのようじゃないか。


 ……ん?


「あれ、もしかして」


「先に名を名乗るべきだったわね、私の名は姫路トウコ。ダンチューバーよ」


「え……」


 姫路トウコと名乗った銀髪女子。

 その後ろでは、配信端末がフワフワと浮いている。




 その様子を、配信カメラ越しに覗く不特定多数の人物。



 "救世主きちゃあ!"

 "盾で防いでなかったか!?"

 "もしかして盾役?"

 "ミノタウロス一撃ワロタ"

 "ヤバスギィ!"

 "白馬の王子様じゃん!"



 この時の俺はまだ知らなかった。

 今日を境に、ダンチューバーとしての大きな一歩を踏み出したことに。



【※読者の皆様へ】


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