第2話 こんな人事、あり?
「ライオネルさん、愛人になりにきました」
「言い方! もうちょっと言い方!」
「じゃあ側室で」
「単語を直せば良いってもんじゃないでしょうがぁぁ!」
という心温まるやりとりの後、ジェニファがガイリア王国政府に参画してくれることになった。
役職は官房長官。
ようするに俺の右腕である。
ロスカンドロス陛下の右腕ジーニカとか、イングラル陛下の右腕ミレーヌとか、そういう感じのポジションだけど秘書よりも権限はずっと強くて、俺の代理として対外交渉をしてもらうこともあるし、各大臣の調整役をお願いすることもある。
「もちろん、夫婦としての義務も果てしてもらいますよ」
「それはかまわないんだけど、本当に側室なんて地位で良かったのか?」
「最善は普通の夫婦です。ですが、それはもう望むべくもありません」
ふふっと笑うジェニファ。
俺が国王として即位してしまった以上、一般的にいう普通の夫婦というのは不可能だ。
正妃が六人もいる時点で、普通とはなんぞやって哲学に発展しそうだよ。
「平民と王様ですからね。側室なのはむしろ当たり前ですし、アスカちゃんたちを押しのけて正室っていう方が気まずいですよ」
「ジェニファがそれでいいならいいんだけどさ」
こんな俺を想ってくれていたなんて、感謝しかない。
「私からの条件としては一つだけですよ。子供が生まれても、けっして継承権をつけないでくださいね、と」
後継者争いなんて馬鹿馬鹿しいですからねと付け加える。
そうだよな。
俺だって望んで王位に就いたわけじゃない。
骨肉の争いなんて、見たくもないさ。
相変わらずの慧眼でけっこうなことだ。
「あと、人材不足の件ですが、アスカちゃんたちにも協力してもらいましょう。皆さん入ってきてください」
執務室のドアに向かって話しかける。
ややあって、ばつが悪そうに娘たち……じゃなくて妻たちが入ってきた。
立ち聞きしてたのかよ。
王妃になっても、やってることは子供そのものだなぁ。
「ミリアリアちゃん。あなた、宮廷魔術師になりなさいな」
「え?」
突然の指示にミリアリアが面食らう。
宮廷魔術師なんていったら、普通は魔術協会からエリートを斡旋してもらう。
紹介料も報酬も、そりゃもうとんでもない高額になる。
で、それをケチらないってのも国の格式なんだ。
ケチると、あの国はたいした宮廷魔術師も入れてないって馬鹿にされちゃう。
「大賢者なんて呼ばれるミリアリアちゃんなら、格式の上では問題ないでしょう。それに宮廷魔術師が国王の正妃となれば、魔術協会だって首を縦に振ります」
これで紹介料と報酬がカットできますね、と。
「なんという論理のアクロバット」
「でも、ありといえばありですよね。私も何か公務が欲しいと思っていましたし」
俺は呆れたけど、ミリアリアは案外素直に頷いた。
本人がやる気ならそれが一番だろう。
もし問題があるとすれば、魔法使いとしてのミリアリアの称号は一介の魔法使いにすぎないってことくらいかな。
魔導師の称号をもった宮廷魔術師だったら箔もつくんだけどね。
「でもまあ、小国ならメイジが宮廷魔術師でもべつにおかしくないか」
「ミリアリアちゃんの実績は大魔法使いにだって引けを取りませんよ」
くすりと笑うジェニファ。
もっともだ。
「メイシャちゃんは筆頭神官でアスカちゃんは近衛隊長」
「ネルママが望むなら」
「やった! 母ちゃんの横のポジだ!」
穏やかな笑みのメイシャと元気いっぱいのアスカだ。
「お金がすごくかかるポジション三つ、ただで埋められますよ」
「お見事」
苦笑とともに俺は肩をすくめて見せた。
宮廷魔術師も神官も、紹介してもらうっていったらそりゃあものすごい額の紹介料や寄進が必要なんですよ。
だけど、嫁をそのポジションにつけるっていえば、魔術協会も至高神教会も無理強いはしてこないだろう。まして大賢者ミリアリアや聖女メイシャの知名度を超えるような人材を紹介できるかって話にもなるしね。
近衛隊長にしても然り。
有力者が自分の子弟を取り立ててほしいと言ってきても、闘神アスカより強いですかって問えば、まあ引っ込めるね。
「メグちゃんとユウギリちゃんは……」
「いやス」
「遠慮しておきます」
間髪入れず二人は答える。
目立つことが大好きな三人娘とは違うからね。
メグはアスカたちとは反対に目立つこと大っ嫌いだし、ユウギリは慎み深いもの。
表舞台に出るなんて、普通に嫌がる。
そしてジェニファはちらっとサリエリに視線を送り、無言で肩をすくめた。
サリエリはのへのへ笑うだけ。
これで通じちゃうんだよなぁ。
無言語会話が怖いわ。
それにまあ、サリエリは俺の副将的な立ち位置だからね。変に地位を持たせて権限を限定させない方がなにかと助かる。
「官房長官と宮廷魔術師と筆頭神官と近衛隊長が妻で占められるとは、俺はどれだけ好色な王だと思われるんだろうな」
「ハーレム軍師がハーレム王になっただけなのぅ。たいして変わらないのう」
俺の慨嘆をサリエリが笑い飛ばし、笑いはすぐに娘たちに伝播していった。
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