風邪
土砂降りに有ってから1週間、私は高熱を出して学校を休んだ。その間もロンはいつもと変わらず私を起こしに来てくれた。というか、次の日から既に何もなかったのように振る舞われたのには少しショックだった。
私はロンの声を聞くだけでも必要以上に意識してしまっていたのに。
何なのよ、余裕ぶっちゃって!私だけドキドキシしてるのは不公平だわ。というか、なんでこんなにドキマキしてるのよ私!落ちつけ私!
頑張れ私!と意味不明な鼓舞を自身に思わず送ってしまった。
ーーーー熱も下がったので今日からまた学校に行くのだけど、今日は珍しくロンが起こしには来なかった。代わりに別の使用人さんが来てくれたのだけど、私はベッドから落ちていたし使用人さんは息切れをしていた。聞けば私が起きないので仕方なくベッドから突き落としてみたと謝られたが一生懸命起こしてくれたので怒る訳にはいかない。むしろ感謝である。しかし、今日はなんだかスッキリ起きれたので支度がスムーズにすすんだ。それから支度を終えてダイニングに行っても誰もいず、通学しようとしたところ護衛も車もなく。
おかしいと色々かんがえていた時、ロンがやってきた。だけど、何か様子がおかしい。
どこか気怠そうな………。顔が赤い様な………。
「ロン、貴方具合でも悪いんじゃない?」
ロンの額に自身の額を当ててみる。もちろん身長差が結構有るため、私が両手でロンの両頬を無理やり引き寄せ額に当てている格好になる。それでも身長差は出てくるので、若干の背伸びは必要だった。
「………っ!」
ほら、やっぱり。近くで見れば顔は凄く赤いじゃない!額も熱いし、頬だってこんなに熱が有るじゃない!
「ロン貴方、具合悪いなら寝てなきゃ駄目じゃない!何で教えてくれなかったの!」
きっと私の風邪が感染してしまったんだわ。あぁ、バカな私。また迷惑かけてる。内心少し落ち込んだけど、今はそれどころじゃない。ロンを寝かせねば!ロンを引きずりロンの部屋を急ぐ。
よほど具合が悪いのか、若干の抵抗はあるもののロンは無言で私に引っ張られてくれた。
ロンの部屋は私の部屋からは離れている所にある。普通使用人さん達は皆家から通ってくれていたり、さらに離れの寮になっている所に住んでいる。けれどロンは家庭教師と兼ねて執事だと言うこともあり離れてはいるものの本館で暮らしている。部屋に入ればベッドと本棚、机だけの殺伐とした風景が広がる。
ベッドにロンを押しこむのは骨が折れた。
こういうときだけ全力で抵抗してくる。言葉で寝なさいと言うだけでは従ってくれなかったので半ば押し倒す形になったのは致し方ない。ベッドに入った頃には顔が先程よりも赤く染まり、気怠そうで具合がさらに悪くなっているみたいだった。最後には抵抗する力も弱く、もはやされるがままだった。何より、気になるのは本日ずっと無言。
………喉も痛いのかしら。後で蜂蜜ミルクでも持ってこよう。
「とにかく!今日は寝てなさい。上司命令よ!」
一応雇い主であるお父様の娘なら上司よね?せいいっぱいの威厳がある風に見えるよう怖い顔をして言ってみた。いつもと立場が違うようでなんだか楽しい。そんな事を少し思ってしまったのは秘密である。
そんな私を虚ろな目で見てるロンは何か言いたげでのようだ。
もしかして、通学とかの事気にしてるのかな?ああ、そろそろ学校に行かないと行けない時間だものね。これ以上心配をかけちゃいけない。煩わしちゃいけない。
私は安心して貰うつもりで、大丈夫よと笑ってロンに見せれば、ジッとこちらを見つめたかと思えば溜息をついて眉間に皺をよせ目をつぶってしまった。
ちょっとは信用してくれたかな?目をつぶったままのロンを部屋に残し他の使用人にロンへの蜂蜜ミルクの差し入れと私の学校への送迎を頼んだ。
さて、今日こそレオに婚約者について教えて貰わなくっちゃ。こっちの問題は忘れてはいけない。早急に何とか破談に持ち込まないと!
気合を入れ直し学校へと向かった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
今日は更新出来ないかと思ったけど、何とかできました。
ゆっくり不定期更新です。
6月29日アイネスの起き方加筆しています。




