文芸会
「お嬢様………。それは?」
眉間に皺を寄せてシュンが呟く。
「えへへ。似合う?エレンさんがくれたんだ。」
クルリと回れば黒いミニスカートはふわりと揺れる。
アイネスの頭には猫の耳のついたカチューシャ、首には小さな鈴が付いたリボン。そして、ミニスカート風のメイド服。ご丁寧に後には猫の尻尾まで付いている。足は白いニーハイをはいているため太股はそんなに露出はしていないはずなのに、なぜだか出ている肌の部分に目がいってしまう。
おまけにいつもはポニーテールにしている髪の毛はこれまたメイド風に大人っぽく編み込みのアップにされている。
シュンは盛大にため息をつく。
これは今押し倒していいってことか?
不埒なシュンを尻目にアイネスは嬉しそうに話す。
「あのね、明日学校で文芸会が開かれるでしょう?その出し物の一つにメイド喫茶って言うのをやるのよ。」
あ、これナナの提案ね。
アイネスは嬉しそうにもう一度クルリと回る。
「そしたらその話をしたらエレンさんがくれたの。あ、ナナもクラスの女の子も同じの着るんだよ。あのね、これはナナの試練なの!この試練を超えなきゃいけないのよ!」
シュンの目は徐徐に虚ろになっていく。
「アイネス……意味がわからないんだが。」
そんなシュンに気付かず試練と言うわりにはアイネスはウキウキ楽しそうだ。
「あ、文芸会はシュンも来れる日だから是非私達のクラスに来てね!レオも執事するんだよ。何だったらシュンも手伝ってね!これは人生がかかってるんだから!」
「意味が全くわからないんだが……」
「あー!明日朝早いんだった!ごめんシュン。今日は私これからエレンさんとナナと打ち合わせ有るから。あ、ちゃんとバース家にはいるから探さなくていいよ!あと、今日はナナとエレンさんと寝るからシュン1人で寝てね!朝も起こしに来ないでね!ナナとエレンいるから大丈夫だし!」
じゃあねとアイネスは勢いよく部屋を飛び出してしまった。
「ちょっ!アイネス!」
シュンの声もむなしくアイネスの姿は既に無かった。
ーーーーー
「あらーシュン君。寝不足?お顔が険しいわよ。」
朝一で探すなと言われたけれど、アイネスを学校に行かせたくなくてシュンはアイネスを探してしまっていた所をエレンに見つかった。
「もう、シュン君たら!アイネスちゃんはもう学校行ったわよ。うふふ。今日は腕によりをかけたわよ私。」
意地悪にエレンは微笑む。
「義理姉さん……試練てなんですか?」
「あら、それは秘密よ。あ、でも文芸会行くならシュン君も手伝ってあげても大丈夫よ。」
訳もわからずシュンはエレンに家から出された。
ようこそメイド喫茶へ
可愛らしい看板が教室の前に掲げられている。
そこそこ人気なようで男女問わず人が並んでいる。
シュンが扉に手をかけると
「あ、シュンさんはそこから入っちゃだめですよ。」
シュンが入ろうとすると入り口でナナにとめられた。
「シュンさんはこちらでお願いしますわ。」
ナナに案内されるとそこにはなぜかシュンのグラウン家での執事服が用意されていた。
「これがなぜここに?」
「うふふ。シュンさんこれは私の試練なんですわ。だからご協力お願いします。」
「試練?」
「ええ、理由は今日終わったらお教えします。あと、心ばかりのお礼もちゃんと用意してありますのでとりあえず着がえて働いてください。」
有無を言わせないナナの笑顔は心なしかエレンを思いださせる。シュンはとりあえず手早く着がえるとナナの元へいく。
「ご協力ありがとうございますシュンさん。シュンさんは入り口付近に立って来客の接待をお願いします。男の子はご主人様、女の子はお嬢様です。いいですか、今日はなにがなんでもノルマをクリアして人気ナンバーワンにならないと行けないんです!それが私に課せられた使命です!シュンさんでも邪魔は決して許しませんからね。とにかくお客さんを絶対逃がさないでくださいよ。」
ナナの気迫にシュンは肯くしかできなかった。
ーーーーー
それから数時間、文芸会が終わり解放されるまでシュンはナナの監視下で働かされた。
と言うよりも、シュンが入口に立っているだけで女子生徒は列をつくりその女子目当てに男子がやってきてあっという間にアイネス達のクラスは人気になり売上もうなぎ登りとなっていたのだが。
「シュンさん!素晴らしい働きでしたわ!本当に!これで私もノルマが無事にクリアできましたわ!」
終わり際ナナが満面の笑みでシュンの所にやってきた。
「よくわからないけど、結局アイネスには会えなかったんだが?」
シュンが不服そうな顔をするとナナはお礼ですと微笑み教室にシュンを押しこんだ。
「お帰りなさいませご主人様。」
「アイネス!」
「もう!ここでは私はメイドですよご主人様。」
ニッコリ微笑んでアイネスはシュンを席に案内する。
「ご主人様、今日はお仕事お疲れ様でした。お陰でナナもノルマがクリアできましたって喜んでましたよ。」
アイネスはシュンにお茶を差し出す。
「ところで、そのノルマやら試練ってなんだ?」
「バース家に嫁ぐならこの位こなせなきゃダメよって義理母様に経営能力ノルマが課されてそれが、ナナにとっては今日だったの。学生をターゲットに絞っていくら絞れるかと学内の人気店ナンバーワンになることがノルマだったの。」
母さん……そんなことしてたのか。
心の中でシュンはげっそりする。
「だからレオなんてノルマの件知ってから鬼のように回転して働いてたよ。」
今日のレオの必死さは凄かったとアイネスは遠い目をしてしまう。
「へぇ。それは見物だったな。そう言えばアイネスもノルマとかしたのか?」
シュンが聞けばアイネスはドヤ顔になる。
「うん!したよ!私も頑張ったの。私の場合はクレイとキョウナと料理教室の運営だったけどね。」
誇らしげに答えるアイネスは何とも愛おしい。シュンが目を細めてアイネスを眺めているとアイネスは思いだしたように首を傾げる。
「……そう言えばご主人様はどんな協力をしてくれたんですか?そんな格好して。」
ふっとアイネスがシュンを見ればシュンは苦笑いしている。
「別に……。ただ、立ってて着てくれた方にご奉仕しただけですよ。執事としてね。」
シュンはちらりとアイネスを見ればアイネスはなぜだか不機嫌そうに頬を膨らましている。
「アイネス?メイドはご主人様にそんな顔をしないですよ。失格。」
シュンがイタズラにアイネスを嗜めるとアイネスはフンと顔を背ける。
「それより、そんな格好でお嬢様こそ誰にどんなご奉仕したんですかね?後でゆっくり聞かせて貰いましょうかね。あぁ、ついでたからご奉仕の練習でもしましょうかね。」
「なっ!シュン!」
「おや?今俺はご主人様なのでは?」
「~~!ご主人様!」
顔を赤らめるアイネスは可愛らしい。
だけど、このかっこは誰にも見せたく無かったとシュンの独占欲が掻き立てられたとはアイネスは知らない。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ナナのノルマ達成。
その先に有ることは……。
ゆっくり不定期更新予定です。




