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突然の挨拶

 今日は一日気怠かった。服も出来るだけ首元が露出しない服に更に人目晒されないようにスカーフをまく。

 

 「違和感満載だわ。」

 

 それもこれもシュンのせいだ。

 ………バカシュン。


 この格好で学校を過ごし、そして放課後クレンの所に行くことがためらわれた。

 学校までは我慢出来るが、昨日あんな事があったクレンの前にこの格好では何となく行きたくなかった。こんなのクレンにばれたら見せつけているようで優しいクレンを傷つけてしまう。


 

 悩んだ末に学校もクレンの所も風邪と言って休んでしまった。しかも2日も……。


 3日目に何とかシュンがつけた虫刺されは薄れ目立たなくなったが、丁度休日だったため学校には行かなくてもよかった。だけど、クレンはどうしよう。

 3日も行かなかったからもしかして傷つけてしまっているのでは。そう思うとそれはそれで苦しくなる。


 もう、これも目立たないわよね?


 悪い虫刺されは目立たない。

 


 アイネスはクレンの放課後料理教室に行くことにした。



 






 


 「アイネス。……風邪は大丈夫?」

 訪れれば柔らかくクレンは微笑んでくれた。まるで何もなかったかのように。

 

 「ごめんなさいクレン。ご心配をおかけしました。もう大丈夫、ありがとう。」

 「それなら良かった。」


  

 「ただね。ごめんねアイネス。ナナお嬢様からアイネスは風邪で休むって聞いてて、何にも準備してなかったんだ。それに……」

 「それに?」

 聞けばチロリとうなだれてクレンは答える


 「アイネスはもう来ないかもって……。そしたらやる気なくなってて。」


 へへへっと力なく笑うクレンが切ない。


 「クレン……。」

 

 ぐっとクレンの手を握るとクレンは驚き顔を上げる。


 「クレン!私はクレンの作る料理はどの料理より大好きだわ!1番すきよ。だから……その、1番好きな料理が教えてもらえるのは本当に嬉しいの。だから、うーんと。上手く言えないけど……。」

 「アイネスは優しいね。だけど、料理は1番好きって言ってもらえたのは嬉しいよ。ありがとう。」


 今度はちゃんときらきらしたいつもの笑顔でクレンは微笑んでくれる。

 そんなクレンをみてホッとしたのはつかの間

 「じゃあ、今度は料理以外でもアイネスの心の1番になれるようにするよ。僕、やっぱりアイネスを諦めきれない。」

 ごめんね。とさらにキラキラした笑顔で言われる。


 「クレン!それは、ちょっと……。だから私には好きな人がいるんだって……。」

 「そんなの、奪ったもの勝ちだよ。」


 クレンの満面の笑みは崩れない。


 なんで、こうなるの?



 「うん。でもなんかやる気出てきちゃった。だけど、ごめんねアイネス。本当に今日は何も準備してなかったんだ。だから今日はお詫びにまたあのお店に食べに行こう!」


 こうして、私はクレンに連れ出され町に行くことになった。


 





 お店に着くとクレンは手を繋ぐ?と茶化してきたけど、遠慮させてもらった。

 「クレンったら。私のことからかってる?」

 「そんなことないよ。僕君にフラれて本当に落ち込んでたんだよ?だけど、やっぱり諦められないから僕なりにゆっくりアイネスに挑戦するよ。だから、アイネスも好きな人と上手く行かなければ頼ってね。僕で満たしてあげるから。」

 「クレンったら!」

 「あ、見てアイネス!また新しいケーキだよ?」


 ーーーークレンに茶化されながら結局またケーキを沢山食べてしまった。



 帰り道クレンは私には店でどのケーキが好みか聞いてきた。

 「うーん。私はやっぱりフルーツが沢山のものが好きかな?」

 「女の子は好きだよね。ナッツとかのほろ苦ショコラとかはどうだった?」

 「ショコラとかはすきだけど、コーヒーとかになるとちょっと苦みが気になるかしら。」


 いつもと同じたわいない会話をして過ごしていたら突然後から何かにぶつかった衝撃を受けてアイネスはよろめく。

 「アイネス危ない!」

 

 すんでの所でクレンに抱きかかえられて転ばずにはすんだ。

 「ごめんなさーい。」

 小さな子供達がこちらに叫ぶ。

 どうやらボールで遊んでいたのがアイネスにぶつかったらしい。


 「大丈夫よ。気をつけてね。」

 アイネスは笑顔で答える。


 「アイネス本当に大丈夫だった?」

 「ええ。クレンが助けてくれたから……って、もう離しても大丈夫よ?」

 「ん?あー本当だ。突然抱き締めてアイネスごめんね。だけど久しぶりにアイネスを抱き締めたら離せなくって。」

 

 困ったねっと満面の笑みである。 

 「もう!クレン!ふざけてないで離さないと嫌いになっちゃうわよ?」

 「うーん。それは嫌だなぁ。」

 仕方ないとクレンが離した瞬間、今度は後に勢いよく引っ張られる。


 「!?」


 「へぇ。この人がクレンさんなのかアイネス?」

 「え?シュン?どうしてここに?」

 「あぁ、ちょっと仕事の合間にこれたから。それよりご挨拶しないとね。初めましてクレンさん。アイネスの婚約者のシュン・ロネスタ・バースです。」

 「ご丁寧にありがとうございます。僕はアイネスが認めてくれた料理人のクレンです。以後お会いする事もあるかと思いますのでお見知りおきを。」


 

 ………。

 二人ともにこやかに自己紹介しているはずなのに……怖い。


 「今日はアイネスとこれから用事が有りますのでご挨拶の途中ですが、これで失礼します。」

 「そうだったんですね。ゆっくりご挨拶出来ず残念です。アイネス?また明日ね。」

 「へっ?あ、はい!クレンまた明日。」

 


 クレンと挨拶を済ませシュンのエスコートのもと車に乗れば、急に黒いオーラと威圧感で押しつぶされそうになる。

 もう、怖くてシュンの顔が見れない………。


 というか、どうしていたの?仕事は?終わったの?帰ってこれるの?

 聞きたいけれどこの場の雰囲気は話をする雰囲気ではない。

 ただひたすら静かに屋敷に着くのをアイネスは願っていた。



 ここまでお読みくださりありがとうございます!



 誤字報告や感想などあればぜひお願いします!

 評価して頂けると私はよろこびます!



今日からゆっくり不定期更新です!

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