虫刺され
朝が来て珍しく自然に目が覚めるとアイネスは違和感に気づく。
何やら体がやたらスカスカするような……。それでもって怠いような……。
そこで、はたっと隣をみて気がつく。
そこには爽やかに微笑むシュンがいる。
「きゃあぁ!」
ベッドに潜れば更に気がつく
「ふ、ふくぅー!!」
ーーーーひとしきりベッドで騒げばシュンの盛大なため息が漏れる。
「アイネス………。落ち着け。」
「お、落ち着いてられないわよ!というか、シュンはなんてことしたのよ!もう、いきなり帰ってきてそれで、その、あんな……。」
昨晩のことを思い出してアイネスは全身真っ赤に染まる。
「あんな?俺はそんな酷いことしてないけど?アイネスが俺を好きだって積極的だったから誘いに乗っただけ。」
「~~~!」
「ああ、もちろん俺はアイネスをちゃんと愛してるから責任はとるよ。」
「~~~~!」
しれっと答えるシュンが恨めしい。
恥ずかしさでベッドに潜り込む以外何も対抗出来ないでいると布団を剥がされ優しいキスをされる。
「アイネス、可愛かったよ。それに好きだと言ってくれて嬉しかった。」
耳もとでそっと囁かれれば恥ずかしさに追い打ちが来る。
「~~~~~!うぅ、シュンの、バカ……。」
アイネス唯一の抵抗すらシュンにとっては愛おしい。
ーーーー帰ってきて良かった。
シュンは心からそう考えていた。
「ところでアイネス。昨日言ってたクレンって誰だ?」
ベッドに別れを告げ着がえてから、かなり遅い朝食を終える頃にシュンが聞いてきた。
「あー。うーん。」
アイネスが口ごもる。
キスをした人なんて口が裂けても言えない。むしろシュンに対して罪悪感が産まれる。
それに、シュンに食べさせたくて、褒めて欲しくて料理を練習していたなんてもっと言えない。
それは何となく気恥ずかしい。
チロリとシュンを見れば微笑んでこそいれど、全く目が笑っていない。
圧迫感だけが無言の間に募る。
「………アイネス。だれ?」
シュンが椅子から立ち上がりアイネスの顔の付近までかがんで覗き込む。
そして、教えてと言いながら今度はアイネスの首へ唇をあてる。そしてその瞬間首筋にチクリと傷みがはしる。
「ッ!」
「早く言わないと……」
チクリ
また首筋に傷みが走る。
「ッ!ちょっと!」
チクリ
「やっ!」
チクリ
「言うから!やめて!」
シュンを手で押し返す。
「誰?」
「クレンは……友達だよ。」
ふーん。押し返された手をのけてシュン近づき今度は鎖骨へ唇を押し当てる
チクリ
「やっ…。言ったのに……。」
半ば涙目でアイネスはもう一度シュンを押し返す。
「友達なのに」
「……アイネスは意外に強情だね。友達なのに気持ちが揺れるのか?」
笑っているはずなのに目が笑ってない。
「本当に本当にお友達なんです。」
「ふーん。じゃあ俺とアイネスの関係は?」
なぜ今更聞いてくるの?
「婚約、者?」
「疑問系?」
シュンに押し返していた手をどかされてしまう。
「俺はこんなにアイネスを愛してるのに?」
シュンが再び鎖骨へ顔を埋めたところで
「だから!おいたは駄目だってシュン君。」
どす黒いオーラを放ちながらカイがたっていた。
「……。兄さん……国外にいたのでは?」
「いたよ。一昨日まで。ただ、どっかの誰かが可愛いお嫁さんに逢いたくて逃走したせいでアレが邪魔して邪魔して。とりあえず車飛ばして追い掛けてきたの。」
「兄さんがアレは何とかしてください。俺はアイネスと居たい。俺が病気になったとかなんとか適当なこと言ってかわせばいいでしょ。」
二人ともさっきからアレアレ言っていますが、何のことでしょう?
「それが出来るなら車なんて飛ばさないよ。それよりシュン君。前も言ったけど嫁入り前の女性においたは駄目だって。」
そう言うとカイはシュンをひき離し、自身のハンカチを取り出して器用にアイネスの首に巻き付けた。
「アイちゃん、部屋についたらこれはずしてね。あと、シュンみたいな悪い虫が多いんだから気をつけてね。」
「え?」
「アイネスは俺のものだからいいんです。」
「シュン君。ちょっとは自粛しないとアイちゃんに嫌われるよ……。」
二人の会話はますます分けが解らなくなったが気にしないで見守っていたら、あれよあれよとカイに言いくるめられシュンは再び連れ去られていった。
「何だったんだろう?」
それでもカイのハンカチの意味が知りたくて部屋に戻ってみてみれば思わず絶叫してしまった。
確かに……言い逃れが難しいほどの無数の悪い虫刺されに私はため息をついた。
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