最後の夜続き
「僕はマスターが好きなんです」
「ありがとうございます。鈴木さん。あたしも……」
ん?
何か違う。
違和感ある。
あたしがキョトンとしてると、鈴木さんがもう一度言った。
「僕はマスターが好きなんです。恋愛対象として。高橋さんには話しておきたくて」
「えーと、鈴木さん。マスターが好きなんですか?」
二度も言われたのに、あたしは確認せずにはいられなかった。
「はい。好きなんです」
あたしは固まった。
そりゃあ、固まるよ。
「あ、へー。マスターを。そうなんだ」
あたしは間の抜けた返答しかできなかった。
「でも僕は男です。マスターにその気はないでしょうから、言わずに去ろうと思ったんです。でも、高橋さんには言っておきたかったんです。それも出来ずに情けないと思ってたら、高橋さんが来てくれて。やっと言えました。同じ想いの高橋さんに」
ん? 何やら引っ掛かる言葉が。
「鈴木さん? 同じ想いって?」
「僕は気づいたんです。マスターと楽しそうに話してる高橋さんを見て。だって、同じ人を好きなんですから、分かりますよ」
あたしは混乱した。
なに? 言ってる意味ぜんぜん分かりません。
はあ? あたしがママを好きだあ!?
「いや、鈴木さん、ちょっと話を整理しましょうか。鈴木さんはマスターが好き。そして、あたしもマスターが好きと」
「はい。僕らは同士です。同じ想いを持つ」
あんた、どんな思考で行き着いたんだ、その答えに。
ちょっと、あたしの恋心はガタガタよ!
返しなさいよ! あたしの貴重な時間を!
あたしが怒りに震えてる間に、鈴木さんは通りすがりのタクシーを止めて乗り込み、そして念を押すように言う。
「マスターのことをよろしくお願いします。高橋さんなら、マスターはきっと受け止めてくれるはずですから。じゃあ、また!」
バタンとドアが閉まり、タクシーは走り去っていった。
鈴木さんの、変に爽やかで、満足気な笑顔を残して。
あたしは暫く茫然と立ち尽くした。
怒りすら通りこし、虚無感に襲われながら。




