最後の夜続き
カランカラン。
あたしがドアを開けると、ママが心配気にこっちを見てきた。
「どうだったの? ちゃんと伝えられたの?」
あたしは虚無感からくる放心状態で答えた。
「好きなんだって」
ママは、パッと明るい顔になって駆け寄ってくる。
「良かったじゃないのよ、あんた! 両想いだったなんて素敵ね!」
「うん。両想いみたいだよ」
「あたしも背中を押した甲斐があったわ」
「あたしじゃなくて、ママとね」
「そう、あたしと……。ん? あんた今何て言ったのかしら?」
「鈴木さんはママが好きなんだって。恋愛対象として」
「……」
あたし達は暫く沈黙したあと、ママがようやく口を開いた。
「ちょっと待って。整理しようと頑張ったんだけど、何か頭が回らないわ」
「はあ……。ママ、お酒ちょうだい。強いやつ。飲みながら話そ」
「ああ、そうね。そうしましょうか」
あたし達は、さっきまで楽しい時間を過ごしていたテーブルに戻った。
ママは、何か強そうな茶色のお酒をあたしに出してくれた。
あたしは本当に強いじゃんと思いながら、最後の鈴木さんとの会話を話した。
ママは黙って聞いていた。
そんなママにあたしは言った。
「だったら、ママに告白すれば良かったじゃん。あたしに言うなよって話でしょ! まさか鈴木さんがそっちの人だったなんて」
「そうね。あたしも気づかなかったわ。大抵わかるんだけどね」
「正直あたしはしょうがないわよ。悔しいけど。でも、ママに言わないのはどうなよ! せっかく両想いだったのに。言えば上手くいってたでしょ? 何でなのよ! ただの意気地無しじゃん」
ママは優しい顔と声で、あたしに答えた。
「あんたは優しい娘なのね。本当は自分も辛いのにね。でもね、鈴木さんの言えなかった気持ちも分かるわ。わたしもそうだけど、同じ人種って分かってればともかく、そうじゃないとハードル高すぎるのよ、告白って。簡単に好きって言えないのよ」
あたしが黙ってるとママは続けた。
「あんたにだけ言ったのもね、それだけあんたを信頼してたからよ。わたしもそうでしょ? わたしのことはあんたにしか言ってないんだから。きっと、あんたはこっちの人間に信頼されやすいのね」
「そんなのちっとも嬉しくない」




