本番前、軽トラ女子
いつも夜9時にはグッナイしております。
睡眠時無呼吸症候群なのか、どれだけ寝ても寝足りない。
闘技場に着いたら控え室に案内された。
完全に試合じゃないか?
途中の道は馬車で渋滞が起きていたけど、まさかあの馬車全部が闘技場に来るお客さんじゃあんめぇな?
個人的な決闘すら賭け事にしてしまう土地柄だし、何とも言えないけど。
下手すりゃ、フラウティアの突発イベント的な扱いにされているかもしれない。
「決闘って、もっと切羽詰まって殺伐としたイメージがあったんどけど。」
《何でもかんでも娯楽の一部にしてしまうのでしょう》
でもこれ、敗北条件に死亡ってのも含まれてるんだよね。
……えぇんか?
昔は日本でも仇討ちってのが御上の公認であったらしいけど、見世物にはしてないと思う。
あのアホンダラをボッコボコにはする気満々だけど、流石に死亡させるまではしない。
……不可抗力の場合はしゃーないけど。
《そろそろ時間のようです》
「ん、了解。」
一緒に軽トラちゃんに乗って来たリューツァさんは居ない。
関係者の席に座っている。
控え室に置いてあった、ふわふわのソファーから腰を上げる。
ゴキりと首を鳴らして、肩を回す。
「んじゃ行こうか。」
控え室を出て闘技場に向かうと歓声が聞こえてきた。
ん、歓声?
どんだけ観客が、入ってるんだ?
ファイトマネー貰っても良いんじゃない?
「皆さんお待ちかねぇ!!」
「今宵は久方振りの本気の勝負、本気の決闘をご覧頂くことが出来ます。」
「事の発端は、仲睦まじき恋人を引き裂いた悪鬼。」
「愛すべき者を守るため、一人の青年がその悪鬼に勝負を挑みました!」
「恋人の為、己の誇りの為、その身を燃え盛る炎と化した勇者……」
「ホンドゥァァァァルァ・ゼバニィィィィガァァァ!!」
何このリングアナウンス。
「対しましてぇ」
「その姿、その性根。まさに極悪非道の極み。」
「過去数多の魔の化身の王が存在しましたが、この者ほどの悪鬼羅刹は居ないでしょう。」
「ケェェェコォォ・トクゥラァァァァァ!!!」
ありがとう。
ふざけた呼び出しコールのおかげで、完全に頭に来た。
指の関節を鳴らしながら入場する。
恐らく、このリングアナもゼバニガ商会の回し者。
「きっちり、倍にして返してやる。アホンダラにな。」
産みの親ですら判別できないくらい、骨格ごと整形してやらぁ。
「ナビちゃん、祝福されし者の杖……出して。」
まぁ、さっき改めて鑑定し直したら既に名前が変わっていたけどね。
名前 迎え入れられし者の鉤棍
種類 聖銀製の鉤棍(変化完了)
生産国 旧ドワーフの国、地之国+旧聖都、常世之国
特徴 元は純銀製の杖であったが、旧聖都の光を浴びて聖銀となった。その後歴代の神官の手を経て杖となり、当代の所有者(異世界より迎え入れられし者)の無茶苦茶な素振りの影響で鉤棍に変化してしまった。
軽トラちゃん「あーあ……ご主人、本気で怒ってるね。」
ナビちゃん《殺ってしまうかもしれませんね》
軽トラちゃん「トンファーって、難しそうな武器なんでしょ?」
ナビちゃん《そうですね。攻撃も防御も可能な武器ですが、扱いに慣れていなければ上手く動けないと思います》
軽トラちゃん「ご主人ってホントに戦う系の技術無いの?」




