出会う、軽トラ女子
ビールが好きです。
ウイスキーはもぉっと好きです。
私が異世界に来てから3日が経った。
その間、昼はガタガタ道を走りながら夜は軽トラちゃんに車中泊。
技術点で荷台を寝室に変化させる技術もあるらしいんだけど、この先何が起こるか分からないからそのまま技術点を貯めておく。
走行中、何度か魔物にも遭遇した。
耳が3本のウサギ(顔は凶悪)
角がスパークしてるシカ(大きくて食べ応えありそう)
5、6匹で襲ってきたのに、軽トラちゃんがドリフトして1匹を吹っ飛ばしたらあっさり逃げて行ったオオカミ達。
なのに人間には1度も会えていない。
なんとか出会って、ウルルンな滞在記とかしてみたい。
「せっかく手にいれた鱗とか骨とか耳とか角とかも売っ払いたいんだよね。ノーマル荷台の時は良いんだけど、キッチンに変化したら気分的にヤダ。」
ナビちゃんの話だと、そういう物は素材として買い取ってもらえるらしい。
やっぱり現金収入って必要だよね。
な、わけで現段階の目標は第一異世界人に遭遇する事。
それに食べ物もご飯とパン(自分で焼いた無発酵パン)とサファ肉。
そろそろ野菜も食べたい。
異世界のお酒も飲んでみたい。
「ウサギとシカ、お肉出なかったのは残念だったなぁ。」
良い感じに出来たサファ干しを焼きながら肉に思いを馳せる。
《人の接近を感知しました》
「え、来た?ついに来た!!」
焼き途中のコンロの火を止め、荷台キッチンから外に飛び出すと一人のご老人がふらふらと近寄ってきた。
「だ、大丈夫ですか?どこかお加減でも良くないんですか?」
初めて目にするであろう軽トラちゃんに臆することなく、私に呼び掛けられたご老人は私の側まで来てご老人自身の耳に手をやり……
「あんだばってばよぉ。」
日本語じゃねぇ!!!!
そっかここ異世界だった。
日本語通じるわけないよね。
でも前にみーちゃんが
『不思議と言葉とか文字は日本語そのまんまな世界が多いみたいだよ。違ってても自動翻訳とかその世界の言語スキルでなんとかなるみたい。』
って言ってたのにぃ。
技術一覧には言語に関するの無かった筈だよ!
「あー、ええと……ドコカ、イタイ?」
言葉が通じないなら身振り手振りだ。
「もそっどおっけぇこーでしゃーばれ。」
「ダメだ全然通じてない!!」
《落ち着いて下さい、戸倉様》
ナビちゃん!?
やっぱりこんな時は頼りになる存在。
通訳とかしてくれるのかな?
《こちらのご老体のベースの言語は日本語です》
「は?」
「んだば、わずにこつばっばちぃんとつうじどっどば。もそっどおっけぇこーでしゃーばれ。」
ナビ訳(そうです、私に言葉はちゃんと通じております。もう少し大きな声でお話下さいませんか。)
《どうやら訛りとご老体のお耳に少々難があるようです》
「ナビちゃんの言葉は伝わってるの?」
《はい。私の声は耳だけではなく、直接脳へと伝わるシステムになっております》
「それで、私が運転席から降りててもナビちゃんの声が聞こえるんだ。」
「おめっこばまぁものたぐぅが?」
ナビ訳(あなたは魔物の仲間ですか?)
訛りにしては分からなすぎる。
《ここは私にお任せ下さい》
《ご老体、私どもに何かご用ですか?》
「むがかぁざんほぎげげ、がぇれっぐなっだばよぉ。」
ナビ訳(村から散歩に出ましたら、帰れなくなってしまいました。)
《それは大変でしたね。ご老体の住んでいる村は何と言う名前ですか?》
「なまぁなんばねぇ、たんだのぎょうじむがばよぉ。」
ナビ訳(名前は御座いません、ただの漁師村で御座います。)
《そうですか。ではこの近くには他に村はありますか?》
「んにぁ、わずのむがじがね。」
ナビ訳(いいえ、私の村しか御座いません。)
これが第一異世界人との初コミュニケーションかぁ。
すっかり蚊帳の外な私は、もういい時間だろうしこのお爺さんにもご飯食べてもらおうとキッチンに戻った。
軽トラちゃん「フロントライト点ける?点けちゃう?」
ナビちゃん《異世界の方には眩し過ぎると思いますので、やめておきましょう》
軽トラちゃん「しょぼーん」




