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43 大戸10

43 大戸10


 みんなで二階に来ました。


「これだよ~ 使えそうかな?」


[ランダイト]「ぬぅ、見たことのないタイプだな…」




 ランダイトがギラギラした目で鍛冶場を確かめていく。ドワーフ顔で物を弄ってると絵になるな。


「朧ちゃん、これは魔力を燃料にするみたいだが、自慢じゃがワシは魔力が……ジョッキ程もない!……すまんがちょっと火を入れてみてくれんか?」


 魔力式か…どれどれ、窯の隣に近づいて見てみるとそこには長方形の形に出っ張ってる部分があった。とりあえず手をつけて、魔力を流してみる。地球人的な考えでは、加熱にはエネルギーが大量に必要そうに思うのだが、そこまでの魔力は必要無かった。


『ヴゥーーン』


 なんか起動したような音がした。残存魔力の表示バーと、火力出力のバーと調節ツマミがある。


「動いたみたいだよ」


[ランダイト]「おおぅ、動いた動いた!んんむ、これが燃料計、これが温度調節かの?ディルジール、エコーラルドを貸せ」


 ランダイトが粗野に催促し、ディルジールが大剣を渡す。早速窯に突っ込む。ランダイトは草臥れた背負い袋から道具を取り出して、むむむと唸りながら道具と金床などを吟味している。そうして鍛冶が始まった。


『カンッ カンッ カンッ …』


 ドワーフが鍛冶場で剣を打っているとめっちゃ絵になるよね。炉から溢れる光と熱を背景に、なぜか上半身裸のランダイトがムキムキの体を運動させながら槌を振るう。まずは形の整形かな。

 あーそういえば…


「うーたん、空調と隠蔽系の機能を有効にして。魔力は足りてるよね?」


「う~」


 夜中にコンビニがチカチカで、しかも中から鍛冶の音がするとか世間体がヤバそうなので対策する。


「…それで朧殿、今回の開拓の件なのだが」


 ぼーっと鍛冶風景を眺めて悦に入っていると華代さんが話しかけてきた。開拓?そういえばそんな予定だったよね…


「うーたんから聞いた話では、お面ごと村を爆破したそうだが…」


「…」


 あ、これ知ってる。なんか知らない内に、借金とか前科とかついて指名手配されたり奴隷にされたりするパターンだ。…まぁ開拓村を更地にしたのはイカンかったかな~…


[華代]「そ、そんな顔をしないで欲しい。別に責めている訳ではないし、拙者は最善手であったように思う」


「ほんとう?」


「ああ、約束しよう。ただ、事情を詳しく聞きたいのだ。うーたんの話?からは、事情が見えてこないのでな」


 ふぅ~よかった。愛玩奴隷にされるかと思った。開拓チームと別れた後の戦闘の流れ、使用した爆弾と運用方法などを華代さんに話した。


「ふむ、そうなるとお面が生き残っている可能性もあるか…」


 どうだろうか、不意打ちではうーたんのゴムハンマ―のフルスイングで鬼面は一発粉砕だったらしいが、埴輪面は動き出したら急に防御力上がったみたいだから…

 わからないかな~。爆弾って点打突力はそこまで無いからな。爆破点とお面の距離がどうだったかによるだろう。


「やったか!?もしれないけど、生きてる事想定して慎重になった方がいいと思う」


 フラグはへし折るもの、ルールは破るもの、慣習は無視するもの、予感は裏切られるもの、現実は小説よりも奇なり。

 ここはめっちゃ心配してたけど杞憂だった。ああ、そんな話もあったね。的な逆フラグを立てておく。


「ふむ、できるだけ早く…明日にでも廃村跡地を調査して、可能ならば拠点を作りたいのだが。早急な安全確保が大事かと。朧殿、どう思う?」


 華代さんってやり手の営業部かなんかかな? 天然でこれやってるなら天才的としか言えないレベルに断りづらい。これ、またうーたんを同行させるかな。

 つかれたも~、色々あったから明日は休みたいんです。


「埴輪面は結構追い詰めたから、生きててもまだ廃村に居るとは思えないから、うまくいくかも。うーたん達の破片を回収したいから、またうーたんを連れてってもらっていい?」


 こうしよう。うーたんにフルダイブするのはやめておく方向で。なんか、気軽に意識があっちゃこっちゃすると内なるナニカがポロリと出てきて全てを灰燼に帰す予感がある。


「おお、またうーたんを同伴させて貰えるか。かたじけない、痛み入る」


 まぁこちらも目的が沿うからWin-Winかな。



「ふぅ… ディルジール、どうだ!」


「…さすがランダイトだぜ、いい出来だ!」


 いい大人達がウキウキニヤニヤとしている。これだから脳筋ってやつは、……リュウゲン、なんだその目は。物欲しそうな目と狂気の目がブレンドされたような目だな。コイツはやはり脳筋の才能がある。


 次は又郎さんの刀の番になった。


「コイツはすげえ刀だな。ううむ……確かにココ、刃が少し潰れてるな。俺の技量じゃ研ぎまでは難しいが、どうする?」


「大丈夫だにゃ、研ぎなら自分でできる、にゃ~。研ぎの前までお願いするにゃ~」


 又郎さんの刀の鍛冶が始まった。刀の名は【又切】らしい。すごい業物のようだ。

 刀って浪漫だよね。私は刺身包丁くらいしか持て無いけど。

 この後にオルナルドの盾も控えてるんだよね。ボコボコの盾は炉で何とかなる物なのかな?


『カンッ カンッ …』


 …ランダイトと又郎さん以外は所在なさげにして寛いでいる。店内を物色している人も多い。


~~~~


[エリカ]「…寝ちゃいましたね」


 エリカ君がぼそっと呟く。朧殿は鍛冶風景を眺めているうちに寝た。いつの間にか朧殿の専属メイドをしているシエラ殿が朧殿を抱きかかえて、長椅子にて膝枕をしている。

 シエラ殿、【氷雪月華】の通り名を過去に付けられた伝説の冒険者だ。


『シエラ殿の前で絶対に粗相をしてはならない』と又郎殿から忠言を受けている。詳細は分かってないが、特にギルドや国家などの団体から束縛される事を嫌っているそうだ。


 …朧殿が寝入ってから、シエラ殿は神経を朧殿に集中して慈愛に満ちた所作をしている。

 む、朧殿が起きている時に比べ、周囲への気の張り方が変わっている。威圧…少し殺気が混じっている気配が漂っている。これはどういうことだろうか。背筋が冷たくなる。


 渦の目


 又郎殿が夷羅波流の技を使った様だ。朧殿のまわりの空気の流れがかわり、鍛冶の音が朧殿に届きにくくなる。

 なるほど。気づけなかった事を恥じ入るばかりだ。又郎殿がこちらを見る。軽く会釈をする。…シエラ殿の気配が少し和らいだ。


「朧先生…寝ちゃいましたか」


 ツカサ君がそう言う。シエラ殿の気配に気づいているのは私と又郎殿、あとサルヴァン殿か。…ツカサ君はシエラ殿の警戒対象になって無いな。ひょっとして、シエラ殿の殺気は先程私が朧殿の機嫌を損ねたのが原因かもしれない。


 カスミ君が朧殿の頬を触ろうとしたのか接近してきたが、シエラ殿を正面から見て止まったようだ。若い冒険者ほど無謀な勇気がある。ランクが低い時ほど冒険者は冒険をしてしまうものだ。彼らにはもっと目をかけてやらないと。


~~~~



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