42 神々との戯れ
本編とはあまり関係ない話です。入れてみたくなったのです。
ちょっと先取り要素多く盛り込んでいますが許して♡そのうち出てくるから♡
説明してなかったことや核心的なことも書いてあるので許して♡
神々との戯れ ??
おっとしくじっている。やり直さないとな。
折角だし、たまには体を動かしてみるか。
「お嬢様っ!」
「お前の第一声いつもそれな。■■■だよ」
「貴方を討ち果たし、後を追います。一緒に死にましょう。参ります」
シエラは泣きながら、しかし決然とした決意を漲らせた。
「何度も言っているだろう。お前が前回殺せたのは世界がをれを見逃し、許容したからだ」
「そうだとしても、私はこれ以外に知らないのです。もうこうするしか」
「うんうん、お前はそういう奴だ。……反吐が出るよ。多少は魂が経験として覚えているハズなんだけどな。……それとも、愉しんでいるのか?」
■■■の首を聖剣ヒノキボルグが通過する。
「武器のチョイスは良いが、様子見の攻撃はどうかと思うぞ」
■■■は飛ばされた首から喋る。
「残念だ。■■■は首が離れていても死んでいない。つまり君はここで終わりらしい。前はちゃんと物理的に殺した手ごたえあっただろ?何も知らない主である小さな幼女を後ろから不意打ちでさ。酷い奴だ。そして、のうのうと生き残り、また、繰り返そうとしている。でも、今度はそうならないってことだね」
「……それは今から私が貴方を斃した後、私も後を追うからでしょう」
「それは無理のある話じゃないかなぁ?さっそく確かめてみよう」
シエラの認識フレームの間に■■■の首が戻る。手には聖剣ヒノキボルグ。
シエラの竜神の眼が青白く光る。周囲の熱量が奪われ、時間軸の進みが非常にゆっくりになる。
刹那、■■■の眼が紅黒く煌めく。シエラの眼の効果が打ち消される。
刹那の間に聖剣ヒノキボルグで滅多打ちにされた■■■はしかし、全ての攻撃を聖剣ヒノキボルグで受け切った。一度目で■■■の腕が衝撃で破裂したが、攻撃を受け切った時に血煙の中から元の腕が覗く。
「他のを見せてよ」
シエラは魔法と溜め込んだ熱量を解き放った。
オリハルコン製の店は投げつけた生卵が割れるようにいとも容易く破裂して吹き飛ぶ。地面と空に圧倒的な破壊が放射状にまき散らされ、開拓村を含む周囲数十キロは電離融解した。
この地域一帯は滅んでしまった。なんと酷いことをする。そうでなくては。
隔絶するゼロの壁で自身を保護していたが、それでもダメージを受けて吹き飛んでいたシエラは間髪いれず竜に変態する。全長30メートルを超える白銀の竜だ。自傷ダメージが瞬時に回復する。
圧倒的な爆風、乱れるエネルギーが世界から意味のある音と光を塗り潰す。
シエラは上空を旋回し、世界からエネルギーを奪う。
■■■の傍らには3メートル程の黄金に輝く竜が居る。暴れ狂う熱エネルギーの中から形作られる様に出現していた。
「▲▲▲▲▲、共に戦おう」
■■■が黄金の竜に飛び乗る。閃光が収まり、爆発の吹き戻しが始まる中、何事もない様に黄金の竜は跳躍して飛行し始めた。
速度とエネルギーを存分に蓄えたシエラはその顎をこちらに向け口を大きく開いた。シエラの放つ全力の死のブレスだ。熱も身体も命も時も、その意思さえも全てを止める。
絶望の塊が直線状にこちらへ猛進してくる。
だが、
黄金の竜が口を開く。シエラに向けて光の塊を打ち出した。そこには無限のエネルギーが籠められている。
絶望と全てがぶつかり始める。体積的に絶望が輝く全てを覆いつくしたように見える。しかし輝く全ては絶望など無いかの様に膨張し、膨れ上がりながら直進する。
無限に湧き出すそれは消去や停止といったタスクでは抑えられない。船に空いた穴から入る海水を柄杓で掬い出す様なもの。
反作用で速度を減衰させたシエラは羽ばたき身を捻り大きく向きを変える。
膨張していく輝きがシエラの脇を通過する。
シエラは片翼の一部と脚を焼かれ、叫びながら失速する。そして瞬時に回復し体勢を直して再び旋回に入る。
こちらに強烈な殺意が叩きつけられる。黄金の竜が怯み畏縮する。身体の動きが鈍くなる。シエラめ、戦いを分かっているな。
「大丈夫、▲▲▲▲▲なら勝てる。君は最強だ」
シエラは軌跡に氷の槍を生成し、こちらに連続掃射しながら更に加速する。咆哮を上げてこちらを畏縮させ自身を奮い立たせている。
氷の槍は正確にこちらに飛んでくる上に軌道を修正して追ってくる。
しかし全て黄金の竜の半径10メートル以内に入ると燃え尽きる。
「な。勝てるよ」
シエラはこちらを観察しながら距離をとって力を溜めている。
■■■の手にグングニルを現出させる。
瞬間、■■■の周囲であらゆる概念がめちゃくちゃになり、時空を分解、再構成し、崩壊する。
黄金の竜はその形を保てず、私の身体も完全に崩れ去った。
世界が部分的にロードされ■■■と▲▲▲▲▲が再構成される。
グングニルを手元に出すという奇跡の処理に割り込んだ見事な一撃である。世界は同時に全てが起こって居る様でいて、たった一つしか進んでいない。完璧なタイミングでの攻撃で適切。効果は抜群だった。だがそれだけだ。
シエラの背に理の神が立っている。完全武装して顕現、降臨している。姿は顕してないが他の神々も傍らに存在している。同じく完全武装したダリアが巨大な槍と盾を持ち上空に待機し佇んでいる。他の天使などの天界の存在も次々天に現れる。
「おそいじゃないか」
「今のを耐えますか」
「いいや、確かに効いたよ。耐えてない。分かってて言ったろう」
「貴方にはどうやら消去や攻撃などは効かないようですね。できるだけ神格の高い存在で不可逆的に上書きするしかなさそうです」
「流石だ。あるとすれば、それしかないよ」
強烈な神威が叩きつけられる。対抗して何かが■■■から発せられる。
前方では距離に応じて弱いあらゆる生命が恐怖に絶命した。天使も影響を受け何人か死んで堕ちる。
後方では距離に応じて神威に晒された弱いあらゆる生命が昇天した。
「何故ですか」
「大事なのは箱庭ではない。魂の持つ真心が紡ぐ驚きや、偶然性を楽しみつつ、大筋を外れない事なんだ。わかるだろう」
「あなたの気分に周囲を巻き込まないでください。一回でそういう風にすればいいじゃないですか」
「魂がある癖に分からないのか?それでは駄目だろ。いや、理解したくないだけか。■■■は世界の意思を尊重すればこそ、こうしている」
理の神は泣いた。彼女が神として存在してきて初めての事だ。
「では、私たちの在り方をあなたに精一杯伝えます」
そうだ、それでいい。
影うつろう無数のロンキヌスの槍が全身を貫き、一本ロンギヌスの槍が心臓に突き立っていた。
標本の蝶のように空間に縫い留められ静止する。
「人に槍を突き立てたままなんて酷いじゃないか」
どこからともなく声が空間に木霊する。
「あなたは生きているんですか?死んでいるんですか?」
「それはわからないな。本当に分からない」
黄金の竜が光り輝き、後には槍が消失している。
竜の背に垂直に立つ■■■は、グングニルを投げた。槍が手を離れた瞬間、シエラと神々と天使の心臓を炎の閃光が貫いた。
「そういうの、今するべきじゃないだろう」
理の神はダリアの前で自身の心臓に槍を二本受け、槍の認識を逸らしダリアを守った。グングニルの槍は一本。二本同時に同じ心臓に刺さるのはロジックエラーを起こす。
「あ、あっ……」
「大丈夫、神にはこれくらい、なんてことない……」
天使はダリア以外全滅。神々も存在の中心を貫かれ半数以上が消失しかけている。シエラはその生命力と特性故耐えた。
グングニルは戦いで消耗し失われた事が確定させられた。槍が二本同時に存在したことを観測された代わりにダリアを守り、グングニルは存在が揺らぎ、消滅した。
代わりにグングニルに貫かれた物はそれが確定した。理の神が、その心臓に二本刺さったことを認めたからだ。
理の神が血の泡を吐きながら喋る。
「因果の、確定を告げる。神殺しを認め、その呪いを以って、彼の存在の、死を、確定、す、る」
今、多くの神々と天使の死が明らかとなった。普段不死不滅の存在である彼らだが、その死を認めた。
その大罪を犯した者は理に則り呪いを受け、その死が確定した。
逃れ得ぬ確定死が下から這い登ってくる。
「あはははは!確かにこれなら殺せるな!良く切り捨てた!流石だ!」
身体の節々が痛み、腐り落ちる。視界が真っ赤になる。赤黒い血の涙が溢れ出てくる。
どう身体を構成しようが、その死は必ずやってくる。
不浄に触れた黄金の竜は急速に崩れ落ち、腐り落ちる幼女の身体ともども地へと堕ちていく。
「私は、だれだぁ?あぁっはっはっはっはっはっはっ」
少し興が乗ってきた。
無数の深紅の鎖の先端に槍の穂先を持つ構造体が崩れゆく幼女の身体から伸びる。
ふっと、理の神は処理で疲弊しきって天から堕ちていく。
「主様ぁーーー!」
ダリアが追いすがろうとするも、シエラが下から掬い上げて鎖槍の踊り狂う領域から脱する。
容赦なく深紅の槍が次々と彼女に突き刺さる。
理の神の骸を引き寄せる。顔は刺し貫かなったから綺麗に残っている。
理の神の眼が開く。
「あ、あなたは、なん、でしょう、か?……」
「さあ?、それは永遠に得られない答えだね」
彼女は全てを投げ打って■■■の観測に注力した。元から勝てないことは分かっていたのだろう。
彼女らしい。だが、無意味だ。それは決して分からないんだ。
「そう。私は、全てを、観測し、紐解い、て、きました。でも、こんなに、不可解な モノ、に、であった、のは、はじめ、……。……」
既に彼女は失われた。その眼には何も映ってない。先程まで最高の観測能力を持っていたのに。
そこまでして、■■■が何なのか分からなかったか。ちょっと期待してたのに。残念だよ。
寂しいよ。誰にも認められない。
もう地上と天界に戦力は残ってない。地獄と魔界に居る存在を起こして戦うくらいか。
幼女の身体は黒い泥となり、地に染みて、鎖槍は消えた。
程ほどに使える身体を新たに造り、最強最悪の悪魔や、封印された邪神などを叩き起こして戦った。そこそこに愉しい。
混沌の世界で戦いの限りを尽くし、地上に戻ると、自害したシエラの骸と理の神の骸を抱きかかえて目に何も映さないダリアが月に居るだけで、全ての生命は滅んでいた。
かなりの時間戦いに明け暮れていた様だ。
月にいるダリアを一思いに槍の投擲で殺す。
全てを滅した直後、大月が黒色に変化する。生物界の崩壊が凄惨を極めたのだろう。その色は黒一色だ。他の色が入っていても判りはしない。
絶望と終焉のおどろおどろしい戯曲が響き渡る。
この世にはもう観測者が居ない。ここではあらゆる事が起こり得る。
この世に過去現在に存在した。そして未来に存在するはずだった全ての意思が収束し目の前に形を成した。
大月はもう無かった。
「やあ、世界のなんだ、特異点?創造主?最後に残りし者よ。聞こえているかい」
話しかけてきた。話しかけてきたのか?
「やぁやぁ、魂と意思よ」
「うーん、君は本当に薄っぺらいね」
「そうかな?そういう君はとても希薄で居るのかどうか分からない」
「……」
「……」
膨大な意思は具現化し、■■■の中心にそのエネルギーを放射した。
■■■は無限に広がる魂の意思と記憶を浴びせられ、■■■の持つ思考や精神を司る部分を破壊される。
だが、■■■は揺らがない。確かに届いているが、効いているが、それは遥かなる無限の前に意味を成さなかった。
■■■は物質の有様であったり、宇宙の莫大さ、無限の計算を★★★にぶつける。
★★★は膨大な意思の力によってそれを処理していく。しかし無限に続くそれを処理できず、埋没し取り残されていく。
★★★はその怨嗟を、憎悪を、意思の奥の奥の奥の、その思いを■■■に投げた。
■■■はそれを正確に処理できない。★★★では無いからだ。
ここで、■■■の中に★★★はあったのだ。確かに■の中に★はあるだろう?
「分かっているよ。★★★の、その嘆きも苦しみも喜びも。じゃあ■■■の事は誰が分かってあげるんだい?最も大きく最も長く有る無限を分かってあげて優しく包み込んでくれるのは」
さて、還るか。
その世界を終えた。
これを入れるために一個前の話をまとめ、調節しました。