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32 気の向くままに3

32 気の向くままに3


 自室にて魔女っ子装備に着替えた後、一階食堂に行き、ステーキセットを二人前注文する。

 もちろん食べきれないので半分ほどシエラの皿に乗せる。そして見る。いいねいいね、そう、その顔、いいぞ!肉だ、肉を食え。


 私も食べる、そして思う、そろそろ私のソウルフーズ達、「ごっは~ん」「ス↑シ↓」「おうど~ん」「ソバッ!」「ラ~メンましまし」「かれーらいす!」そして「TKG(tamago-kake-gohann)」会いたい、食いたい、食いてぇよ…。


 場所は分かってる。東列島だ。この世界がゲームを出したのか、ここがゲームの世界なのか、そんな事はどうでもいいんだ。とにかく東列島に和の文化がある。ありまぁす。それが重要だ。


 今思えばなんでエルサル正教国に旅行に行ったのか不思議だ。ああ、そうか、東列島はまだ開拓が進んでない大陸だったか。漢字っぽいものはあそこの発祥だし刀もあるのだから、寿司やうどんくらい探せば出てくるじゃろ。明日にまた計画を練ってから行ってみるか。天界ネクターで食事を締めながら考えていた。



「ごきげんよう、ミス朧! ここ数日いらっしゃらなかったので、不肖シュナイゼル、心配しましたよ」


「ん、シーゼル、東列島って行ったことある?」


「いえ、私はヴァンパイア、同胞の少ない土地に行くと力が弱まるため、行ったことはございません」


 使えない奴め、やはり天界の関係者使うのが一番だな。あとコイツいい加減喋り方うるさい。というかイケメン顔うるさい。魔法教えてチワワ顔うるさい。ええぃ!


「シーゼル、わたしね、東列島に行ってみたいの」


「は、はい、そうですか。…そうでした、ここの生徒も東列島に行きたい、行きたいと何か禁断症状めいた状態の者が増えています。もしや新手の病気でしょうか?オコメオコメ、スシ!とか訳の分からない詠唱をし始めます」


「…ソウルだ」


「はい?魂の事ですよね?」


「違う、自然と渇望してしまう…母親の手料理、実家のベッド、そのようなものだ」


「え?は、はい……ここの生徒は大半が東列島から来ているらしいですから?、やはりホームシックなのでしょうか。でも明らかにこの大陸出身の生徒も東列島に行きたいと言ってるんですよね…」


 そういえば転生者がわんさかいるんだったな、ここ。彼らもまた、その身に宿したソウルに惹かれているのか、わかる、わかるぞっそのキモチ!



「シーゼル、生徒の今後の予定はどうなっているの?」


「はい、来週、つまり明日から遠征演習が加わってコースが大きく分かれる予定です」


「ん~?開拓地で実地訓練みたいなものか?新兵に兵站の後方支援を手伝わせる感じ…?」


「さすがですミス朧、その形容で合っています。実力と意欲がある生徒を連れて各地に行く予定なんです」


「各地、とは?具体的にはどう言う所?」


「アカデメイアのある地域から近く、開拓中の場所になりますね。…この大陸では魔物の多い地域、原生林や山脈などになりますね」


「他の大陸はどうなんだ?アカデメイアは他の大陸にもあるだろう?」


「はい、他の大陸でも明日から同様のスケジュールだそうです。遠征演習に参加する生徒は好きな場所を選択できる為、大陸のアカデメイア間で生徒が行き来することになります。東列島希望の生徒が多く居るらしいです」


「わかったシーゼル、私も行くぞ」


「東列島にでしょうか?…そうですか…ご健勝お祈りしております」


 ふっ、こいつは居残りのようだな。まぁここの教員だししかたあるまいて。そうとわかればダリアあたりに話を付けておくかな。自室に戻ってダリアと念話する。


~~~~


[朧幼女]『ダリアー、おるかー』


[朧幼女]『いないのかー?』


[朧幼女]『だれかある!』


[理の神]『ハッ、ここに』


[朧幼女]『んあ?ダリアじゃない、だと』


[理の神]『ダリアは、その、…今PTSDを患ってしまって療養中です』


[朧幼女]『っは!?、もしや観測実験でブラクラ見せられて発狂した天使ってダリアだったのか!』


[理の神]『ええ、サポートをお願いしてたんですが…』


[朧幼女]『私何にも悪いことしてないけどなんかスマヌ。それで容体は?深刻か?』


[理の神]『落ち着いて来たんですが、朧ちゃんの居るマルタに帰りたくないって泣いてしまって……ギャン泣きですね』


[朧幼女]『あのダリアがなんてこと…』


[理の神]『このままじゃいけないので、そちらに送ろうかと思います。ショック療法でしたっけ?』


[朧幼女]『違う違う、トラウマの原因を紐解いて納得させる療法だったような…でもショック療法みたいなもんかな?まてまて大丈夫なのか?』


[理の神]『本人に優しくしてもらえば大丈夫かと。暴れない様に無力化して送りますから、そこの実験場に行ってくれます?』


[朧幼女]『神パワーで治せないの?』


[理の神]『私アナクロな方法が好きなんですよ。よう分らん魔法武器使うより、物理的な武器で確実にダメージ重ねていくタイプなんですよ。奇跡と神力でなんでもやってしまうのはつまらないと思います』


[朧幼女]『激しく同意、じゃあ実験場行くから』


[理の神]『はい、お願いします』


~~~~


 実験場についた。とりあえず暴徒鎮圧の為にうーたんを8匹出す。シエラも交えて事情を説明する。まわりにクッションとかタオルとかゴムボールとかゴム棒とか出しておく。逃がさへんぞ、カチャリと施錠する。

 さて、そろそろ来るかな?転移魔方陣が一瞬で完成し、ダリアが現れる。


「あっ、きゃぁああああああああああああ、やめてやめて、こないでーーーーー、いやぁあ”あ”あ”あ”」


 現れて私を見るなり振り返り、全力疾走を開始して、コケタ。


「あ”あ”あ”あ”あ”っ、ああああぁ、ひっく…ひっく……」


 こけた後に、ホラー映画のリアクション女優のように振り返りながら後退していく。顔はぐしゃぐしゃで、蒼い髪は乱れて張り付いている。あ~盛大に失禁してらっしゃる。そんなのは意にも介さず、ただひたすらに後ろに下がっていく。そして壁に背がついた。顔を手で覆い、固まる。


「ひっく…っく、ひっく…っく、……すー…すー…すー…ふー」


 ちょっと落ち着いて来たみたいだ。恐る恐る手の隙間からこちらを窺う。


「わたしはエレナだよ? だいじょうぶ?」


 まずは体を動かさずに声だけかける。反応なし。そのまま暫く待機。数分して、ゆっくりとした動作で私がクッションに座る。


「シエラ、ダリアにクッションとタオルを」


 ダリアがタオルとクッションを受け取り、緩慢な動作で自分の顔と体を拭き始める。その際こちらから目を離さない。ある程度で作業を終えて、クッションに座る。無言でこちらを観察している。


「うーたん、じゃんけんしよ?」


 見つめ合っていると緊張感が解けない、動作を開始する。っしょ、っしょ、っほ、……、三割程しか勝てない。コイツめっちゃ頭いいんじゃなかろうか…


「エレナ…ちゃん?」


「そうだよ、エレナ…だよ?」


「そして朧ちゃんだよね?」


 む、これは返答に困るな。地雷の可能性もある。単語を発音せずに肯定かな、ウソは付かない…。


「そうとも呼ばれているね。あとここの隠れせんせい」


「そう、取り乱してごめんなさい」


 ゆっくり近づいてくる。ふき取ったとはいえ御小水の香りがほんのりしている。ダリアは今無力だったっけ。


「ダリア、今綺麗にするからびっくりしないでね」


 一瞬で部屋ごと綺麗にする。近づいて来たダリアの手にゆっくり触る。


「だいじょうぶ?こわくないよ?」


 少しずつ手を取っていき、ゆっくりとダリアの胴体に抱き着く。


「ちゃんとしたわたしだよ?…ここにいる」


 暫くそのままホールド状態を維持する。


 ……


「ありがとうございます。もう大丈夫です。それで、大変失礼ですが、その、ビンタしてみてもいいでしょうか?」


 あー、そうくるか、まぁ確かに必要な工程かもしれない。


「うん、優しくしてね」


 ダリアが震える手で、ぷにってして、さすさすする、だいぶ長い。きっとその後のビンタが怖いんだろう。ダリアのヤル気が高まる。私は目をつむる。ベチーン


 う、ホッペがじんじんするよぉ…結構気合入れてやりおったなダリア。あ、視界が霞む…


「ごめんなさい、ごめんなさい」


 ダリアが私をギュッと抱きしめる。別に恨みはしないよ。好きなだけ抱き枕にして懺悔するが良い。


 もう数分してなんとかトラウマを克服できたみたいだ。付き物が落ちた顔のダリアが目の前にいる。


「ん?さっきなんでもするって言ってたよね?」


「え、いやぁ?そんな事は言ってなかったと思います、けど……」


 だめか。折角の弱みに付け込んで楔を打っておきたかったんだけど。


「……それでダリア、私、東列島に行ってみたい。明日からの遠征演習に付いてって大丈夫?」


「はい、大丈夫ですよ。明日から学園の転移魔法陣が全面開通するので自由に行き来して下さい」


 よし、大丈夫な様だ。ダリアのカウンセリングを終えてこの日は就寝した。

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