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18 気の向くままに1

18 気の向くままに1


 昨日はダンジョンに行ったんだっけ、今日はどうしようかな?授業に出てみようかな。何があるんだったか、歴史、魔法工学あたりは役に立ちそうだな~と考えつつ意識を覚醒していく。


「本日は何かご予定はお決まりでしょうか?」


「ん~、学園の方に行ってみようかな?」


 朝食や諸々を済ませてから学園へ行くことになった。それにしてもシエラが便利すぎる。なんでもできる完璧メイドだ。…他のメイドも裏方で手伝っているみたいです。それはそうか。昨日、本物の犬耳メイドさんを見かけた。機会があればモフらせてもらおう。シエラのは付け耳だからノーカンだよね。それでも限りなく本物っぽくてパッと見て分からないと思う。でもやっぱナマのもふもふをいつか堪能しないといけないと思うのです。


 ちなみに獣人は基本が人間ベースで申し訳程度に動物のパーツが付いているタイプと、動物が二足歩行するようなタイプがいる。骨格と大きさはほとんど人間と一緒である。人間に近い種はこの辺に多く、動物に近い方はシリオ大陸に多い、らしい。


 本日の朝食には天界ネクター、なる桃果汁ジュースを取り寄せて飲んだ。色んな果物があるんだけど、桃のネクターが好きなんだよね。『ペコちゃん』印のジュースの影響です。ももとかタダでさえウマイのにジュースになっちゃったとか完璧ですよ。

 何かいい食べものはないか、と天界通販カタログを流し見ていたら発見したもので、この桃ジュースを飲むと健康増進、更に魔力、魔法適性なんかをちょっぴり上げてくれるという凄い奴である。ポーション、マナポーション、軽い状態異常回復の効果も付いてくる。毎日飲まねばなるまい。ねっとり甘くておいしかった~。苦くて効いてるのか分からん青汁なんかは二流三流よ。今の時代は旨くて身体に良い、更に超常的な効果も付いてこなくっちゃ。




 さて学校の受付、それと事務部署があるあたりで、授業の種類やら時間割やらをザッと見てみる。今は一般公開されている(手続きは必用だが)勝手に入って良いそうなので(私は先生だから)とりあえず今やっている歴史の授業に出てみることにした。


 後ろからそそくさと入る。必修でないからか、あまり学生は入っていない。脳筋タイプの転生者は勿論の事、騎士志望の地元民なんかも居ない様子。ヨーロピアーンな出で立ちの学生が多い。もちろん金髪ドリルもいる。

 とりあえず私は視力も聴力も良いので後ろの方の席に座る。目立たないようにとアサシンの影を羽織ってる。机は勿論でかいので、シエラが椅子に座り、その上に私がすわる。

「この時期のマルタはキプロス帝国との睨み合い、小競り合いに加えて、北から魔族の軍が南下して来ており、挟まれていたため、時の大臣……が………を明け渡し…………余儀なくされた………これがあの有名な……」


 気づいたら寝ていたようだ。眠くなって来たけど頑張るぞっと思ったあたりで力尽きたみたい。なんかホッペをぷにぷにされた様な気がするけど記憶が曖昧だ。

 シエラを見てもいつも通り。…いつも以上に無表情なメイドだ。おぬし、さてはいたいけな幼女の頬を弄んでおったな?ん~、言ってくれればいくらでも貸し出すのになぁ~、このムッツリさんめ。

 くらえ、うーたんホールド! ノートも出さずに抱えていたうーたんの両腕でシエラのホッペをぽふっとする。大学の授業中に魔女コス園児(マントもあるよ!)が侵入、好き勝手している図が完成していた。

 周りをみると、学生たちは「あらあらうふふ」な顔の人が近くに数人、授業に集中している人がほとんどである。歴史の先生は若干あきれ顔で黒板に書かれた地図を使って説明をしているところだ。学生を良く見渡すからか、アサシンの影を着込んでいる我々を補足しているようだ。まぁ流石に目立つよね。

 ちょっと私に座学の講義形式の歴史は無理そうだ。いつか絵本とか簡単な本で勉強しようか。と心の中でしないであろうリベンジを宣言しつつ後ろの扉からそっと退出した。ぜんぜん頭に入ってこなかった。マジムリ。



 あとは武術とか魔法の授業なんだよなぁ、必修の授業は人も多そうだし、などと考えて参加するのは断念した。

 学園の未知のエリアを探検するのも面白そうだがそれはまた今度にして、商店街の方へ行くことにする。


 学園正門の門番が昨日までは二人だったのに、今日は外に四人、詰所に数人居る様だ。ちょっと厳重すぎやしないかね。スッと私の黒いカードを掲げて見せて通ろうとする。


「一応規則なので、しっかり見せてもらっていいかい?」


 昨日はそんな習慣は無かったように思うが、そういってこの門番に良いように身体検査されてしまうのだろうか。いや、おおかた転生者が何かしでかした影響だろう。具体的に想像つかんが……。


「はい、たしかに、行ってらっしゃい、夜には帰ってくるんだよ?」


 転生者の非行を想像している間に門番チェックが終わった様だ。本当にしっかりカードを見ただけだった。なんか疑って?申し訳ない気持ちになって挨拶した。


「うん、いってくるね」


 商店街、まずは串焼きをっと思って二本買ったが、そういえばおなか空いてないなと思い時空アイテムボックスにしまった。中でタレがべちゃーってなったりしないし次取り出したときもホカホカだ。

 シエラはまた美味しそうに食べた。好きなだけ食べさせてあげようかとも思ったがこういうのは通りかかった時にコツコツ食べるのがワビサビである。…シエラは好きなだけ食べて良いよって言ったら屋台の肉全部食べそう。そういう人外アピールはご法度である。


 道具屋は消耗品の類いが多く、これはと思うような掘り出し物は見当たらなかった。天界印で一式取り揃えてしまったし、また今度物色してみよう。私には魔法があるしね。



 ぷらぷらと散策を開始すると、ちょっと洒落た喫茶店、軽食はあるが酒は高いワインのみ。という下郎お断りっぽい、日当たりは良いが通りの喧騒からは遠い、というナイス雰囲気のお店『ワイズハウス』を発見した。

 手入れが行き届いているがしっとりと落ち着いた佇まいの構えのお店。ふら~っと吸い寄せられるように入店。ダージリンとチーズケーキを注文してまったりとする。椅子は例の、足の長い子供椅子である。ウエイトレスさんは派手さが無いが、しかし綺麗な給仕服であった。


「あっ…」


 髪を編んで後ろに回している茶髪に紫目でおっぱいが…Eくらいある15歳前後と思われる給仕娘が何やらドジったような声を出した。この世界では15歳で成人になるので、この、荒れくれ者や貴族なんかに難癖付けられ手籠めにされてしまいそうな娘の存在は合法である。まぁ奴隷も居るし、もっと小さい子も働いてたりする世界なのではなから違法ではないんだが。


 テーブル席を抜けて水色の精霊が私の方へスィーっと飛んできた。私の目の前でクルクルしている。(珍しいな、こんな都心の屋内に精霊なんて…)指でちょんちょんして戯れる。


「………」


 ドジっ娘が銀色お盆を抱え込んで下から下乳に少し食い込ませつつ私と精霊を『はわわっ』という感じで見つめていた。ほう、精霊が見えるとな?さてはそのケシカラン乳に精霊を隠し持ってるな。ちょっとみせてみろ。などと脳内コントしつつ娘を見る。

 ふむ、普通に人間だ。魔力B、魔法運用効率B、職業は魔女見習いで、精霊の加護も付いている。魔法もそこそこ覚えている、そんな魔女っ娘、日中はウエイトレスのミーアちゃんだ。



 精霊に、きてきて~的なオーラをだす。具体的には手からピュアな魔力をちょこっと練り練りして出しているっぽいんだけど。精霊は方向性の無い魔力を好む。

 生き物から出るような魔力は癖がついているのであまり好まない。自然から湧き出すおこぼれに群がるワケです。近年地球でブームの天然指向のグルメな食いしん坊が精霊さんである。

 エルフと妖精はピュアっぽい魔力を使えるので餌付けもばっちりである。また、基本的に精霊を害することはできない。実体を持たない水の様な生き物である。手のひらに精霊を乗っけてミーアちゃんを見てみる。


「…あの帽子…エルフの子?……魔女じゃないよね…」


 ぶつぶつ言っていた。そして一度奥に引っ込んでから…なんと鉢植えの花を持ってきた。微弱ながら魔力が染み出ている。なるほどそういうことか。


「精霊さん、とっちゃうの?」


 幼女の鋭い眼光で射貫く。この幼女から物を取り上げるには相当な精神負荷が掛かるはずだ。うるうる、いぢめる?


「精霊さんはお家でおねんねしたいって言ってるよ?」


 やりおる。精神対抗に勝利したみたいだな。精霊さんはただの食いしんぼさんだぞウソをつくな、訴訟も辞さない。しかし精霊は私の手のひらから動こうとしない。お前の精霊、今オレの手のひらで寝てるよ。などと内心でコントしつつ、


「精霊さん、寝ちゃったみたい。精霊さん、おうち、つれてく?」


 そうこうしてあるのかも分からない企業秘密を暴こうとしているうちに、奥からモノホンの魔女がやってきた。狂気に染まった様子はなく、「イィーッヒッヒ」とは言いそうにない白髪で、70歳くらいに見えるおばあちゃんである。見方によっては完全に魔女装備だが帽子は魔女帽子ではなく紳女の被る帽子である。紫色の服のマダムって感じですね。つかつかとやってきて。


「ミーア、置いてきなさい」


「…はいっ」


 ミーアちゃんが鉢植えを置きにいった。


「…なるほど、いや…お嬢ちゃん、エルフかい?」


 すこしぶつくさ言いつつこちらを観察した後に、声をかけてきた。


「そうだよ、えれっ……朧っていうの。おばあちゃんは魔女さん?」


 いかに強大な魔女であろうとも、この【真理の魔眼】からは逃れられない(キリッ)


*******************


名前:スエザ・ブラスティック

種族:魔女

性別:女

年齢:466

職業:魔女

賞罰:戦争時の大量破壊

称号:森の魔女、精霊の加護、魔女の眼、


状態:正常

物理耐久:C/C

精神耐久:B/B

魔力:S/S

筋力:D

精神力:A

対物理性能:B

対魔法性能:A

俊敏性:D

器用さ:A

知力:A

魔力運用効率:A

発動可能魔法種:火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法、浄化魔法、汚染魔法、回復魔法、支援魔法、付与魔法、召喚魔法、時空魔法、無属性魔法、生活魔法、固有魔法(魔女)


*********************


 強いなこのおばあちゃん、逆らわんとこ


「そうさね、私は魔女のスエザさ、ここのオーナーだね」

「む、お嬢ちゃん、魔眼持ちかい?何か凄いの持ってるみたいだね。今までに見たことないけど。っと、いきなりでわるいね……そうだ、こっちにおいで」


 魔女というのは、魔法を極めた存在が、人間の枠にとどまらなくなった女性である。ざっこ、ニンゲンヤメタわ。というわけである。仙人とかもこのタイプ。


 シエラはぜんぜん反応していない。恐らくいきなり殺しにかかってきてもどうとでもなると判断したんだろう。真の化け物は隣に居るんじゃよ。はっはっはっ。可愛ければおっけー。


 魔女にかどわされ、お菓子の家にでも連れていかれるのかと期待してついていくと、地下に植物園兼、魔法使いや魔族、吸血鬼などの人目を憚る者達のシークレットな喫茶店が展開されていた。

 地下なのだが、魔水晶が主体の巨大な魔道具が天井から吊り下げられて光源になっていた。こりゃ植物も魔力が染み出しちゃうね。プチ植物園には精霊が…十匹ほどふよふよと漂っている。お、妖精が花に顔を突っ込んで蜜を吸っているようだ。故郷のエルフの森を思い出す。わぁ~、いいね!


「ここはね、地上の煩いのが嫌いな連中が集まるところさね。お嬢ちゃんもこっちの方がいいだろう?」


「わたしはどっちでもいいよ!でも、妖精さんはすき!」


「あぁ、可愛い子さね。歳を取ると寂しくなってね。次からはこっちきていいからね」


「妖精さんが居る場所は良い場所だもんね~!」


 妖精や精霊は悪意に敏感であり、それを察知すると距離を取る傾向がある。お手軽悪意センサーだね。


「気が向いたらさっきのドジそうな娘と遊んでくれるとうれしいね」


 などなど、スエザさんは魔女だけど気の良いおばあちゃんだ。ここはお気に入りの喫茶店登録決定ですわ。


 他の客もおのおのゆったりと椅子に座りながら寛いでいる。皆さん安息の地を見つけたって表情である。見ると奥の方に固定席っぽいエリアがあり、デーモン、ヴァンパイア、アークスライム(人間形態)、有翼族など、やべー種族が多い。今私が居るエリアは比較的ヤバく無さそうな種族が多いが、指が足りない人とか、死霊術士っぽい服装の人とか、全てに疲れた顔をした、しかし人知を越えた叡智を覗かせる眼を持つ老紳士などが居る。誰も彼も、ここではその経歴など無いかのような落ち着き様で読み物を読んだりしている。


 ここの客の一人に話しかけたらくっそ長いサイドストーリー始まりそうだし今はやめておこう。そんなことより妖精さんと精霊さんじゃ。


 森へお帰りってな感じで、手のひらの精霊を魔力の道筋を描いて植物園に誘導する。が、私の魔力に引かれたからか、逆に数匹の精霊がこちらに来てしまった。妖精さんも顔を蜜まみれにしながらわたしの頬に「ペチッ」っと張り付いた。…こいつら。


 ゆるす!


 そのまま勝手にさせつつ、ミーアちゃんが上から持って来てくれた紅茶とケーキで一息する。


 ミーアちゃんと遊ぶ、ねぇ。魔法でスカートでも捲ればいいのだろうか。でも、わたしにはシエラが居るからな。そういうことを他人にするとむっとするに違いない。


「シエラ、植物園見たいから肩車して~」


「お嬢様!かしこまりました。」


 ほら、シエラもなんか嬉しそうだ。私もうれしい。


 ミーアちゃんはまた今度だ。師匠に修行で遊んで貰いなさい。魔力を綿飴のように練り伸ばした塊を植物園に飛ばし、綿飴君がハイエナ達に群がられているうちに退散した。結局、遠慮するシエラにも紅茶セットを食べさせた分も含めて銀貨2枚をテーブルに置いておくのも忘れない。安い。ぜったいこの喫茶店は道楽経営だわ。

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