プロローグ1
前回に引き続き今回も短いですが、読みやすいということで許してください。
僕の名前は如月悠一。高二。父さんは研究職をやっていて、海外での活動も多いのでなかなか家に帰ってこない。だからあまり話す機会がない。
という訳で実質母ともう一人との三人暮らしだ。
「痛い。本当に痛い。真面目に死にそう。」
そんな僕だが今は若干涙目になりながら、情けなく転げ回ってる。だが、それも仕方ないと思う。
現在僕は五ヵ所に打撲、七ヶ所に裂傷、二ヶ所に銃創、左腕は肩が外れて人差し指と中指がつき指している。今日もこんな大怪我をしてるんだから。
「こらこら、じっとしてなさい。上手く手当て出来ないでしょ。」
そんなことを言いながら救急箱を持った母さん―――如月乙葉が寄ってきて、慣れた手つきで僕の手当てを始めた。毎日やってるから母さんの手当ては下手な衛生兵よりも上手い。
「これでよしと。脱臼とつき指は自分で何とかしなさい。」
普通の家庭ではある意味虐待とも言える台詞だが、僕にとってはいつものことなので僕は無事な右手で左肩と二本の指を力ずくでもとに戻す。週一くらいのペースでやっいることだがこの治すときの独特の激痛には慣れない。
「あー、やっぱり痛い。死にそう。」
僕は左肩を抑えてしばらく悶絶した。その様子を母さんは微笑ましげに見ている。何処に微笑ましさがあるんだ?心配しろよ!!
母さんは専業主婦で、もう高校生になる僕を生んだとは思えないほど若々しいと近所で評判だ。
胸は小ぶりなメロン位の大きさがあるし、太ももや二の腕の肉付きがよく、しかし引っ込むべき所は引っ込んでいる。ある種理想の女性を体現したような人だ。母親に対する形容としては不適切かもしれないがかなり艶かしい。ちなみに僕は母親似らしい。
「その程度の傷でピーピー喚くとは、まだまだ青いな。」
と、僕のどう見ても重傷なダメージをその程度の傷とか言ってるアホなハスキーボイスの女性が部屋に入ってきた。全体的に柔らかそうな母さんとは対照的に無駄な脂肪が一切ない。例えるなら研ぎ澄まされた刃のような美しさのある女性だ。僕が毎日怪我する原因、というか怪我させてる張本人だ。
彼女の名前は小野フミナ。僕が6歳の頃から家に居候していて、僕にとって姉のような存在でもあるので僕はフミ姉と呼んでる。僕の家庭教師で鬼だ。
僕くらいの年になると一般に鬼教師と呼ばれている存在を大して怖くないと思う人もいるだろう。何故なら彼らはただ怒鳴って説教をするだけだからだ。
だが、フミ姉はそんな鬼教師とは格が違う。本物の鬼と言っても過言ではない。
というのも、フミ姉の『教育』には凶器が出てくるのだ。始めの内は竹刀や鞭などの比較的安全なものだったが、最近では拳銃が出てきた。しかも実弾。教育法?なにそれおいしいの?な人である。
初めてこいつの『教育』を受けた幼少の頃の僕は、本気で命の危険を感じて、全力で体を鍛え始めた。そしてちょいちょいフミ姉とアクション映画ばりの戦闘をするので拳銃で武装をした相手くらいなら素手で倒せるようになってしまった。
世の中にはフミ姉のような綺麗なお姉さんに痛め付けられれば興奮するマゾヒストという種族がいるらしいが、僕は違うので普通に痛いだけだ。
「フミ姉、いつも言ってるだろ!せめて撃つならゴム弾にしろ。」
僕が抗議する点は最近ずれてきているが、
「何を言う、実弾でないとちゃんとした戦闘技術が身に付かんだろ。」
こんなことを澄ましがおで言うフミ姉は根本的にずれてる、いや、狂ってる。
「お前のは明らかにやりすぎなんだよ!」
「何を言う、男はいつ戦場に放り込まれるかわからんのだ。そのときにもっと鍛えておけば良かった、なんて思っても遅いんだぞ。」
「思うか!!」
このやり取りもいつものこと、日常の一部分となっている。こんな家庭教師は直ぐにクビどころか訴えられてもおかしくはないんだが、
「うふふ、フミナさん、悠ちゃんを逞しい男の子にしてあげてくださいね。」
母さんがこんな調子だから仕方ない。
まあ、フミ姉は口は悪いしそれ以前に口より先に手が出るが、根はいいやつだと思う。何だかんだで僕のことを気にかけてくれているし『教育』も死なないようには気を使ってるようだ。日常的な体罰をふるって来て無理矢理いろんなことを覚えさせてくるのも本当に有事の際に僕が困らないようにという彼女なりの優しさだというのも理解しているつもりだ。実際、教え方は上手いので成績の半分くらいはこいつのお陰と言えなくもない。それにさっきも言ったが姉のような存在であり僕もフミ姉の事は嫌いじゃないので家にいてほしいと思ってる。
それにフミ姉は命の恩人だ。だから憎まれ口をたたくことはあっても本気で憎むことはない。
ただ唯一恨んでいるのは、幼少期にきたえすぎたせいで身長が全然延びないのだ。高二にもなって161cm。
母親似で中性的な顔なことと合わせて、ご近所さんに「可愛らしいね」とナチュラルに心をえぐられるのが最近の悩みだ。
「そうそう、悠ちゃん、明日からの研修旅行の準備はちゃんとできてるの?」
僕が通っている高校ではゴールデンウィーク中に何であるんだよと言いたくなるような鬱陶しい平日を休みにして、代わりに4月29日から5月4日に海外に研修旅行に行くのだ。自由参加で定員は三学年合わせて30人。今年はニューヨークに行く。
僕はそれに参加することになっていた。
「気を付けるのよ。海外には怖い人がたくさんいるって言うし。」
母さんは心配げに言ってくるが、僕からすれば一番危険な存在が家のなかにいると思う。
「安心してくれ、母さん。世の中にフミ姉より怖い人がそうそういてたまるか。」
「おい、悠一、それは女性に対する発言としてはいささか失礼ではないか。」
そう言いながら戯れにかけられたフミ姉の鍵固めによってせっかく治した僕の左腕はまたはずれるのであった。
お読み下さりありがとうございます。今回は主人公の家の中のお話です。まあ、今後あんまり出る予定はないのでなんとなくで読んで下さい。でも、フミ姉は出すかもしれません。なので頭の片隅には覚えておいてください。次回も短くなると思いますが、そろそろあらすじで書いた異世界転生をさせたいと思います。次回も読んで下さい。




