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それぞれの想い《一之瀬優真編》

すみません。暫く投稿が途絶えておりました。打ち切ってはいないので今後もピアレスアドベンチャーをよろしくお願いします。

 王都を出て整備された道を二百メートルほど進み、道を外れて森の中を一分程歩いた所に草木に紛れて地下遺跡への入口がある。遺跡とは明らかに人工物であるにもかかわらず誰が作ったか分からない構造物の総称だ。その中では貴重な財宝や時にはアーティファクトと呼ばれる不思議な力が宿った道具を手に入れることが出来るが外とは比べ物にならないくらい強力な魔獣が多数生息しておりまた凶悪なトラップも無数に存在するため探索するには大変な危険をともなう。未だに全容が掴めていない物が多くこの地下遺跡もその一つだ。


 『神徒の騎士団』は実戦訓練のために親衛騎士団と共にこの遺跡に赴いていた。奇しくも如月が裏切った翌日となったのだがこれは単なる偶然だ。『神徒の騎士団』は高位世界から降りてきたばかりのためまだこの世界で顕現するための形代に慣れていない(という設定)ので、二週間ほど安全な王都で訓練し地下遺跡にて実戦訓練を一週間行った後に魔族との戦線に出るというのは初日に決まっていた段取りだ。今回は初回ということもあり正確なマッピングをされたエリアに限定するのでよっぽどのへまをしない限りは死者が出ることはないだろう。


 とはいえここに住む魔獣は侵入者に対し情け容赦なく爪牙をふるうので常に死と隣り合わせである。俺ー一之瀬優真を含む『神徒の騎士団』の面々は緊張した面持ちで訓練に挑んでいた。


 薄暗い遺跡の中を隊列を組ながら慎重に進んでいく。振り返っても入口が見えなくなった辺りでついに魔獣が出現した。斑模様のあるモスグリーンの狼のような魔獣が五匹同時に襲いかかってくる。


 初の実戦に怯んでしまった『神徒の騎士団』をカバーするためにテオングさんを筆頭とした親衛騎士団の精鋭が身を呈して魔獣達の初撃を防ぐ。弾かれてノックバックさせられた狼魔獣達。しかし壁や天井を足場にすぐさま追撃を放ってきた。予想外に早い二撃目にテオングさん達は反応できていなかった。


 不意討ちのショックからなんとか立ち直った俺は前に出て無造作に剣を振るう。その動作に合わせて魔力を事象干渉力からエネルギーとなるまで圧縮した圧縮魔力を放出する。無属性魔法、魔衝撃。


 俺の攻撃は決め手とはならなかったものの確かに狼魔獣達の足を止めた。そこに静乃や隆一等の前衛メンバーが二、三人がかりでそれぞれの魔獣を取り囲んだ。狼魔獣はアクロバティックかつ俊敏な動きで翻弄するが俺達は数の利を活かして互いに死角をカバーしあい一進一退の攻防を繰り広げる。


 戦力が拮抗しているため戦闘は膠着状態に陥った。しかし後衛の魔法が完成し色とりどりの魔法が魔獣を正確無比に射抜き存外あっさりと戦闘は終結した。


「やったのか?」


 あまりにもあっけなかったため俺は半信半疑で呟いた。他のみんなも同じような状態で殆どが呆然としている。とはいえそんな状態は長く続かず少しずつ事実を認識し始め、


「「「よっしゃあああああ!!!」」」


 一部の男子が盛大に快哉の声を挙げた。それを合図に各々が近くに居るものと喜びを分かち合う。


「おいおい、あんまり騒ぐな。魔獣が寄ってくるだろ。」


 テオングさんがたしなめるがその声に叱責するような凄みはない。実戦での初勝利ということで大目に見てくれているのだろう。

 

 この勝利を切っ掛けに勢い付いた俺達は着々と襲いくる魔獣を殲滅していった。何せ俺達は魔力を始め諸々のスペックはこの世界の人間を遥かに上回っているのだ。冷静に戦いさえすれば負ける道理はない。頭で分かっていたその事が体験をともなって実感出来たため最初は怯えていた者にも余裕が出来てきた。


 しかし余裕は裏を返せば慢心であり慢心は油断を生む。そして事件というものは決まって油断しているときに起きるものだ。


「逃げろ、逃げろ・・・うわぁぁぁ・・・」


 それは一度探索を中断し休息をとっていた時のことだった。少し離れた場所から聞こえてきた悲鳴に全員が身を固くする。


「アレンか?おいどうした、アレン!」


 テオングさんが声の主の名前を叫ぶ。しかし声が反響するばかりで返事は得られなかった。


 アレンとは斥候として周囲の索敵をしていた騎士の一人だ。


「くそっ。少し様子を見てくる。お前たちはここでおとなしく・・・」


 テオングさんはさすが熟練の騎士というべきか素早く状況を見極め指示を飛ばす。しかしその途中で先ほど声が聞こえてきた方向から熱線が飛来した。


「離れろっ!」


 真っ先に異変に気づいたテオングさんが叫ぶとともに障壁魔法を展開。熱線はあっさりそれを食い破ったが軌道がそれて天井を焦がすのみにとどまった。


 そしてそれは現れた。


 それは二本足でたつ人型の魔獣だ。しかし人型といってもシルエットが人に近いというだけでその姿は明らかに人とはかけ離れていた。


 まず全身がコンクリートのような鼠色で所々にひび割れのようなものが見られる。足は枯れ枝のように細いのに対して腕はアンバランスに太い。一体どうやって体重をささえているのだろうか?顔に当たる部位には目鼻は無く粗い刃で裂かれたような歪な口があるのみ。


 これまで相対してきた魔獣とは比べ物にならない程の醜悪な姿に俺は無意識のうちに一歩後ずさった。しかし表情に最も戦慄を浮かべてるのはこういう魔獣を見慣れてるはずの親衛騎士団達だった。


「まさか、こいつは、ヴォルケイノ!?」

 

 騎士の一人が震える声で叫んだ。他の騎士も一様に怯えており中には腰を抜かしている者までいる。


「何なんですか、あいつは?」


 俺達の中で比較的冷静な雫が訪ねる。これに唯一反撃できそうな意識を保っていたテオングさんが答えた。


「このエリアで最も脅威とされるいわゆる主とよばれる魔獣だ。普段はもっと奥の方に徘徊していてこの辺で出くわすことは滅多にないはずなんだがな。神の使徒の魔力にでも引き寄せられたか。気をつけろこいつの火力は化け物級だ。油断していると熟練の騎士や冒険者でも簡単にやられる。」


 その説明に俺は言葉もでないほど動揺した。俺達はつい最近まではただの高校生だったのだ。いくら魔力を多く保有していようと戦う術はまだまだ未熟で弱い。その事はこれまでの訓練、そしてあいつ(・・・)に散々思いしらされたことだ。


 他の『神徒の騎士団』も俺と同じように動揺している。このままでは恐怖に耐えかねだれがどんな行動を起こすか分からない。団長である俺が何とかしないといけないが俺自身足がすくんで動けない。


 しかし結果的には俺が危惧した事態にはならなかった。


「安心しろ。『神徒の騎士団』は必ず生き残らせる。おいお前達、いつまで腰を抜かしている!親衛騎士団の意地の見せどころだぞ!」


 テオングさんが皆の不安を払拭するかのように堂々と剣を構え、部下に檄を飛ばす。それを受けて引け腰だった親衛騎士団は戦えるだけの気勢を取り戻した。その表情には恐怖ではなく底知れぬ覚悟が宿っていた。まるで死地を定めたかのような。


「この化け物は親衛騎士団が抑える。その間に逃げろ。」


 その言葉に俺は一瞬頭の中が真っ白になった。まるでではなく本当に彼らはここを死地と定めていたのだ。じわじわと言葉の意味を理解し、俺はその指示に異をとなえた。


「何言ってるんですか!テオングさん達を置いていくなんて出来ません。俺も一緒に戦います。」

「無理だ。こいつは並の魔族すら一蹴する。今のお前達では相手にならない。」

「だからって・・・」

「こんなときに我が儘を言うな。おい雫、首に縄をつけてでもこいつを連れ出せ。それと障壁魔法で後ろを守れ。」


 それだけを言い残しテオングさん達はヴォルケイノへと無謀に立ち向かった。


 指示を受けた雫がアーティファクト・グリモアに手をかけた。無数の魔方陣を記した魔導書が持ち主の意思に呼応して必要な魔方陣を開く。そして長大な光の障壁を生成した。


「逃げるわよ、優真。」

「雫っ!?テオングさん達を見捨てるのか?」

「見捨てるも何も私たちが戦っても無駄死にするだけよ。」

「だったらこの障壁に隠れて全員逃げれば・・・」

「それも無理。範囲を優先した分強度はさほど強くないの。余波を防ぐだけで精一杯よ。テオングさん達もそれが分かってるから自ら囮になったんでしょう。」

「だからって置いていくわけにはいかないだろ。」

「物事には優先順位ってものがあるのよ。今は自分が生き残ることだけを考えなさい。」

「ふざけるな!」

「ふざけてこんなことが言えるわけ無いでしょ!」


 珍しく声を荒げた幼馴染みに俺は驚愕し我に帰った。見ると雫は血が滲む程きつく自分の手を握りしめている。雫だって見捨てるのは辛いのだろう。その感情を押し殺して一人でも多く生き残るための選択をしているのだ。


「でも・・・」


 しかし俺は決断できない。俺達に戦いかたを教えてくれた師でありまた兄貴分のような存在でもある親衛騎士団を簡単に見捨てられるはずがない。


 俺の煮えきらない態度に相変わらず変化の乏しい雫の表情にも苛立ちの色が浮かぶ。そして決定的な言葉を口にしてしまった。



「悠一君がいないのに勝てるわけ無いでしょ!」



 如月悠一。その名を聞いた瞬間、俺の中で何かが崩れた。


「なんだよ・・・何で今あいつの名前が出てくるんだよ。」

「っ!ごめんなさい。」


 思わず口にしてしまったらしく雫は謝ったが、一度頭に血が登ったら簡単にはおさまらない。


「あんな裏切り者なんか必要ない!俺が証明してやる!」

「あっ、待ちなさい優真。」


 雫の制止を振り切り俺は障壁の向こうのヴォルケイノへと突貫した。普段ならもう少し冷静な判断ができたかもしれない。しかし如月悠一の名には俺がそこまでキレるだけの効果があった。




 幼い頃から俺は自分が特別だと自覚していた。といっても別にナルシストだというわけではなくただ事実としてその事を認識していた。


 習ったことはすぐ覚えられたし、スポーツもルールさえ覚えれば誰にも負けなかった。特に努力すること無く大抵のことはこなせたしやろうと思ってできなかったことは一つもなかった。自然と集団の中心にいることが多くなり俺にとってそれは当たり前のことだった。


 だから全国的にも有名な高校に進学して、尚且つ入学式で答辞を読むことになっても俺は然して驚かなかった。

 

「一位の子が辞退したんだけど・・・」


 しかし打ち合わせをした教員が漏らしたこの一言には驚きを禁じ得なかった。てっきり自分が一位だと思っていたのだ。


「一位って誰ですか?」


 好奇心から俺はその教員に訪ねた。もっとも試験結果を他人に漏らすようなことはないと思っていたが、意外にもその教員はあっさり答えてくれた。


「確か如月悠一って名前で、全教科満点で合格なんだって。」

「はっ?」


 思わず呆けた声で問い返してしまった。全教科満点?俺だって試験問題は全て解けたつもりだがそれでも多少の計算ミスや覚え間違いはした。そんなミスをした上で高得点をとれるように勉強していればいいと考えていた。しかしその如月悠一はそんな小さなミスすらしなかったらしい。


「そうですか。すごい人がいるものですね。」


 声音には出さなかったが俺はこの時、初めて自分より上の結果を残した少年へと興味を抱いていた。



 そして迎えた入学式当日。式はつつがなく終了し俺は割り当てられたA組の教室に向かった。何度か声をかけられる度に短い会話を交わしながら教室に入り、出席番号順なので廊下側の窓際の席に着く。そこで俺はあいつ(・・・)と出会った。


「えっ、入試で全教科満点だったの!?」

「何で答辞を辞退したの?」


 不意に後方から聞こえてきたそんな会話。全教科満点という言葉に俺は振り向いた。 


「なんというか、人前に出るのって性に合わないんだ。」


 振り向いた先には談笑している数名の男女。その内の割りと小柄な男子に俺の意識は吸い寄せられた。


 特に優れた容姿というわけではなく逆に醜悪な見た目でもない、ごくごく平凡な顔立ち。強いて特長をあげるなら中性的というくらいだ。


 ただ同じだと感じたのだ。俺と同じようにどこか特別な雰囲気をその少年は醸し出していた。見た瞬間に俺は直感した。こいつが如月悠一だ。


 そして俺はその男子の方に向かった。


「やあ、はじめまして。僕は・・・」

「お前が如月悠一か?」


 こちらに気づいてにこやかに挨拶してきた男子の言葉を遮って俺は確認する。


「えっと、何で僕の名前を・・・」

「俺は一之瀬優真。今日からお前は俺のライバルだ!」


 困惑している如月を無視して俺は堂々と宣言した。この時はただ嬉しかったのだ。自分と張り合える人と出会えたことが。しかし俺は後に知ることとなる。そんなものは幻想にすぎなかったと。



 高校生活が始まり、俺と如月の初の対決の場は体育の授業だった。初回ということでオリエンテーションが行われ、その後は各自グラウンド内で自由に体を動かすように言われた。


 勿論初めはいくつかのグループにわかれて思い思いに遊んでいたが俺がみんなに声をかけてせっかくだから全員でサッカーをしようという流れになった。俺の目的は勿論如月と勝負することだ。入試で一度負けているため断然気合いが入る。


 クラスの男子はちょうど22人のため都合よく11対11に分けることができ、更に先生が審判を買って出てくれたので割りと本格的な試合になった。当然俺と如月は別チームだ。


 最終的な結果は三対一で俺のチームの敗北。しかし俺はこの結果を大して悲観していなかった。勿論負けたことは悔しいがこの時はむしろそれでこそ俺のライバルだと思っていた。


 次の体育はバスケの実習授業だった。サッカーとは違いいくつかのチームにわかれて対戦表はランダムに組まれたが、幸いにも如月のチームと当たった。結果は十対六でまた敗北。これで実質三連敗。さすがに焦燥感を抱き始め、次こそは勝つとより気を引き締めた。

  

 しかし次もその次もまたその次も俺は如月に或いは如月のチームに勝てなかった。体育だけでなく定期考査でも常に如月が一位で俺が二位。いや、俺は二位すら維持できていない。


 初めてこいつを見たとき俺は同じだと感じた。俺と同じように特別な存在だと。でも違ったのだ。俺が感じていたのは今まで他人が俺に対して感じていたものと同じものだった。


 ようやく俺は自覚する。如月は俺のライバルなんかじゃない。俺は絶対に如月に勝てないのだと。


 

 月日は流れ俺は高二へと進級し、そこで生まれて初めて春が来た。


 入学式で見かけた新入生のポニーテールの少女。名は結城静乃というらしい。俺はその少女に一目惚れした。


 四月の半ばくらいのある日、俺は教室で静乃を見かけた。誰かを探しているようだったがとにかくチャンスなので声をかける。


「やあ、俺は一之瀬優真。君、一年生だよね?うちのクラスになにか用?」


 女の子に声をかけられたことはあっても自分から声をかけた経験は皆無なので一先ず無難な話題から入る。静乃は声をかけられたことに若干戸惑っていたが礼儀正しくお辞儀をしてから会話に応じてくれた。


「はじめまして。結城静乃です。あの、如月先輩ってどこにいるか分かりますか。」

「え?」


 静乃の口から如月の名前が出たことに何とも言い難い衝撃を受け俺は固まってしまった。そしてちょうどそのタイミングで如月が現れた。


「おう、静乃。一之瀬となに話してんの?」

「あ、先輩。いえ、ちょっと声をかけられただけです。それよりもどこにいたんですか?教室にはいなかったようですが。」

「僕、隣のクラスなんだけど・・・」

「え!そうなんですか!?」


 そんな風に会話しながら如月と静乃は去っていく。楽しげな二人の後ろ姿を見ているうちに俺は今まで感じたことのない黒い感情が沸き上がってくるのを自覚した。


 この瞬間、如月悠一は俺の敵になった。




「うおおおおおお!!」


 余裕綽々に親衛騎士団を蹴散らすヴォルケイノの無防備な横腹に渾身の切り下ろしを見舞う。しかしヴォルケイノは片腕で剣を受け止めた。


 一瞬変則的な鍔競り合いにになったがヴォルケイノのもう片方の腕で顔面を強打され俺は木っ端のように吹き飛ぶ。遺跡のごつごつした壁に全身を打ち付けながらもなんとか意識は保てた。


 鍔競り合いから反対の手で殴る戦法は奇しくも王都で俺が如月されたのと同じだ。しかしあのときは一撃で意識を失ってしまった。


「化け物かよ、あいつは。」


 少なくともパンチの威力では目の前の化け物(ヴォルケイノ)よりも如月のほうが上らしい。雫の言う通り如月ならヴォルケイノを倒せるのかもしれない。


 そんな思考をしている間にもヴォルケイノは俊敏な動きで追撃してくる。俺は不格好に地面を転がってどうにか回避し、手に持つ大剣を投げつける。


 この反撃は予想外だったのかヴォルケイノは不必要に大きな動きで回避したのでほんの僅かに隙ができる。俺は剣を拾う手間も惜しんで体当たりを喰らわせる。更に怯んだところを身体強化魔法で威力を上げた連続正拳突きを放つ。


 だがヴォルケイノもやられっぱなしで終わるはずがなく、五発目の正拳突きを伏せてかわした後巴投げの要領で部屋の隅へと投げ飛ばされる。


 角に追い詰められたうえに衝撃で身動きがとれない俺にヴォルケイノは焦らすように一歩ずつ迫って来る。そしてその口腔に莫大なエネルギーが充填されていく。おそらく熱線を放つつもりだ。まさに絶体絶命。


「優真ァッ!!」


 雫が叫びながらグリモアから魔方陣を展開しようとしているが間に合いそうにない。しかし俺の心に焦りはなかった。諦めた訳ではない。ただ逆転の一手を既に考えついているが故の余裕だ。


 余談だが俺の両手剣は王国から支給されたアーティファクトだ。機能は全部で三つ。


 一つ目がどんなに無茶な使い方をしても絶対に折れず曲がらず砕けないこと。二つ目が光属性の全ての魔法陣を展開し詠唱もなしに発動できること。そして三つ目が所有者の意思に応じてどこにあろうと瞬時に手元に戻ってくること。


 俺は思念で大剣を手元に呼び戻した。しかし俺と剣の間にはヴォルケイノがいる。するとどうなるか?俺のもとへ戻ろうとした大剣はかなりの勢いでヴォルケイノに衝突した。


 都合よく刺さったりはしなかったもののそれなりに重さのある大剣が衝突したことでヴォルケイノは一瞬だがよろめいた。俺はヴォルケイノの脇を通って戻ってきた大剣をつかみ第二の機能で最強の魔法を起動した。


 直後、俺の全身から黄金の魔力が溢れだし視界は見違えるほどクリアに体は異様なほど軽くなった。


 光属性最上級魔法:英雄凱旋


 人間の潜在能力を強制的に引き出し一時的にあらゆる能力を大幅に引き上げる魔法。代償に使用後は極度の疲労と魔力欠乏に襲われる。


「うぉぉぉーーーー!」


 俺は爆発的に上がった敏捷度を活かしよろめいて隙をさらしているヴォルケイノに渾身の切り下ろしを放つ。今度は防御されることはなく刻まれた切創から赤黒い血が吹き出す。勿論それでは終わらず俺は何度も何度も無我夢中で剣を振り回しヴォルケイノを切り刻む。 


 半ば八つ当たりのように内側から溢れ出る感情を剣に乗せて目の前の化物に叩きつける。

 

 どれだけそうしていたことだろうか。数分後には英雄凱旋が終了し魔力欠乏症によって俺は意識を失った。

お読みくださりありがとうございます。今回は悠一くんと一之瀬優真の因縁についてのお話。(一之瀬が一方的に敵視しているだけですが。)

予定では雫と静乃の回想もいれるつもりだったのですが文字数が予想以上に多くなったのと時間がないのとで一之瀬だけになっしまいました。というわけでごめんなさい。もう一話幕間が続きます。今度は雫のお話。静乃は・・・もういいや。


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