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選ばれし名、選びゆく道  作者: 孔雀丸


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第4話 冥嶽十一尊

こんにちは。

いつも『十彩獣団』を読んでくださり、ありがとうございます。


第七章「選ばれし名、選びゆく道」も、いよいよ第4話です。


第1話で開かれた棺には、遺体ではなく十本の鍵が収められていました。

そして第3話のラストで、勝川市の洞窟に並ぶ十個の巨大な棺が姿を現しました。


今回は、その棺がついに開きます。


舞台は、地図にも載らない金津家の洞窟。

壁には風化した梵字、床には黒ずんだ染み。

天井から落ちる水音だけが、時間を刻んでいる場所です。


覇竜十傑が十人揃った意味。

巨徳が四百年以上待ち続けたもの。

その答えが、この話で明らかになります。


そして今回は、これまで名前だけが出ていた存在たちが、ついに全員登場します。


無選涅槃宗、冥嶽十一尊。


覇竜十傑や五天王とは、まったく異なる雰囲気の鬼たちです。

一人ひとりの登場シーンにも、ぜひ注目してみてください。


もうひとつ、今回の大きな見どころがあります。


金津美里です。


第三の進路を掲げ、常に「選ぶ側」に立ってきた彼女が、この洞窟で、ある言葉に足を止めます。


彼女がどんな顔で、何を思ったのか。

台詞の間や視線の動きに、そっと注目していただけたら嬉しいです。


それでは、第七章第4話「冥嶽十一尊」をお楽しみください。

 勝川市(かつかわし)の山中。

 金津家(かなづけ)が代々所有してきた洞窟は、地図にも記載されていない。

 長く分岐した坑道を抜けた先に、巨大な石扉があった。

 扉の向こうには、人間の目に触れることを許されなかった空間が広がっている。

 壁には風化した梵字が無数に刻まれ、その隙間を埋めるように、爪で引っ掻いたような傷が幾筋も走っていた。

 床には黒ずんだ染みが広く残っている。

 血なのか、それとも別の何かなのか、誰も確かめようとはしない。

 天井の岩肌から水滴が落ちる。

 ぽつ。

 ぽつ。

 ぽつ。

 規則的な水音だけが、この場所の時間を刻んでいた。

 洞窟の中央には、十個の巨大な棺が円を描くように並んでいる。

 人間を納めるにはあまりに大きい。

 棺ごとに、形の異なる鍵穴があしらわれている。

 それは死者を弔うための箱ではなく――

 何かを、閉じ込め続けるための器

 のように見えた。

 巨徳(きょとく)はいつもと変わらぬ穏やかな佇まいで棺の前に立っている。

 だが、右手に握った錫杖だけが、微かに震えていた。

 美里(みり)はその震えを、怯えの証とは読まなかった。

 数百年を待ち続けた者だけが持つ、抑えきれない震えだと直感していた。

 ◇

「――始めましょうか」

 美里が国影(くにかげ)の脇差の柄へ手を添える。

 暗赤色の鬼気が噴き上がり、洞窟の空気を焼くように染めていく。

 黒髪が舞い、少女の輪郭が装甲鱗へと覆われていく。

 それは怪物へ堕ちる変貌ではない。

 王が、長く空けていた玉座へ帰っていくような変身だった。

 ダークレッドのティラノサウルス。

 焔羅(えんら)。

 焔と、王権と、断罪を体現する鬼が、静かに立ち上がる。

 続いて、覇竜十傑(はりゅうじゅっけつ)が次々と変身していく。

 烈王丸(れつおうまる)を握る烈王(れつおう)。

 二対の鉄扇を広げる霧香(むこう)。

 巨大な牙蓮刀(がれんとう)を抜く牙蓮(がれん)。

 金剛魔盾(こんごうまじゅん)を構える魔盾牙(まじゅんが)。

 滄爪一文字(そうそういちもんじ)を鞘から滑らせる滄爪(そうそう)。

 大斧を担ぐ棘王(きょくおう)。

 咬覇偃月刀(こうはえんげつとう)を肩に乗せる咬覇(こうは)。

 二挺の手斧を鳴らす牛竜(ぎゅうりゅう)。

 道化師じみた装甲を纏う角羅(かくら)。

 そして最後に、氷冠を戴き凍珠弩(とうじゅど)を構える凍珠(とうじゅ)。

 十体の恐竜の鬼が、十個の棺を取り囲むように立つ。

 一枚の絵として完成された瞬間だった。

 巨徳だけは輪の外、少し離れた場所に控えている。

 ◇

 美里が懐から布袋を取り出し、開く。

 金津邸の地下室から見つかった、十本の鍵だった。

 骨のように白い鍵。

 牙のように歪んだ鍵。

 異様に細長い鍵。

 子供の指ほどしかない小さな鍵。

 素材すら判別できない、黒く沈んだ鍵。

 美里が一本ずつ、覇竜十傑へ手渡していく。

 十人はそれぞれ、自分の棺の前へ立った。

 牙蓮が刀を肩に乗せたまま、楽しげに口を開く。

「ねえ、これ開けたら、何が出てくるわけ?」

 巨徳はすぐには答えない。

 霧香は鍵を見つめたまま、視線だけ棺へ移す。

 未来視の力を使っても、この先だけは霞がかかったように見えなかった。

 滄爪が鍵穴と鍵の形を見比べ、静かに言う。

「十人揃わなければ開けられない仕組みですか。随分と用心深い」

 巨徳が、初めて口を開いた。

「四百年以上、待っておりましたからな」

 凍珠が、その言葉に僅かに反応する。

 四百年。

 人間の寿命から完全に外れた時間の長さだった。

 だが、美里だけは動じない。

 冷たく、平然とした声で命じる。

「――開けなさい」

 十人が同時に鍵を差し込む。

 ガチン。

 ガチン。

 ガチン。

 十個の金属音が洞窟に反響する。

 地面が揺れ、壁の梵字が暗赤色に発光し始めた。

 棺の内側から、鈍い音が響く。

 ゴン。

 ゴン。

 ゴン。

 何かが内側から蓋を叩いている。

 角羅が思わず一歩下がる。

 牛竜は喉の奥で笑う。

 咬覇は偃月刀を握り直す。

 魔盾牙は無言のまま、美里を守れる位置へ移動した。

 烈王だけは、微動だにしない。

 ◇

 十個の棺の蓋が、同時にずれ始める。

 石と金属が擦れる重い音。

 数百年の間、内側に閉じ込められていた空気が、洞窟へ流れ出していく。

 腐臭はなかった。

 乾いた土の匂い。

 古い香の残り香。

 墓地よりもさらに古い、時間そのものの匂いだった。

 棺の中に横たわっていたのは、巨大なミイラだった。

 僧侶らしい法衣を纏っているが、人間ではない。

 腕は異常に太く、脚は巨大で、皮膚には鱗の名残がある。

 首が異様に長い者もいれば、細身で女性らしい輪郭を保つ者もいた。

 十人の覇竜十傑さえ、その光景に言葉を失う。

 牙蓮の口元から、笑みが一瞬だけ消えた。

「……これ、生きてんの?」

 巨徳が答える。

「いいえ」

 一拍の沈黙。

「――ゆえに、これから蘇るのです」

 ◇

 焔羅から、暗赤色の鬼気が放たれる。

 覇竜十傑の十人からも、それぞれ異なる色の鬼気が同時に噴き上がる。

 黒緑。

 紫。

 深紅。

 黄。

 水色。

 青。

 黒褐色。

 橙。

 桃。

 白。

 十色の鬼気が焔羅の暗赤色へと吸い込まれ、一つの巨大な奔流となって棺へ流れ込んでいく。

 最初に聞こえたのは音だった。

 ミシ。

 ミシミシ。

 ゴキン。

 指が動く。

 背骨が伸びる。

 胸郭が音を立てて膨らんでいく。

 黒煙のような肉が、骨を包むように覆っていく。

 眼窩に、暗赤色の光が灯る。

 それは人間としての再生ではなかった。

 鬼として、再構築されていく肉体だった。

 時間が巻き戻っているように見えて、実際には過去よりもさらに異質な存在へと作り替えられている。

 血が飛び散ることも、絶叫が響くこともない。

 ただ、静かで宗教的な恐怖だけが洞窟を満たしていた。

 ◇

 中央の棺から、巨大な腕が縁を掴む。

 バキッ。

 石が砕ける音。

 巨体がゆっくりと起き上がる。

 人型ではあるが、明らかに人の域を超えている。

 その背後に、ブラキオサウルスを思わせる、長い首を持つ鬼影が立ち上がった。

 手には禍々しい錫杖。

 冥嶽十一尊、唯一の大僧正。

 梵嶽(ぼんがく)。

 死者の怨念や霊魂そのものへ干渉する力を持つとされる存在だった。

 だが梵嶽を前にして息を呑ませるのは、力の大きさではなかった。

 四百年以上の眠りから覚めたばかりだというのに、その所作には一切の乱れがなかった。

 怒りもない。

 混乱もない。

 ただ、乱れの気配一つなかった。

 巨徳の口元が、初めて歪んだ。声が掠れる。

「……梵嶽様」

 梵嶽がゆっくりと目を開いた。

 その瞬間だけは、覇竜十傑の誰一人として口を開かなかった。

 ◇

 続いて、九人の僧正・尼僧正が次々と目覚めていく。

 マメンチサウルスの鬼僧正、長禅(ちょうぜん)。

 長い影が音もなく立ち上がる。

 言葉を発することはなく、目覚めた直後から鋭い視線で周囲を観察し続けている。

 四百年の空白を、まるで感じさせない眼差しだった。

 ドレッドノータスの鬼僧正、岳尊(がくそん)。

 岩塊のような巨体が、足を床へ下ろすだけで洞窟全体が震える。

 アルゼンチノサウルスの鬼僧正、豪禅(ごうぜん)。

 崩岳鉄杖を担いだ圧倒的な巨体が起き上がると、牛竜と咬覇が理由もなく反射的に身構えた。

 パラリティタンの鬼僧正、沙海(しゃかい)。

 砂と泥の鬼気が広がった瞬間、乾いていたはずの洞窟の床が、一瞬だけ泥のように波打つ。

 ここまでが、巨徳と同じ男性の僧正だった。

 アパトサウルスの鬼尼僧正、慈嶺(じれい)。

 穏やかな笑みを浮かべた姿は、聖母のようにも見える。

 だがその笑みの奥に、人間の生命力を仲間の治療資源として扱いかねない危うさが滲んでいた。

 バロサウルスの鬼尼僧正、蓮嶺(れんれい)。

 細身の身体に、静かな微笑。

 風のない洞窟で、法衣の裾だけが揺れる。

 美しさの中に、処刑人の刃のような気配が隠れていた。

 カマラサウルスの鬼尼僧正、岩蓮(がんれん)。

 着地した瞬間、周囲に岩盤を思わせる圧力が広がる。

 防御と耐久に特化した、異様な安定感を放っていた。

 ディクラエオサウルスの鬼尼僧正、寂棘(じゃっきょく)。

 登場の際、ほとんど音を立てなかった。

 気づけば、いつの間にか棺の横に立っていた。

 角羅が自分の鈴が鳴っているはずなのに、音がまったく聞こえないことに気づく。

「……あれ?」

 寂棘の力が、無意識のうちに周囲の音を奪っていた。

 最後に、プウィアンゴサウルスの鬼尼僧正、長慧(ちょうえ)が起き上がる。

 他の十人より小柄な身体。

 慧輪錫杖を手にした彼女は、目覚めるなり、まっすぐに美里を見つめた。

 その視線は、今の美里ではなく――

 もっと遠い時代の、別の誰か

 を見ているように思えた。

 ◇

 梵嶽。

 巨徳。

 長禅。

 岳尊。

 豪禅。

 沙海。

 慈嶺。

 蓮嶺。

 岩蓮。

 寂棘。

 長慧。

 十一人。

 全員が竜脚類を基礎とした恐竜の鬼だった。

 大僧正一名。

 僧正五名。

 尼僧正五名。

 古の宗派、その名は――

 無選涅槃宗(むせんねはんしゅう)、冥嶽十一尊。

 巨徳が一歩前へ出る。

 錫杖を、そっと床へ置く。

 深く、頭を下げる。

 肩が微かに震えていた。

「……長うございました」

 さらに、絞り出すように続ける。

「実に……長うございました」

 誰も抱き合わなかった。

 泣き叫ぶ者もいなかった。

 だが、十一人が交わす視線だけで、数百年という時間の重みが伝わってくる。

 巨徳が顔を上げる。

 普段の彼からは想像もできない、はっきりとした笑みが浮かんでいた。

「ようやく……十一人、再び揃いました」

 ◇

 美里が一歩前へ出る。

 覇竜十傑の面々が、美里の後ろへ並ぼうとする。

 だが、美里は片手でそれを制した。

 彼らを跪かせるつもりはなかった。

「あなたたちを、私の部下にするつもりはないわ」

 巨徳の眉が、僅かに動く。

 美里は続ける。

「私はあなたたちを起こした。あなたたちには、あなたたちの目的がある。私にも、私の目的がある。――目的が同じなら、手を組めばいい」

 臣下としてではなく、対等な協力者として扱う。

 それは冥嶽十一尊への敬意であると同時に、美里自身が、彼らを完全には支配しきれない存在だと直感していたからでもあった。

 梵嶽は、すぐには答えない。

 静かに、美里を見つめている。

 顔ではない。

 装甲を。

 焔を。

 ティラノサウルスの姿そのものを。

 そして、焔羅という存在そのものを、見ていた。

 ◇

 梵嶽の口元に、微かな笑みが浮かぶ。

「……やはり」

 美里の眉が、ぴくりと動いた。

「この世に、再び現れましたか」

 洞窟の空気が変わる。

 牙蓮たちも、口を噤む。

 滄爪の笑みが消える。

 霧香が、目を細める。

 巨徳だけは、沈黙したままだった。

 美里が一歩、梵嶽へ近づく。

「……何の話?」

 梵嶽は答えない。

「あなた、私を知っているの? 私は金津美里よ。焔羅になったのだって――」

 美里は、いつものように言い切ろうとした。

「私が選んだ」

 と。

 だが、その言葉が喉の途中で止まった。

 なぜ、金津家の洞窟にこれほどまでの規模の存在が眠っていたのか。

 なぜ、自分だけが焔羅と契約できたのか。

 なぜ、その鬼の名は「焔羅」という、まるで最初から決まっていたかのような名だったのか。

 なぜ、初対面のはずの梵嶽が、自分を知っているかのように振る舞うのか。

 美里はこれまで、ずっと「選ぶ側」だった。

 社会から選ばれなかった者へ、新しい道を差し出す側。

 選択肢を提示する側。

 選ばせる側。

 だが、もし。

 自分自身の方が、遥か昔から何かに選ばれていたのだとしたら。

 その可能性が、美里の内側で、初めて明確な形を持って浮かび上がった。

 梵嶽が、冥嶽錫杖を軽く鳴らす。

 カン。

「いずれ――、ご自身でお知りになります」

 美里が、努めて平静な声を作る。

「もったいぶるのは嫌いよ」

「存じております」

「……初対面でしょう?」

 梵嶽は、それにも答えなかった。

 滄爪が興味深そうに目を細める。

 霧香がタロットへ視線を落とすが、この問いについてだけは何も映らない。

 烈王は、ただ美里を見ている。

 凍珠は、無言のまま。

 巨徳だけが、何かを知っているように口を閉ざしていた。

 美里は、自分の腕を覆う装甲鱗へ視線を落とす。

 自分で選んだはずの力。

 自分で選んだはずの名。

 自分が作り上げたはずの、「第三の進路」。

 そこに、一つの疑問が生まれる。

 もし――「焔羅」という名の方が、先に自分を選んでいたのだとしたら。

 答えは、どこにもなかった。

 ◇

 洞窟の奥で、一本目の錫杖が鳴る。

 カン。

 続いて、もう一本。

 カン。

 カン。

 十一人が、順に錫杖を鳴らしていく。

 十一人分の音が、長い眠りから帰還した者たちが現代という時代へ自らの存在を告げる、鐘の音のように響いた。

 巨徳が、静かに口を開く。

「無選涅槃宗――」

 梵嶽が、それを継ぐ。

「冥嶽十一尊」

 十一体の、長い首を持つ巨大な鬼影が、洞窟の奥に立ち上がる。

 その影が、焔羅の巨大なティラノサウルスの影と、深く重なり合った。

 四百年以上前にも、確かに存在していた構図。

 それが今、現代という時間の中に再び形作られていた。

 だが、美里だけは知らない。

 これは、自分が古代の存在を蘇らせた瞬間なのか。

 それとも――

 四百年前から続いていた何かの中へ、自分自身が呼び戻された瞬間なのか。

 答えは、まだどこにも示されていない。

 洞窟に響く水音だけが、変わらず時を刻み続けていた。

 ぽつ。

 ぽつ。

 ぽつ。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


第4話「冥嶽十一尊」、いかがでしたでしょうか。


ついに十一人の鬼僧正が復活しました。

ここで、今回登場した冥嶽十一尊を整理しておきます。


【大僧正】

・梵嶽(ブラキオサウルス)


【僧正】

・巨徳(第五章より登場)

・長禅(マメンチサウルス)

・岳尊(ドレッドノータス)

・豪禅(アルゼンチノサウルス)

・沙海(パラリティタン)


【尼僧正】

・慈嶺(アパトサウルス)

・蓮嶺(バロサウルス)

・岩蓮(カマラサウルス)

・寂棘(ディクラエオサウルス)

・長慧(プウィアンゴサウルス)


大僧正一名、僧正五名、尼僧正五名。

全員が、竜脚類(首の長い恐竜)をもとにした鬼です。


覇竜十傑が肉食恐竜を中心とした「牙の軍団」だとすれば、

冥嶽十一尊は、山のような巨体と長い首を持つ「祈りの軍団」です。


同じ恐竜の鬼でも、纏う空気がまるで違うことが伝われば嬉しいです。


登場シーンでは、一人ひとりの「起き上がり方」に個性を持たせました。


床へ足を下ろすだけで洞窟を揺らす岳尊。

気づけば棺の横に立っていた寂棘。

目覚めるなり、まっすぐ美里を見つめた長慧。


次に会う時、この違いがどう効いてくるのか。

楽しみにしていてください。


そして、この話でいちばん書きたかったのは、洞窟の空気が変わった瞬間です。


「この世に、再び現れましたか」


梵嶽のこの一言に、美里は言葉を止めました。


彼女は、自分の意志で焔羅になり、自分の意志で第三の進路を作ったはずでした。

人に道を差し出す側であり、選ばせる側であり続けてきました。


けれど、もし。

自分のほうが、とうの昔に何かに選ばれていたのだとしたら。


その疑いが、彼女の内側で初めて形を持ちました。


今回の問いの答えは、まだ出ていません。

梵嶽が何を知っているのか、巨徳が何を隠しているのか。

そのあたりは、この先の物語でじっくり描いていきます。


第七章のタイトルは「選ばれし名、選びゆく道」です。


名前や力に選ばれていたとしても、最後に自分の道を選ぶのは誰なのか。

その問いが、敵側の頂点である美里自身にも向かい始めました。


ここから先は、慎悟たちだけでなく、美里の物語としても見ていただけたらと思います。


さて、復活した冥嶽十一尊は、これから何をするのでしょうか。


次回、第5話は「消された罪」です。


冥嶽十一尊の力が、覇竜十傑たちへ向けられます。

彼らが抱えていたものは、確かに軽くなります。

「救われた」と、感じるほどに。


けれど、本当にそれは救いなのでしょうか。

消えたものは、何だったのでしょうか。


次回もぜひ読みに来てください。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


もし面白いと感じていただけましたら、

ブックマークや評価、感想をいただけると、とても励みになります。


それでは、また次回お会いしましょう。

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