第1章〜初めての戦闘訓練〜#8
いつの間にか俺と君島先生は広い荒野にいた。
「校長先生から聞いてるよ、凄いね、まさかドールズを2体使えるなんて」
「マスター!一緒に頑張りましょうね!」「先生でも手加減しないからねぇ!ね!ますたー」、と両肩から2人の声が聞こえる。
「え?!」
2人は人形のサイズになって翔の両肩付近に浮遊していた。
「2人ともなんで小さくなってるの?!」
驚きを隠せないでいる翔は交互に2人を見る、その疑問を君島先生が答える。
「この仮想空間にいる間はドールズは『異例』を除いて人形と同じサイズになるの、でも力や能力は問題なく使えるから安心してね」
「なるほど」と納得する翔
「それじゃあ始めようか、言葉で教えるよりも身体で覚えた方が君にとっても良さそうだし」
ストレッチを始める先生、ストレッチが終わると、肩に浮遊するノワールの周りから風の刃が現れる。
「それじゃあ始めようか!」
「マスター!来ます!」
瞬間、風の刃が翔の元に放たれる。
「セツナ!氷障」
「了解マスター」とセツナが言うと両手を突き出して氷の壁を形成し風の刃を防ぐ。
「へぇ、初めてとは思えないほど良い命令ね、それじゃあこれはどうかしら?」
先程の風の刃を複数形成し、四方から放つ。
「氷の槍集!」
セツナが言うと、翔の周りに風の刃よりも多くの氷の槍を形成し風の刃に当て相殺、残った槍が先生に向かって速度を上げる、
しかし先生の身体が浮いて上空へ飛び、槍を回避する
「力の使い方も申し分無し、今年の生徒は豊作ね」
「先生!飛ぶのはずるいですよ!」
上空に浮遊し続ける先生を見上げながら先生に聞こえるように答える、先生は「それもそうね」と言うと降りてくる。
「まさか飛ぶなんて思いもしませんでした」
「まぁね、ノワールは風を操る能力を持ったドールズ、能力を最大まで引き出せばこのくらい造作もないことよ」
「君島・・・生徒に自慢することじゃないと思う」
隣にいるノワールは呆れた顔を見せる、先生は「別にいいじゃない」と顔をふくらましながら答える。
「マスター、私にいい考えがあります」
先生に聞こえないように翔の耳元で話すセツナ、「こしょこしょ」と作戦内容を翔に提案する、翔はその案を聞いて顔がにやける。
「よし、それでいこう」
「なに?ますたーもセツナちゃんも何を話してるの?」
セツナの案をヒカリにも話すと「おっけーますたー!」と元気よく返事をする
「一体なんの話をしてるんだい?」
先生はさっきよりも多く風の刃を創り出し、かけるに向かって放ちながら風の力で体を浮かせて接近する。
「ヒカリ!今だ!」
「おっけー!」
翔の合図でヒカリは空中に光の玉を創り出し接近する先生の目の前に放つ、先生は光の玉を風の刃で真っ二つにした、その瞬間眩い閃光が先生に襲いかかる。
「くっ!目眩し!」
その隙を見逃さない翔は風の刃を避けながら先生の元へ接近する。
「とった!」と翔は先生の肩に手を伸ばす
「っ!!風の加護!」と先生が言うと肩に触れそうだった手が風が邪魔をして届かない。
「ポンッ」と先生は俺の肩に触れ、「私の勝ちね」と言われ、俺はその場から俯きで倒れ込んだ。
「まじかー、とったと思ったのに〜・・・」
うつ伏せになる翔を見て「マスター!お召し物汚れてしまいます!」「いやぁ、やっぱり実力の差だったねぇ」とセツナとヒカリはうつ伏せになってる翔に話しかける。
「・・・まさか・・・君島が生徒相手に使うなんてね、『加護』」
「流石に使わなかったら私が負けてたし・・・いやまぁ別に?先生としての威厳を保ちたいとかそんなことは決して思ってもいないからね!」とあたふたと焦りながら答える。
「・・・ねぇ君島・・・『あの子ならいいんじゃないの?』」
先ほどとは打って変わって真剣な顔になる。
「それは今決める事じゃないわ、その時は彼の意思を尊重したいし、今私たちが言っても冗談としか受け止めて貰えないと思うわ」
真面目な顔を見せる先生、「それもそうね」と言葉を返すノワール。
「・・・先生?どうしました?」
「あぁ、ごめんなさい、ちょっと考え事よ、それじゃあ戻りましょうか、グラウンドへ」
「はい、『閉門』」
そう言うと翔たちは元の場所へ戻る──
──グラウンドへ戻ると人形と同じサイズになっていたセツナとヒカリは元の大きさに戻っていた、翔と先生が最後だったのか、周りを見渡すと既に生徒たちはペアを解き、先生の帰りを待っていた。
「皆戦闘訓練どうだったかな?初めてだったから分からないこととかいっぱいある筈だから、今日はこれで終わりだけど聞きたいことがあればいつでも聞いてね」
「キーンコーン」と学校のチャイムが鳴り響く、ちょうど授業が終わった、この戦闘訓練の授業が最後だったので俺たち生徒はその場で解散し、自分の家へと帰る準備をした。
「ますたー!今日はどこか寄り道しないの?」
ヒカリはキラキラと輝かせた目をしながら翔を見つめる。
「ヒカリ、マスターは初めての訓練で疲れてるはずよ?今度にしなさい」
セツナはマスターの身を案じてヒカリに伝える、
「うん、」と悲しい顔を見せるヒカリ。
「俺なら大丈夫だよ、ヒカリはどこか行きたいところとか寄りたいところある?」
ヒカリはその言葉を聞いた瞬間目がキラキラと輝かせる。
「えっとね!昨日テレビで『そふとくりーむ』っていうの食べてみたい!」
あー、そういえば必死にテレビにかじりついてたな。
「それじゃあ行こうか、ソフトクリーム屋へ」
少し歩くとアイス屋さんに到着した俺達、メニューを見るとたくさんの種類のアイスが載っていた。
「えーと!私このいちごミルクのソフトクリーム!」
「それじゃあ俺は抹茶のソフトクリームにしようかな、セツナはどうする?」
「じ、じゃあ・・・この桃味のソフトクリームを・・・」
3人はそれぞれ別の味のソフトクリームを頼み、近くにあったベンチに座って食べる。
「甘くて冷たくておいしー!」
「ほんと!ひんやりとしてて口の中が溶けるような甘さ、暑い日は美味しいんでしょうね」
お上品に食べるセツナとバクバクとソフトクリームを食べるヒカリは目を光らせながら食べる、それを見ながら抹茶味のソフトクリームを食べる翔。
「抹茶も大人の味って感じで美味しいな」
3人はソフトクリームを食べ終え、家へと帰る、その日は疲れが溜まっていたのか3人はすぐに眠りについた。