2 薄暗い会議室にて
「やはり、坂本の案を使いますかな。」
暗く、シンと静まり返った部屋に初老の男性の声が響く。
「どうしますかな、議長?」
そう初老の男性が声を掛けたのは、彼の向かい側の椅子に腰掛ける、だいぶ年のいった男性だった。彼の顎には、白い髭が波うっており、体格も老いているものの大きく、逞しいため風格やら威厳を感じさせられる男性だった。
今、この薄暗い部屋には大きな丸いテーブルが置かれており、そのテーブルの周りを囲うように椅子が並べられている。椅子には、若者から年配の者までそれぞれの出で立ちで皆腰をおろしている。だが、部屋は薄暗くテーブルに置かれた数本のロウソクの灯りしかないので、彼らの表情は読み取れない。
「…そうするしか、なかろう。」
白髭を生やした、議長と呼ばれた男が重々しく口を開いた。
「ですが、議長っ…!」
議長と呼ばれた男の隣に腰掛けていた若者がバッと立ち上がり、声を荒上げる。それを男はすっと手をあげて静かに制した。
「…誰か坂本を呼べ。」
「議長っ!」となおも言い募ろうとする若者を今度は鋭い視線だけで制し、老いた男は暗闇に声を掛ける。
「そこに、おるのだろう?坂本」
すると、何も見えなかった暗闇から何処からともなく男性が姿を現した。背が高く、長髪でなんとなく年齢が分かりにくい男性だった。
「お呼びでしょうか、議長?」
男の割に声が高く、何だか人を喰ったような物言いだった。
「そなたの案、使わして貰うぞ」
その言葉に、坂本と呼ばれた男はどこか満足げな表情を浮かべた。まるで、その言葉を予期していたかのような表情だった。
「では、私が指揮をしてもよろしいので?」
「…構わん。予算などの書類はあとで送らせよう。それでよいな?」
その言葉に、坂本と呼ばれた男は芝居がかった動作で一礼する。
「はい。…まことにありがとうございます」
そのまま去って行こうとする坂本に議長は低く、念を押すような声音で言った。
「期待しているぞ」
坂本は、進む足をとめず背中越しに囁く。
「…ええ。必ずやご期待に応えてみせましょう」
そのとき坂本が見せた笑みは、その部屋にいる者達には見えなかった。




