7.王族としての初仕事
—なんで、こうなったんだ?—
それは、時を遡ること数分前。
王選投票について知らされたルークは、ギルバートやミリィたちと話し合っていた。
話し合いを行っていると、とある人物が訪ねてきた。
その人物とは、王の側仕えの一人。
彼が訪ねてきたということは、王からの呼び出しがあったということ。
実際、その通りで今に至る。
数分前に出た筈の玉座の間に再び来ることになるとは想像すらしてないかった。
ルーク自身、一日に二度も玉座の間に来たのはこれが初である。
色々と呼ばれた理由について予想をするが思い当たる節がルークにはない。
緊張感を持って待つルークに、父であり王でもあるダブラムは命ずる。
「ルーク、お前にはファラティア王国に赴いてもらう」
「ファラティア王国ですか?」
「ああ、お互いの国の文化交流を目的として使者を送りあわないかと向こうから提案をされ、これを了承した。そこで、使者の任をお前に任せることにした」
それは王からの唐突な命であった。
当然、ルークには引き受ける以外の選択肢はない。
「分かりました。その任、謹んでお受けいたします。アルバス王国の王族として恥じぬように努めてまいります」
そう言って、ルークは王からの任を引き受けた。
二人のやり取りはそこで終わり、ルークは玉座の間を退出した。
自室へと戻ったルークは、ミリィとギルバートの二人に王からの任について伝えた。
「なるほど、そのような話をされていたのですか。それで、いつ頃向かわれるのでしょうか?」
「出来れば、明日にでも発てるようにしたいかな」
「かしこまりました。早急に準備をいたします」
ルークからの話を聞いて、二人は準備を始めた。
その間、ルークはファラティア王国に関する書物に目を通していた。
アルバス王国の北側に位置するのがファラティア王国。
決して大国と呼べるような国ではないが、それなりに栄えている国だと記述されている。
アルバス王国とは数十年前まで戦争をしていたが、今では友好関係を築いている。
今回のような交流も初めてではなく、過去にも行われていた。
「その、ルーク様、護衛の方はいかがされますか?」
「流石にミリィとギルバートの二人だけというわけにもいかないからね」
「それでしたら、私の方で手配をしておきましょう」
そう提案をしてきたのはギルバート。
それに対して、ルークは迷うことなくギルバートに頼んだ。
そんなこんなで、ルークたちは今日一日は準備に時間を費やした。
そして迎えた翌日。
ルークは初めての国外に、不安よりも高揚感で満たされていた。
「ルーク様、いつでも発てる状態でございます」
既に、王宮を出た側で馬車が待機していた。
馬車にはギルバートが事前に雇った御者と、その周りには護衛と思われる者たちが複数名いる。
見るからに騎士と言った感じではなく、冒険者のような恰好や佇まい。
そんな彼らにルークは近寄って声をかけた。
「皆さん、長期間の護衛よろしくお願いします」
「お前さんが第十王子様か。安心しな、お前さんの側仕えと事前に報酬について約束しているから、相応の働きはするさ」
軽めの挨拶を済ませると、ルークは馬車に乗車した。
同乗者にはミリィとギルバートが。
冒険者の人たちは、馬車を囲うように左右と前方に位置取った。
ギルバートが御者に合図を送ると馬車が進みだした。
速くも遅くもないスピードで街の中を進んでいく。
ルークは馬車の窓から街の景色を眺めていた。
気が付いた頃には、馬車は都市の門の前にまで来ていた。
門番のチェックを受けて、馬車は門を通過した。
その時初めてルークは王都の外を出た。
「どうですかルーク様、王都の外の景色は」
「壮観だね」
そう口にするルークの目には、広大な野原が映っていた。
「ルーク様この後についてですが、このまま進んでいき適時近くの宿で休息をとりつつ、一週間ほどで到着する見込みです。この予定でいかがでしょうか?」
「そうだね、それで問題ないよ」
「かしこまりました」
「それよりさ、あの冒険者たちは信用していいんだよね?」
「その点については問題ごさいません」
その一言だけで、ルークは納得をした。
例え、あの冒険者たちが胡散臭くても、二人が問題ないと言えば、それだけで信用することが出来た。
それほどまでに、ルークの二人への信頼は絶大なものであった。
特に大きなトラブルはなく一行は進んでいった。
辺りが暗くなると、予定していた宿の前に馬車が停車した。
「申し訳ありません、ルーク様。この辺りで良さそうな宿はここしかなかったのですが…」
「僕は大丈夫だよ。それより、彼らの分の部屋もしっかり用意してやってくれないか」
「承知いたしました」
馬車から降りたルークたちは、目の前の宿屋に入った。
用意された部屋に向かうと、明日に備えて眠りについた。
翌朝、ルークたち一行は陽が昇り始めたのと同じくらいの時間に宿を発った。
その後、予定していた時間通り馬車は進んでいき、国境を越えてファラティア王国の王都にたどり着いた。
馬車は王都の中心地に佇む王城の前で停車した。
「ここがファラティア王国の王城」
窓から見える城の存在感は圧倒的なもの。規模だけで言えば、アルバス王国の王宮の方が格段に大きいが、アルバス王国の王宮とはまた違った存在感を放っている。
馬車を降りたルークたちは王城へ向かおうとしたが、すぐにその足は止まった。
ルークたちの目の前で、一人の少女と数名の護衛騎士のような者たちが待ち構えていた。
「お待ちしておりました、アルバス王国の使者様。ようこそファラティア王国へ」
そう言って、少女は軽く一礼をするとルークの方を見て小さく微笑んだ。




