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第7話:女帝誕生と大海賊団の完成

果てしなく広がる水平線を、無数の黒い帆が埋め尽くしていた。


波を割って進む巨大な旗艦、黒翼号。その広大な甲板には、海戦の猛者として名を馳せる数十人の船長たちが、一糸乱れぬ隊列を組んで片膝をついていた。


潮風だけが吹き抜ける静寂の中、コツ、コツと、ヒールの音が響く。


甲板の最上段に姿を現したセレスティアを見上げ、屈強な男たちが一斉に頭を垂れた。


「各艦の月次報告書、全て目を通しました」


セレスティアの凛とした声が、大海原をバックに響き渡る。その手には分厚い帳簿が抱えられていた。


「第三艦隊、弾薬の消費率に対して略奪品の利益率が低すぎます。砲弾の無駄撃ちですか? 却下します。次の航海では装薬量の計算を徹底しなさい。第五艦隊、船員の有給休暇消化率が基準に達していません。過労は反乱の種です。速やかに人員をローテーションしなさい」


「ははっ、姉御。ご指示の通りに」


船長たちが畏れ多くも嬉しそうに返事をする。かつては己の欲望のままに海を荒らしていた無法者たちが、今や彼女の指揮下で一つの巨大な組織として機能していた。


「無法者にも秩序と規律は必要です。我々はただの海賊ではありません。海という巨大な市場を統べる、最強の株式会社ですわ」


女帝たる彼女の宣言に、甲板から地鳴りのような歓声が湧き上がった。


「完璧な指示、そして統率された俺たちの艦隊。今日も最高に痺れるぜ、俺の女神」


歓声の中、ずっと彼女の斜め後ろに控えていたヴァルクが進み出た。彼はマントを翻してセレスティアの前に跪くと、太陽の光を反射して輝く小さな箱を差し出した。


「そろそろ、俺の隣で正式な妻になってくれないか。これは略奪品じゃない。正規のルートで取り寄せた、最高級の特注品だ」


箱の中で輝くのは、深海のブルーを宿した大粒のサファイアの指輪だった。周囲の船長たちが、固唾を飲んで二人の動向を見守る。


セレスティアは帳簿をパタンと閉じ、ヴァルクと指輪を冷ややかに見下ろした。


「勤務時間中の求婚ですか? 却下します。今は来月の遠征計画の立案で忙しいのです」


即座の拒絶に船長たちが大きく肩を落とすが、ヴァルクだけは満面の笑みで立ち上がった。


「そのブレない仕事への執着心、ますます惚れ直したぜ」


「職務に戻りなさい」


セレスティアはヴァルクに背を向け、颯爽と船長室へと歩き出す。


しかし、誰も見ていないその背中の向こう側で。


彼女の繊細な指先は、手品のような手早さでヴァルクの箱からサファイアの指輪を抜き取り、海賊コートの深いポケットへとそっと滑り込ませていた。


冷徹な令嬢の頬が、潮風とは違う熱でほんのりと赤く染まっていることに、大海賊団の男たちは誰一人として気づいていなかった。

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株式会社にする必要あるのか? と言うか株式市場あるのか?
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