第6話:面接試験による組織拡大
黒翼号の甲板に、むさ苦しい男たちの長蛇の列ができている。
連戦連勝にして完全なるホワイト労働環境。その噂を聞きつけた近海の海賊たちが、傘下に入りたいとこぞって押し寄せてきたのだ。
「次の方、履歴書を提出しなさい」
甲板の中央に設置された長机で、セレスティアが羽ペンを走らせながら冷徹に告げる。
列の先頭から進み出た大男が、羊皮紙を乱暴に机に叩きつけた。
「俺の特技は人殺しと略奪だ。字なんて書けねえから白紙だぜ。とにかく暴れさせろ」
セレスティアは白紙の羊皮紙を指先で弾き、冷ややかな視線で大男を見上げた。
「文字が書けないのは教育環境の問題ですから不問とします。しかし、面接に臨むにあたって自己の強みを口頭で論理的に説明する努力すら放棄している。やる気がないのですか? 却下します。不採用です」
「なっ、俺の腕っぷしを見ろよ」
「我が海賊団が求めているのは、命令を遵守し、組織の歯車として正確に機能する人材です。単なる暴力装置なら大砲で事足りますわ。次の方」
大男が凄むより早く、ヴァルクが大剣の柄に手をかけて一歩前に出る。大男は舌打ちをして逃げるように船を降りていった。
「次は俺だ。昔、商船で会計係をやっていた。算術なら誰にも負けねえ」
小柄で神経質そうな男が、びっしりと数字の書かれた履歴書を差し出す。
セレスティアは履歴書を一瞥し、即座に暗算問題を三つ投げかけた。男が淀みなく答えると、彼女は初めて小さく頷いた。
「見事な計算速度です。あなたは第三艦隊の物資補給および在庫管理担当として採用します。初任給は銀貨二十枚、成果に応じた特別報酬ありです」
「そ、そんなにもらえるのか。ありがてえ」
男が何度も頭を下げて列を離れると、セレスティアは再び羽ペンをインク瓶に浸した。
情報収集、突撃部隊、後方支援。それぞれの適性を見極め、彼女はまるで近代軍隊を編成するように海賊たちを的確な部署へと割り振っていく。
次から次へと適材適所に人材を配置していく鮮やかな手腕を、ヴァルクは机の横に腰掛けてニコニコと眺めていた。
「ただの荒くれ者どもが、お前の手にかかるとみるみる立派な組織になっていく。流石だな、最高に痺れるぜ!」
興奮した様子で合格者の肩を叩いて回るヴァルクを横目に、セレスティアは表情を変えずに次の履歴書に手を伸ばした。
「頭領であるあなたが遊んでいてどうします。書類選考の終わった者たちから、順次体力測定の試験会場へ誘導しなさい」
「おう、任せとけ。野郎ども、俺についてきな」
甲板に響き渡るヴァルクの号令と、それに続く新入りたちの力強い足音。セレスティアの采配により、黒翼号は単なる海賊船から、統率の取れた巨大な艦隊へと着実にその姿を変えつつあった。











