狼
カズ「ユウタ…しんだな…」
アール「あいつ…」
サクラ「ユウタが人狼じゃないならもうこれで人狼側の勝利ですね…」
サクラはトボトボと歩いて廊下に倒れているユウタを部屋から見た。
サクラに続き、カズとアールも哀れむように、うつ伏せに倒れるユウタをを見下ろす。
カズ「『狼』のリーダーだったユウタ…最後まではしっかり話し合い
してくれたのにな…」
アール「…そうだな…」
サクラ「部屋に…戻りましょう…」
アール「そうだな…サクラさん。俺に殺されるために部屋に戻りなよ」
サクラ「…アールさん?」
アール「もうわかってんだろ。最後の飯はサクラさんだ。美味しくいただくぜ?」
カズ「…お前が…やっぱり!」
サクラ「ユウタは…人狼じゃ…なかったの?」
アール「ははっ!そうだ!俺が人狼だ。
もう一人の人狼が賢かったから死なずに済んだぜ」
カズ「もう一人の人狼って…」
アール「レオナに決まってんだろ。
俺のことが好きとか最期いってたけどちょっと危なかったな。
マサを好き、ってしっかりいってくれよ」
サクラ「あんた…レオナさんがどんな気持ちでー」
アール「んなもん知らねぇよ!夜に村人を殺すときだってベタベタくっつきやがって。
証拠残されたらたまったもんじゃない」
カズ「くっそ!人を殺しながら影で笑っていたんだな!」
アール「おいおい、俺だって好きでこんなことしてねえよ。
役職がたまたま悪かっただけだ。
逆の立場ならお前もそうするだろ?」
カズ「いや、俺だったら一日目にcoして被害を最小限に抑える。それが一番適切な判断だ!なのに、お前は!」
アール「いいや。そんなの偽善でしかない。
結局自分が生き残れば他はどうでもいいのさ」
サクラ「ひどいよぉ…皆殺して。ユウタ…ユウたぁ…」
アール「ユウタを皆で殺そうっていってきたのはカズだ。恨むならカズを恨めよな」
カズ「くそっ…お前が人狼ってわかっていれば!」
アール「ネットでも結構俺、人狼陣営で勝ってたから意外とこんな状況を楽しんでたよ」
カズ「くそ野郎…」
サクラ「カズさん…もう諦めるしか…ないんですかね…」
アール「はは!そうだ!諦めるしかない!さぁ、はやくさっさと部屋に戻れ!」
カズとサクラはその場で倒れ、絶望の意を露にした。
人狼陣営の勝利。
最後の審判は人狼勝利に導いたのだ。
アール「オマエラ仲良くそこで打ち拉がれてろな」
そう二人に言い放って部屋の出口に歩いていった。
グサッ一
アール「…な…!?」
突然の衝撃に驚きを隠せないアールは、後退った。
自分の腹部には刃物で刺された跡があり、そこからの出血によって意識が朦朧としてきた。
状況把握のため、目の前で何が起きたのか確認した。
アール「お前…どうして…」
アールの確定した勝利に浮かれていた目は、かっと見開かれた。
「…油断したなアール」
そこにいたのは右手に、血が滴るナイフをもったユウタであった。




