第2話 新天地を目指して
第2話 新天地を目指して
前の襲撃から数日経った後、私達は新天地を求めて少し旅に出ることにした。この組織は戦闘者は少ないなれど人が多いので、全員で行動するのも困難になる。なのでまず私と迅、そして迅が雇った傭兵と共に新天地を探すための旅に出ることにした。
「マスター、長い間、お世話になりました。」
翠が深く頭を下げる。
「翠、気をつけていくんだよ。もし、何かあれば戻ってきて私を頼ってくれていいからね」
マスターが優しい声でそう話す。
幼い頃に両親を亡くしている私にとってはマスターが親代わりみたいなものだった。ここまで育ててきてくれたことは本当に感謝している。
「…マスター、ここまで私を本当の我が子のように育ててきてくれてありがとうございました。また、時間があったら帰ってきます。」
少し泣きそうになりながらしっかりとした声で話す。
「あぁ…、気をつけていってらっしゃい」
お別れの時だ。
マスターは店を出てからも視界から見えなくなるまで手を振ってくれていた。
アジトに戻ると迅達が待っていた。
「お別れの言葉は言ってきたか?」
「あぁ、しっかり伝えてきたよ。」
「そうか、じゃあ新天地に向けて出発するか!」
「「「おーーー!!」」」
ここから東に向けて進むらしい。どれだけかかるかはわからない。だが進むしかない。安全な地を見つけるために。
「なんもねえな…」
「少し疲れたぜ…」
歩き始めてから数時間。あたりには荒野が広がっているだけだ。本当に何もない。このまま進み続けるとなるといずれ食料がなくなってしまうだろう。みんなのためにも早く見つけなければ。
それから少し経った頃、どさっ、何かの音がした。後ろからだ。おそらく誰かが倒れた音だろうか。一斉に後ろを振り返る。砂埃で視界が塞がれてしまっていて何が起こっているのかわからない。
とりあえず翠はバトルスーツを装着した。
「なにごとだっ!?」
翠が声を張り上げる。誰からも返事がない。歩いている最中に離れてしまったのか、はたまた砂埃のせいで声が届かないのか。どちらにせよ何がいるかわからない以上、状況が悪いことには変わりがない。周りに仲間がいるはずなので銃を乱射することもできない。
前から影が迫ってきているのが見えた。
(誰だ?味方か? いやっ、敵だ!迫ってくるスピードが速すぎる!避けないとっ!)
翠が咄嗟に横に避ける。少し切られてしまった。
(チッ、)
「…これを避けるとは、貴方はなかなか強そうですわね。」
スピードが桁違いだ。それに切られたということは近接武器だろう。この砂埃の中、ライフルの翠にとっては相性は最悪と言っても過言ではない。
(少しまずいか…誰か戦えるやつは…?)
翠が辺りを見渡す。近くに誰かいる気配はなさそうだ。
「さっきのやつらよりかは骨がありそうね」
襲ってきた女がそう話す。
(さっきのやつら…?みんなやられたのか?)
「まあいいわ、貴方も同じように死になさいっ!」
女が距離を詰めてきた。距離を取るしかない。翠が背を向けて一気に走りだす。
「あら、逃げても意味ないわよ〜」
どうやら追ってきてないようだ。これなら逃げ切れるかもしれない。そんな希望が出てきたときだった
「うおおお!」
横から誰かの声が聞こえる。
(味方か?誰かわからない…)
翠が半信半疑でその場に立ち止まる。
ドガァァァァン!!
「がはっ…!」
横腹から斧が直撃した。激しい痛みに耐えられずに地面に倒れる。肋骨が折れたかもしれない。
(息が……できない……)
先程まで戦っていた女も合流した。ここから戦況をひっくり返すのは絶望的だろう。もう諦めるしかないかもしれない。
「私が先に戦ってたのに、いきなり出てきて奪わないでよ。」
「あぁ、すまんな。追いついたと思ったらお前じゃなかったんだ。」
「まあ、いいけど…」
二人が談笑している。
(なにか、ここから生き残れる方法だけでもないか?)
「もう立てないでしょうね、大したことなかったかしら」
「私の攻撃をもろにくらって立てる人間がいると思う?それはもう人間じゃないわよ」
「それもそうね。さて、回収するとしますか。」
「……くそ、な…めんな…」
翠がゆっくりと立ち上がる。呼吸はできるようになったがまだ荒いままだ。立っていることもギリギリなぐらいだ。ほぼ限界が来ている。
(この方法にかけてみるしかない!)
「誰かー!!!助けてくれ!!」
翠が持ってる力を振り絞って声を張り上げる。
(誰か、誰でもいい。戦えるのなら…)
何者かの影が間に割って入ってくる。迅だ。
(よし!とりあえずこれで戦える!)
「おい、翠。大丈夫か?」
「大丈夫そうに見える?遅いわよ」
「すまん、砂埃で見えていなかった。」
「…まあいいわ、目の前に集中して」
迅が来たとはいえ、相手はまだ二人、しかも万全の状態だ。対するこちらはほぼ限界。 状況が悪いことは承知の上だ。
(それでも、、やるしかない!)
翠もライフルを構える。
「迅、右の方のやつをまかせる。私は左の斧のやつをやる。」
「わかった、キツかったら我慢せず逃げろよ」
「了解…!」
「行くぞ!!!」
二人が一気に走り出す。戦いのゴングがなった。
「さっきの借りを返してやるよ!!」
翠が正確に弾を放つ。
「当たらないわ!」
敵は空に飛んで避ける。そして一気に距離を近づける。
翠が一気に後ろへ走る。
「その斧だって、当たらないと意味ないわ!」
相手も走り出し、お互いの距離がまた詰まった。このままだと埒が明かない。
相手が一気にこちらに向かって走ってくる。それに応じて翠も弾を放つ。
「シールド展開!」
相手がシールドを展開した。
(何!?それは…銃が…効かないっ!? まずいっ!距離が近すぎる!)
一気に斧が振り下ろされる。もろにくらってしまった。スーツが大きく損傷する。
(倒れるわけにはいかない!)
最後の力で踏ん張り、弾を放つ。シールドは解除されていたのでちゃんと効いた。翠が倒れる。
「くそが……タフ過ぎるだろ」
結構くらわせた。これなら倒せたはずだ。
「でも、まだまだだな。詰めが甘い。」
(なにっ……!まだ、倒せてないのか…流石にこれ以上は無理だ…迅、すまない…)
「まあでも、なかなか強かったな。組織に連れて行った方がいいかもしれないなー」
「あいつに聞いてみっか!」
翠が持ち上げられる。
(殺さないのか……ならまだ、なんとかなるかもしれない……)
生き残れる可能性が出てきた。
「……なーんて、言うと思った?」
女が悪に染まった笑みを見せる。
そして翠を地面に下ろす。
「何してもいいって言われてるかなー、どうしようか……まあ、まだ暴れ足りないからな」
「おい、立てよ。まだ暴れ足りないんだ。私を楽しませてくれ。」
翠を蹴り飛ばす。
「うっ……」
蹴られて飛ばされる。いたい。もう許してほしい。
(意識が飛びそうだ。もう……本当にここで終わりか。)
翠の意識がもう少しで途切れそうになった時、迅が飛び込んできた。
二人が一気に走り出した時まで遡る。
迅はもう一人と戦っていた。力は拮抗し、戦局は全くもって動きそうになかった。
戦いの最中、迅が敵に問いかける
「お前らは、どこから依頼を受けてるんだ?」
攻撃の手を止めて女が話し始める
「組織の上からだよ。私たちも顔も名前もわからない。ただ金のために仕事を受けているだけだよ。」
「組織か…なぜ俺たちが攻撃されなきゃいけないんだ」
迅が本音を話す。
「知らないよ。私はただ、金を稼いで、自由に暮らしたいだけだ。」
「自由、か…… まさかその言葉を聞けるとはな。なあ、俺たちと一緒に来ないか?俺たちも自由を目指しているんだ」
迅がそう提案する。
「へえ、自由を…… そうだな、いい機会だ。少し聞かせてくれよ。」
女が少し興味を示した。
迅が彼の考えや組織のことなどを話す。女はそれをしっかり聞いてきた。
「なるほど… はっはっは すごいな!」
「そうだろ?」
二人はもはや談笑している。さっきまで激しい戦いをしていたとは思えないほどに。
「面白そうだな。もしよかったら私も入れてくれよ!」
「ああ!自由を目指すものなら誰でも大歓迎だぜ!」
二人はすっかり意気投合したようだ。
そして今に戻る
「おい、大丈夫か!翠!」
迅から名前を呼ばれて、意識が戻った。なんとかなりそうだ。
剣の女が斧の女に話しかける。
「おーい、京佳!私はこいつらの仲間になることにした!」
「なっ…!」
京佳だけでなく、翠も驚いて声を出す。
(なぜ……?本当のことなのか?)
「迅、どういうことだ?」
「ああ、話すと少し長くなるんだが…」
迅がそれまでの経緯を話してくれた。
「すごいな。そんなにいいことを言ったのか?」
「いや、そんなことはないと思うんなけどな、」
「それよりも怪我は大丈夫か?」
「まあなんとか、死ぬことはなさそうだ」
「やばいじゃん」
「大丈夫だよ」
そして二人がこっちへ寄ってきた。
「「すいませんでした!!」」
「組織の命令とはいえ、本当にやり過ぎました。」
「私からも謝罪させてください。」
「まあ、大丈夫ですよ。死にはしなかったですしね…」
「命令なら仕方ない部分もあるか」
「それで、私達も貴方方の組織に入れてもらいたいのです!」
「お願いします」
「どうする、翠」
「まあ、戦力は多い方がいいだろうし、いいんじゃないかしら」
「まあ、翠がそういうならそれでいいか。それじゃあ、これからよろしくな!」
「「よろしくお願いします!!」」
「私は梶野京佳。斧のバトルスーツを使っています。」
「名前は成島美織武器はタガーナイフ。よろしく。」
「私は大嶺翠。翠でいいわ。武器はライフル銃。これからよろしく。」
「俺はこの組織のリーダーをやらせてもらっている秦野迅 だ!武器は鎌、二人とも、これからよろしく頼むぜ!」
挨拶を終え、再び出発することにした。傭兵の死体はそこら辺に埋めるしかない。この世界は弱肉強食だ。決して平和な世界ではない。死人が出るのは仕方のないことだ。しかし、命とは本来、尊いものだ。せめて、しっかりと葬ってやろうと墓を作っておいた。
そしてひと段落した後、旅を再開した。今度は道がわかる二人がいる。良さそうな場所をピックアップしてくれているらしい。二人についていけばなんとかなりそうだ。
「やっと着いた〜」
「いい場所だな!」
新天地での新しい生活が始まろうとしていた。




