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人棲録  作者: 北村タマオ
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001 説明不能

 世界一可愛くないツインテール。

 彼女のあだ名であり、彼女の存在意義であり、彼女のアイデンティティである。世界一可愛くない、だがツインテールにしている。何故。トレードマークだから? しかし、何故にツインテールにそれを求めるのか。よく分からない点だらけである。

 よく分からない。そう、この言葉こそが、彼女の為人を全て説明しきっていた。よく分からないキャラクターであった。何を考えて、何を感じて、何を思って、何を得て、何を愛して、生きてきたか。てんで分からない。恐らく、本人も分からなかった筈だ。生きる事に「意味」を求めなかった人間である。

 かと言って、世捨て人であった訳ではない。日本の北から南まで、東から西へ、彼女は放浪し続けたのであるが、その度に男と関係を持って、胤まで残して、またふらりと北から南へ、東から西へと移動していった。後世にて、「複数人説」が出たほどに、彼女は何処からともなく現れて、現地の男とくっ付いて、胤と、それに伴うあらゆるトラブルと問題と、そして事件を残した末に居なくなっている。故に、彼女の残した胤が何人居るのか。正確な数字さえ、今は残されていない。

 塚本美玖。それが彼女の名前である。彼女の人生が始まったのは、この太陽系第三惑星の地球のユーラシア大陸の東の果てにある小さな島国の北にある北海道の地にある1つの市、名原市である。

 彼女が産まれた頃には、既に「破産」していた市町村であり、戦後日本初の自治体の破産であった。映画祭だの映画村だのテーマパークだの記念館だの、色々と威勢良く箱物を作りまくった末に、破裂した。残ったのは、膨大な借金と劣悪なサービスだけである。

 じゃあ、そんな街でどうして美玖の両親が、ここで子供を産んだのか。理由は単純である。両親なんて居なかった。産婦人科の病院の前にある「赤子シェルター」にて、産まれた時の姿のままで捨てられていたのである。他の余裕のある自治体の施設に預けても良かったのだが、それではこの街にある「赤子シェルター」の意義が無いとして、名原市にて育つ事になる。その役人根性が、後に彼女の、塚本美玖の人生を決めたのである。

 名原市の何処の住民も、この赤ん坊の世話を拒否していた。ただでさえ莫大な借金と劣悪なサービスで、生活するのも厳しい市にて、役人根性でもって引き取られた、何処の胤かも分からない赤ん坊の面倒を看ろと言われても、酷な話である。

 結局、塚本美玖は、幼児期を夏は暑くて冬は寒い市役所にて過ごす事になっていた。泣いたら一番近くに居た役人がミルクをあげて、オムツをかえて、あるいはあやしてあげて、「親が見つかるまで」と言う雲をつかむ様な条件の元にて、塚本美玖は大きくなり続けた。


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