久しぶりにパラドクスで暴れよう
楽園へ帰還した俺は、早速手に入れたデータをノイジーに解析させた。終わるまでいつものように3人でベッドでごろごろしている。
「スーザンの資産のすべてを把握。銀行口座のパスワードも完璧です」
「よし、全世界の犬カフェに等分して寄付しよう」
「ハヤテ様、猫カフェっていうのもあるみたいですよー?」
「他にもフクロウカフェやうさぎカフェというのもあるらしいです」
シオンとリリーがネットでカフェを調べている。世の中にはいろんな動物カフェがあるねえ。なるべく均等に寄付してあげよう。
「爬虫類カフェに、カピバラまであるのか……全部に均等に送れ。株とか金銀とか全部換金して予算を工面しろ。評判の悪い悪徳なカフェは除外。あの犬カフェには騒いで迷惑をかけたから1億だ。あとは……」
「動物保護団体に寄付っていうのはどうですかぃ?」
「いいわね。ワイルズスター財閥のようだと困りますが、ちゃんとした団体なら助かる動物も増えますわ」
「そりゃいいな。自然保護とかも含めて均等に寄付しろ。どのくらいになる?」
「各カフェと団体に寄付するとして、内訳はこのように」
想定より少ない。これはコロニーまで含めると、カフェと団体が多すぎるのだろうか。数を絞るとしても、もう少し金が欲しいところだな。
「微妙に少ないな。どうせ隠し財産がある。現金や芸術品をしまっておく倉庫が絶対にあるはずだ。そこを漁って寄付金を増やすぞ」
コロニーを丸ごと裏からも表からも支配するというのは、それくらいの財宝があっていいはずだ。全部いただくぞ。
「隠し財産は付近の小惑星を改造した基地に隠されています。関係者と警備以外誰も知らないらしく、襲っても軍が来る可能性は低いでしょう」
「いいね、久しぶりにパラドクスで暴れたい」
というわけで直行。小惑星に偽造された倉庫は、ちょっと見た感じでは見分けがつかない。隠れるように停泊している戦艦だけが見えた。
「敵戦艦1。警備機体多数確認。ビームフィールド展開完了。お好きにどうぞ」
「ハヤテ、パラドクス出るぞ」
「リリー、ブロッサムブレイドいっくぞー!」
「シオン、ピュアセレナーデ発進します」
3機とも発進して並ぶ。戦艦に近づいて、撃沈させないようにビームを撃ち込んだ。あとは出てくるのを待とう。
『どうした!? 報告しろ!』
『敵襲! 何者かが攻撃してきます!』
『全機出撃! なんとしても逃がすな!』
傍受した通信は焦りを隠せていない。慌てたようにわらわらと、コスモクラフトが出撃してくる。色とりどりだが、スーパーロボットはいないようだ。
「羽無しか」
ブーストフェザーの有無について、とりあえず羽あり・羽無しと呼ぶことにした。
「まあいい、遊んでやるから死にやがれ!」
両手からビームを連射する。早速1機貫通させて派手に爆散させた。爆炎が一瞬、宇宙の闇を赤く染める。
『撃ってきたぞ!』
『ふざけやがって! 潰せ!』
散開して銃撃してくるが無駄だ。ザコの直線的な攻撃は回避できるようになった。
「砕け散れ!」
今日は接近戦の気分だ。パラドクスの拳が高速で振り抜かれ、敵の頭部を粉砕する。衝撃波が周囲の残骸を吹き飛ばし、そのまま左アッパーでコクピットを貫いた。
『うげえ!?』
『この野郎!』
近くの敵がビームソードを抜き放つ。だがそれより早く左半身からビームを連射してカウンターを仕掛けた。
『んなにい!? がああ!』
まさか肩や脇腹からビームが出るとは思わなかったのだろう。がっつり直撃して爆散していく。
「ほれほれ抵抗しないとなぶり殺しだぞ!」
敵のビームを蹴り返して直撃させる。一撃で宇宙の花火と化していく敵さん。
『あいつビームが効かない! うわあああ!?』
『なんとしても落とせ! 艦に近づけるな!』
「ビームボード!」
ビームででっかいサーフボードを作って直進。すれ違いざまにターンしてぶった切っていく。
『速すぎる! ぐぎゃあ!?』
『くっそおお!!』
『主砲撃て!』
敵の主砲ビームチャージされる。ブースト全開。近くにいた敵機を両手に掴み、主砲に向けて突っ込む。
『離せ! やめろ撃つなああ!』
『まだ生きてるんだ! 撃たないでくれ!』
2機をビームでくるんで砲口にぶち込んだ。戦艦は大爆発を起こして前半分が消えた。それでもまだ細かい銃座を生きているのか、こちらを撃ってくる。
「行って、クリスタルビット!」
シオンの射撃が的確にすべての銃座とミサイルポッドを破壊していく。
『ちくしょう、どこから撃ってやがる!』
『1機だけでも潰せば楽になる。相手は少数だ』
「でっきるっかなー? いっくぞー!」
リリーの三刀流の出力は凄まじく、並のビームソードでは防ぐことができない。それでいて超高速で繰り出されるため、熟練者でも数秒で斬り刻まれる。
『撃ち続けろ。当たれば勝ちだ』
「そうでもないんだなこれが! いくぜお前ら!」
「了解ですわ!」
「はいさー!」
シオンの放つ無数の射撃により敵軍が怯み、手足が貫かれては機体の動きが鈍る。その隙をついてリリーが突っ込む。回転しながらビームフェザーまで展開して、多腕による乱舞で徹底的に斬り裂いていく。敵が爆破する前にはもう姿が見えなくなるほどのスピードだ。
「消えてなくなれええぇぇ!!」
両手にビームエネルギーを集中。巨大なビームの渦が手のひらから迸る。残っていた敵も、死んだ敵の残骸も、戦艦すらも完全に飲み込み、宇宙を元通りの静かな暗黒へと変えたのだった。
「ふう……久しぶりに暴れると気分が晴れるな」
「うんうん、犬カフェの嫌な気持ちが消えましたねぇ」
「気晴らしになったのなら私も嬉しいです」
「よし、全員帰還しろ。あとはドローン軍団にやらせる」
こうして小惑星金庫を掌握した。俺の部屋には金庫の内部映像が出る。ドローンがしっかり運んでいるのを見て、ふと気づく。
「絵とかどこで売ればいいんだ?」
当然だが美術品は売らなきゃ金にならない。金塊などもあるが、結局のところ怪しまれずに売る手段がない。俺たちの存在も知られてはいけない。かなり難しい。
「美術商に変装するとかどうです?」
「初対面のやつが持っていっても、裏も表も信用はしないだろう。真作であろうと疑われるし、金を用意できるやつが限られすぎる」
だからといって人脈を広げるつもりはない。それは俺たちという存在への手がかりとなってしまうからだ。
「日用品として使えそうなもんは使っちまおう。すげえ高い茶器セットとかあるだろ。あれで紅茶入れて飲もうぜ」
「おおー、贅沢ですね!」
「器に負けない紅茶をいれますわ」
「となると問題は絵や銅像だな。美術に興味はないし、場所取って邪魔だ」
「犬カフェに送るとか」
「犬カフェはゴミ箱じゃないんだぞ。急に高額の美術品が来たら、警察とかが動いてカフェの営業止まるかもしれん」
警察……警察ねえ。いっそ警察に送るか。盗品や裏の美術商から買ったものなら、それで処理できるだろう。スーザンの倉庫にあったという証拠もつけたいが、既に小惑星は副砲で消してしまった。説得力はないし、余計な情報を与えたくない。
「オーナー、半分近くが贋作だと判明しました」
「燃やせそんなもん」
目が曇ってんなババア。ババアの夫の趣味かもしれんが。そこでまだ旦那ノータッチだなと思いつく。
「そうだ、ババアの旦那は誰なんだ?」
「バリー・ジェルミ48歳。このコロニーの武器・美術商。コロニー同盟とのパイプあり。このコロニーに古くから存在する一族であり、独自の部隊と権力を持つ。権力と資金繰りの過程で、邪魔な相手を始末してのし上がっていますね。その過程で裏シンジケートを作り上げた模様」
「この世界の権力者そんなんばっかか」
殺していいクズしか出てこないのは、こっちとしては楽でいい。データを見る限り、隠し財産はもうない。口座も使い切った。あとはこいつら夫婦を殺すのみ。
「ガキの首の中に爆弾詰め込んで送れ。小型カメラも仕込んでおけよ」
「送り先はどうしますか?」
「バリーのアジト。裏のアジトだ。本拠地あてに送れ」
さて、クズにも家族愛ってのがあるのかどうか見せてくれ。
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あと美術品どうやって処分すればいいのか思いつきませんどうしましょう。




