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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う  作者: 水源
明暦4年・万治元年(1658年)

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吉原劇場・吉原意和戸(よしわらいわと)の天鈿女命(あめのうずめ)の踊り

 さて大工見習いの太助はこの前親方に吉原に連れて行ってもらって、すっかり吉原の虜になっちまった。

しかし、悲しいかな見習いの太助に何度も遊べるほど吉原の遊女遊びの値段は安くはない。

この時代大工の日当は銭500文(約一万円)程度だが、明暦の大火で江戸の半分以上が焼けたため最大4000文(約10万円)ほどまで値上がりしているとは言え、それは見習いには関係のない話だ。


「はー、またいきてぇなぁ」


 そんなことを太助が考えていたら親方が太助に声をかけてきた。


「おい、どうした、太助」


「へえ、吉原というのはすげーいいとこだったなとあの日の夜を思い返していたんですよ」


 それを聞いて親方は苦笑い。


「お、おう、おめえはいい思いをしてきたみてえだな」


「けど、1両なんてそうそう払えませんし」


「まあ、そうだな……そういやお前、意和戸(いわと)ってしってるか?」


「意和戸? なんですかそれ」


「おう、意和戸ってのは、女が脱ぐ様子を見れる小屋のことだ。

 値段は10文くらいだが、まあ脱ぐのは大年増ばかりなんだがな、だが、吉原には若い娘の意和戸があって100文で見れるらしい。

 一回いってみるか?」


「へえ、ぜひとも行きたいです」


 こうして二人はまたしても吉原に向かうことにした。

大門をくぐればやはりそこは別天地、色とりどりの鮮やかな服を着た遊女がせわしなく歩いている様子が見えた。

二人は吉原意和戸(よしわらいわと)と呼ばれる劇場へ向かう。


 そしてにそこについて見れば、劇場といっても、なんか普通の楼みたいな造りで、びっくりする二人。


「芝居小屋と言えば客席は、舞台の両袖にある建物の2階部分の「桟敷席(さじきせき)」はともかく舞台前の「土間(どま)」にゃあ、屋根がないはずなんだがな、どうなってるんだいったい?」


「そりゃ親方、外から見えたら不味いからじゃあないんですかい?」


「なるほどな、じゃあとりあえず中を見てみようじゃねえか」


「そうしやしょう」


 二人は芝居小屋の中へ入っていく。


「おい、中の芝居を見物したいんだがいくらだ」


「へい、最前列で料金は200文(おおよそ4000円)、 それより後ろなら100文(おおよそ2000円)です」


「おう、安いな、じゃあ最前列で頼むわ。2人で400文だな」


 親方は400文を取り出して支払った。


「へえ、まいどあり」


 親方は上機嫌で言う。


「こりゃかなり安いぜ。

 歌舞伎なら桟敷で1両2分(おおよそ15万円)、土間で2朱(おおよそ1万2千500円)程はするからな」


「でも意和戸は10文なのでしょう?」


「そりゃ、ボロボロの掘っ立て小屋で大年増の裸を見るのときれいな劇場で若い娘の裸を見るのじゃ値段も違って当たり前だろう」


 二人が中に入ると、中はほぼ満席。

同じように仕事が終わった男たちが筵の上に思い思いに座っているようだが結構な人数だ。


 そして親方と太助が最前列に座ると、舞台が始まる時間が来たようだ。

まずは舞台に明かりがついて、まずは前座と唐服(チャイナドレス)姿の遊女たちが軽快な音楽にのせて、ときには輪になって、ときには列になり、スラリとした太ももをさらけ出しながら、ときに脚を振り上げて、ときには乳房をさらけ出し扇情的な踊りを見せた。


 そして踊りが終わると遊女は袖に引っ込んで一度明かりが消されると、本番が始まった。

劇場に語り部の声が響く。


”ある日高天原にやってきた暴れん坊のスサノオノミコト。

 かの神の乱暴な行いにより、侍女の一人は、死にいたり。

 それを聞いたアマテラス、これは怖いと天岩屋(あまのいわや)の

 戸を開き、中に入ると内側から戸を閉めた。

 太陽の神アマテラスが隠れてしまったからさあ大変。

 高天原(たかまがはら)はあっという間にまっ暗やみ。

 恐ろしくなった神々が叫ぶと、その恐怖に吸い寄せられし

 悪神、悪霊が地を覆い災いが絶えなく起こってしまう。

 それに困った八百万の神さまたち。

 天の安河原(あまのやすかわら)に集まり

 なんとかアマテラスを岩屋から出そうと

 相談をはじめ、知恵の神オモイカネが

 アマテラスを岩屋から引き出す作戦をたてるに至りました”


「みなさん、まずは、アマテラスに夜が明けたと思わせるために、

 日の本中の常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)(鶏のこと)

 を集めていっせいに鳴かせましょう」


”コケコッコーと常世長鳴鳥を鳴かせてみたものの、

 アマテラスが出てくる気配は全くない、

 それでは次はどうするか、

 皆はオモイカネを仰ぎ見る”


「では楽しそうな笑い声でアマテラスに興味を惹かせましょう。

 ウズメ、今日はお前が主役だ」


「はい」


 脇からソソソと舞台の上にはいってくる、巫女服姿の遊女。

ここで舞台の上の行灯に火が灯されて舞台の様子が見えるようになった。

舞台の上には障子紙を張った衝立があり、女の影がその後ろに浮き上がる。

それとともに三味線、鼓(つづみ)、胡弓、琴がかき鳴らされ始める。


「ほう、なかなか風流だな」


「すげえ本格的ですなあ、親方」


 大きな行水桶をひっくり返した、それはウズメの踊る舞台。

コンコンと足が桶にあたって小気味いい音を立てている。

そしてウズメ役の遊女が曲に合わせて踊りを舞いながら、スルスルと衣をはだけていく様子が影でうつる。

、

「うおぉぉぉ!!ウズメはーん!!!」


「もっとぬげー!!!」


 障子紙を張った衝立が少しずらされる。

ウズメの服がさらに乱れ、時々障子の端を越えて手や脚がチラチラと漏れ出る。

影に映る乳房が扇情的に揺れるのはなかなか良い。


「くそー生ウズメはんの乳房が見たいぞー」


「俺はケツが見たい~」


 盥の上をトントトトンと手拍子、足拍子をくわえて、足をふみならしながら、腰をフリフリと影が踊る、障子紙を張った衝立はまた少しずらされ、時折、乳房や尻も垣間見える。


「うおー、みえたー」


 もはや、すでに行水桶の上のウズメの衣装は全て落ちてしまった。

そこへやってくるタヂカラオ、ウズメの横にやってきて押す姿勢。


「ちょっと、押さんでよ、絶対押さんでよ?!」


「分かってる」


 タヂカラオが押したのはウズメの姿を隠していた障子紙の障子紙を張った衝立。


「アマテラス様ー、あ、私全裸やったわ」


 客は”ドッ”と笑い、遊女はこちらへ向けて、大きく手を振った。

しばらく踊りが続いた後、遊女は行水盥から降りて、脱いだ衣をかき集めて袖へと下がっていく。


「今日も良かったぞー」


「毎日ウズメはーん」


 他の客が小銭を入れた紙のおひねりを舞台に投げ込んでいるようだと、親方も小銭を入れたお捻りを舞台へ投げ入れた。


「いや、なかなかいいもん見れたな」


「はい、親方」


 興奮した客たちが遊女を買おうと、劇場から出ていく。

親方は切見世女郎でもかって帰るかとも思ったが、また痛い目を見るのもなんだと思い返し、今日のところは二人で長屋へと帰っていった。


「次行くときは三河屋で遊べるだけの金も用意しておこうか」


「へえ、親方、おいらも仕事頑張ります」

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