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盤双六の吉原予選は結構盛り上がったが死屍累々の惨状でもあった

 さて、盤双六の予選を遊郭の格にかかわらずにやるということを通達したら大見世だけでなく中見世以下の遊郭の遊女からの参加希望も結構来た。


「ま、これも一つのお祭りみたいなもんだしな」


 俺がそう言うと妙がうなずいていった。


「お祭りは皆さん大好きですからね」


 意味はよくわかってないだろうけど清花も嬉しそうにいう。


「あーい」


 まあ、前回の囲碁に比べると江戸時代初期においては盤双六は一般庶民でも遊べる比較的取り組みやすい娯楽という認識なので比較的気軽に参加出来る雰囲気でもあったしな。


 参加者を募集しているうちに、その間に伊勢に文を送って使うルールを確認した。


 戻ってきた文で確認した所がこんな感じだった。


 ・今回は盤双六の種目の本双六を用いる。


(バックギャモンに一番近いものを使うということ)


(盤双六の盤は左右12マスが上下2つに分かれ真ん中が空白になっている。)


(右側6つが内地・左側6つが外地と呼ばれる)


 3回勝負で得点の高い方の勝ち。


 1.最初に既定の場所にお互いの白もしくは黒の駒を並べ、交互にサイコロを2個振り、出た目により自分の駒を進める。出目の数の後戻りはできない。例えばでた目が2と5の場合は1つの駒を7マス、もしくは2つの駒を2と5マスずつ動かせる


 2.相手方の駒が2個以上あるところには入れない。(移動先がそういった場所になる駒は動かせない)。


 3.相手方の駒が1個のところに入ったらその駒を中央の空白にとりのぞくことができる(これを「切る」と言う)、自分の手番では切られて中央にあげられている駒があれば、まずその駒を自分の一番右の場所のそと(0または25と仮定される場所)に置き、サイコロの目の数だけ進めて盤内に入れなければならない。


 4.どちらかひとつのサイコロの目の分しか進められない場合は大きい方の数の駒を進めなければならない、両方が移動できない場合は1回休み。


 4.早く自分の駒を全て敵の内地に入れ全て上がれば勝ち。 これを「入勝いりがち」という。


 地方ルール


 ゾロ目あり。


 ゾロ目が出た時はそれぞれを出目の2倍進めることができる。


 例えば6と6が出た時は2つの駒を12か1つを24進めることができる。


 右端に突き当たってしまった場合余剰の数だけ左へ戻る。


 上がりあり。


 自分の駒を15個全て全部相手の内地に入れた後、サイコロを振って3と4が出たら3と4にある駒を1個ずつ上げることができる。


 3や4に自分の駒がなくて、1・2・5・6に駒がある時は駒を上げることができない。


 全部の駒が敵の内地に入りさらに一部の駒がすでに上がっていても、自分の駒が敵の駒によって切られて中央にあげられた場合はその駒が敵の内地に入るまではあがることはできない。


 通行禁止あり


 2個以上自分の駒が入ったマスが6個以上連続している状態だと出目がゾロ目でない限り駒が動かせなくなるがこれを行っても良いものとする。


 勝ったときの点数の計算


 相手の駒が1個でも上がっている状態で自分が先に全部上がり終えた場合「入勝」とし1点。


 相手がまだ上がっていない内に自分が上がり終えたら「無土勝ち」といい2点。


 相手の駒がまだひとつも内地に入っていない内に自分が上がり終えたら「無上勝ち」といい3点。


 倍おしあり


 それそれの指し手は勝ち点を倍にする「倍おし」を提案できる。


 ただし倍押しを一度提案したら次に相手が提案するまで、再び提案することはできない。


「なかなか賭博性のたかい決まりだがまあ面白そうだ」


 というわけで今回は本因坊みたいな専門家に指導を頼むわけでもなく、気楽に参加できるようにしたわけだ、事前にかわら版で吉原室内遊戯場にて吉原の代表者を決める予選を行うことを予告しておいた。


 それに、当日室内遊戯場に入るには有料の入場券を必要ともした。


 そして予選当日になった。


「おお、なかなかの人だかりだな」


 それぞれに参加するものを応援するべく入場券を買い求めるものが結構いた。


 そして始まる予選、なんだか室内がざわざわしている気はしたがきっと気のせいだろう。


「うふふふ、どうです、はなから倍おしでいかないかい?」


「いいさね、その勝負うけやしょう」


 あちこちで倍プッシュから勝負が始まるが大丈夫かなこれ。


 そして大方の予想通り盤双六なら気軽に参加できると参加してきた小見世や切見世の遊女の屍が死屍累々と積み上がることになった。


「ああ、うん、だいたい結果は予想通りだったな」


 盤双六は運の要素も強いが先読みの要素も強い。


 適当に駒を進めても簡単には勝てないのだな。


「え、そこでその出目?」


「あい、ではここの駒は切りでんな」


「そ、そんな」


 そして大見世や中見世の遊女の運というのは馬鹿にできない。


 十字屋の紅梅や中見世伊勢屋の小太夫なども勝ち上がってきてるが彼女たちもやはり運というものを持ってるのだろう。


 どうも小太夫の応援には大奥の女中から何人か来てるみたいだしな。


 そして大番狂わせが起きた。


「わっちがまさか負けるとはねぇ」


「ふふふ、この日のために頑張ってきたかいがあったでやすよ」


 藤乃が紅梅に敗れたのだ。


「ありゃま、まじか……そろそろ藤乃も年季明けだしな」


 今回の吉原の代表から藤乃が外れ、代わりに中見世の小太夫が参加することになった。


 その他のメンツには高尾もはいってるが江戸患いの症状はおさまってるみたいだな。


「時代は移り変わるもんだししょうがねえか」


 藤乃もちょっとがっくり来てるらしい。


「はあ、我ながら情けないことでやすな」


「お前さんはずっと頑張ってきたが、そろそろ後進に道を譲ってもいいかもな。

 囲碁とかその他の教養芸事も含めて」


「そうかも知れませんな、わっちももう引退でやしょうし今のうちに誰かにちゃんと仕込んでおきやしょう」


「すまないが頼むな」


 藤乃を身請けしたいという客も多いし、俺としては吉原に残って芸事や教養の育成に関わってほしいとも思う。


 そちらを選ぶかは藤乃自身に任せようとも思うけどな。

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