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読み聞かせの絵本や歌劇用の台本小説の江戸中からの公募や大奥からの応募を募ってみたぜ

 さて、俺が勘定奉行経由で上様に送ったものは好評なようだ。

 乳児寝台(ベビーベッド)やそれに付属する蚊帳や乳児回転玩具(ベビーメリー)などは今までなかったが江戸城で使われているということで他の大名家のとくに親藩、譜代でも導入しようということになって親方や竹田清房は大忙しだ。


「やれやれ、なかなか暇にはならんもんだな」


 親方は工場で毎日ベビーベッドをつくっている。


「そう言わないでくれよ親方。

 どこの藩でも親方の乳児寝台(ベビーベッド)の納入を待ってるんだからさ」


「そう言われれば頑張らんわけには行かねえがな。

 早く鈴蘭ちゃんと茉莉花ちゃんも楽にしてやりたいしな」


「ああ、その意気で頼むぜ」


 無論、ゼンマイを使ったベビーメリーは手作りで大量生産は難しいが故に高価なのでそれなりに石高のある大藩でないと購入は難しいのだけどな。


「しかし、これがこんなに儲かるとは思いませんでしたね」


 竹田清房は忙しいながらも嬉しそうだ。


「そりゃ誰だって子供は大事な宝だからな。

 子供が喜ぶものだったらみんなほしがるものさ」


 彼は頷く。


「ふむ、それはそうですね」


 読み聞かせ用の赤小本(あかごほん)は木版で刷って売っているがこれも売上は順調。


 菱川師宣もほくほく顔だ。


「いやいや、まさか木版摺の俺の挿絵の載った赤小本がこんなに売れるなんてな」


「そりゃ、お前さんも浮世絵師としてもうだいぶ有名になってるしな」


「しかも上様のご世継ぎの愛読書っていわれてるそうだぞ」


「まあ、そりゃ今のところ他の赤小本も献上されてるって話は聞いてないしな」


 そんなことを言っていたら勘定奉行からの呼び出しが有った。


「んー、一体なんだろう?

 四宿の件にはまだ早いだろうし……」


 早速俺は勘定奉行のもとに赴いた。


「お奉行様においてはいつもお世話になっております。

 今回の呼び出しについてはどのようなご用件でございましょうか?」


 勘定奉行はうむと嬉しそうに頷く。


「うむ、その方らよりの贈り物を上様はたいそう喜ばれている。

 だが、赤小本にもう少し種類がほしいとのことだ」


 う、うむ、まあそうなるよな。


「かしこまりました、また新しい種類の赤小本を献上させていただきます。

 ただ、私一人では物語を書くのも大変なので大奥の奥女中の皆さまや江戸の一般庶民から作品を集ってそちらを製品化させていただいてもよいでしょうか?」


「ふむ、なるほど、それは良い案であるな」


「ではそのようにさせていただきます」


「うむよろしく頼むぞ」


 さて、勘定奉行のもとを辞して三河屋に戻ってから俺はまずは赤小本や吉原歌劇の台本の一般庶民向けの公募の張り紙を俺の傘下の見世などにはりだし、町人町でのかわら版でも宣伝をしてもらった。


 あと歌劇を提携している玉屋にも歌劇用の脚本の選定を頼むことにした。


「一般から歌劇の脚本を募集しようと思ってるんだがお前さんも脚本の選定をしないか?」


「おう、そうさせてもらえれば助かるぜ」


 三河屋と吉原歌劇一座による赤小本と正本(上演台本)の公募


 応募資格

 職業、年齢、性別、全て問わず。


 作品内容

 赤小本は乳児に読み聞かせるにふさわしい内容であること。

 草双紙1冊以上の内容がある作品であること。


 正本は既成の物語でなくなおかつ内容が道徳的であること。

 草双紙1冊以上の内容がある作品であること。


 賞の種類

 大賞:賞金10両(赤小本と正本それぞれ1つずつ)

 中賞:賞金5両

 小賞:賞金1両


 特別賞


 将軍賞:将軍様への製品の献上(赤小本)

 吉原賞:吉原歌劇での花組・月組・雪組での歌劇化(正本それぞれ1つずつ)


 締切


 霜月(しもつき)(11月)末日まで


 応募宛先

 吉原の三河屋に持ち込んでください


 受賞作の発表

 来年の睦月(むつき)(1月)結果発表予定です。

 応募数によっては一次選考となります。


 こんな感じでいいかな。

 それなりに応募があればいいんだが応募が全くなかったらちょっとさみしい。


 後は大奥に出入りしている中見世の遊女から大奥に赤小本や正本を書いてほしい旨を伝えてもらうようにしないとな。


「小太夫、上様のご世継ぎ様用の赤小本の種類を増やしてほしいとのことなんで大奥の奥女中の皆さんにもぜひ公募に参加してほしいんだ。

 なんでそれを伝えたり、応募作品を俺に持ってきたりという役目を頼みたいんだがいいかな?」


 小太夫は頷く。


「はい、もちろんでやすよ。

 大奥の皆様もこの機会にときっと張り切りやすな」


「ああ、大奥のいい暇つぶしになってくれればいいんだがな」


 お世継ぎの男児が生まれたからと言って大奥の皆が忙しいわけではない。


 育てるのは専門の乳母がいるから産んだ本人は暇だったりするしな。


「将軍賞は御台所様で決まりかもしれないなぁ……」


 せっかく男児が生まれてもすぐに引き離されてしまうのもかわいそうなことだと思うのだが母親の乳の出もあまり良くないのだろうか?。


 おそらく子供を思う気持ちは一番強い気がする。


 むしろ伏見宮家に対しても銭や食糧を多少送ったほうがいいかもしれないな。


「あとは応募が来るのを待つだけだな。

 何件か来てくれれば助かるんだけど」


 そんなことを思っていたらしばらく経ってなんか予想以上に応募が有った。


「うむむ、まさか十日間で百本以上応募が来るとは予想外だったな」


 目的が賞金なのかご世継ぎ様への本の献上による売名なのか吉原歌劇に採用されたいのかは分からないが、意外に沢山応募作が来た。


 もっとも内容的にちゃんと面白いといえるのは一割くらいかな。


 おそらく歌舞伎や浄瑠璃などの脚本を書いてる連中も応募しているのだろう。


「思っていた以上におもしろくなりそうだ」


 今も頑張って作品を書いてる人間がたくさんいるんだろうな。

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