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大奥から中見世の遊女の派遣を依頼されたぜ、ついでに室内遊技場も作って欲しいそうだ

 さて、中見世の遊女の吉原歌初公演はなんとか成功した。


 そして、以前から季節行事に参加していた仲の良い局系の中見世から、自分たちの抱えている遊女にも劇場を使わせて踊りをやらせてほしいと言われた。


「うちの遊女たちにもどうか機会をやってください」


「ああ、それはかまわないぜ。

 ただ、踊りや歌はそっちで考えてくれよ。

 まあ、俺んところと同じでもいいが比較されるぜ」


「な、なるほど、分かりましたありがとうございます」


 まあ、脱衣劇を俺のところもやらせろと西田屋が言ってきた時にその後表面だけ真似しようとした連中がどうなったかを覚えてれば安易な真似はしないだろう。


 それに許可しようがしまいが、真似をしようとするところは出てくるだろう。


 なら俺の許可を得ればちゃんとできるとしておいたほうがいい。


 そのほうが目も届くしな。


 そして銀兵衛親方に建築を頼んでいた室内遊技場も完成した。


「流石親方だな。

 いつも助かってるぜ」


「へ、あたりきよ!」


 そしてオープンした室内遊技場はちょっとした金を払えば、危険日休みなどの遊女が碁や将棋、麻雀、百人一首、いろはかるた、盤双六バックギャモン棒玉突ビリヤード等の遊び相手になってくれたり、皆でワイワイ絵双六に参加できたりするのが評判になっている。


 和風TRPGなんかも作って広めてみたいところではあるんだけど、題目が鬼退治くらいしか思いつかんのだよな、まあ中国の仙人を題材にしてみてもいいけど。


 そしてそんな様子を聞きつけたらしい大奥から俺のところへ奥女中などの無聊のために中見世の遊女を派遣してほしいという依頼が来た、使いは奥向きの女中でも比較的身動きが取れる下の女中が来たようだ。


「私のお仕えしております皆さまは暇を持て余しているものでございます。

 なのでぜひ最近名を売っている中見世の遊女の皆さんに無聊を慰める寸劇を行ってほしいとのことでございます。

 また、吉原の室内遊技場で行われている遊戯を大奥でもできるようにもしていただければとのことでございます」


「なるほど、分かりました。

 ただ、こちらの室内遊技場のものをそのままお持ちするわけにもいきませんのでその製作期間は頂きたいのですがよろしいでしょうか。

 それまでは寸劇を行わせていただければ」


「わかりました、かえってその旨をお伝えいたします」


「ところで大見世ではなく中見世の遊女でいいんですか?」


「はい、大見世ではなく中見世の遊女の皆さまで」


「わかりました。

 では手配を取らせていただきます」


「よろしくお願いします」


 そんな感じで俺は大奥に中見世の遊女を派遣することになった。


 大見世の太夫などではなく中見世の局を指定してきたのは何かの拍子で上様が遊女を見初めてライバルが増えては困るということかもしれないな。


 大見世の太夫はそれこそ大名の側室にそのままなれるような美貌と教養を持ち合わせてるんだからそう考えても別におかしくはない。


 大奥は江戸城の本丸のほぼ半分の面積を占める。


 そして将軍の正室である宮家か摂関家の娘の御台所みだいどころとその身の世話をする公家出身の上臈じょうろうを頂点に、その下には大奥のすべてを取り仕切る「御年寄おとしより」がいて、実質的に将軍様の夜の相手をする可能性が高い中臈ちゅうろうなどや大奥の芸人である御次(おつぎ、大奥の針子である呉服間(ごふくのま 、御用達商人の出入りを改める御切手(ごきって、将軍と御台所の連絡役で、大奥から中奥へ普通に出入りできた御坊主(ごぼうず、御台所の世話をする見習い雑用係の御小姓(おこしょうなど将軍様や御台所に謁見できる「御目見得おめみえ」以上の奥女中と大奥内の部屋の掃除や風呂の湯水の温度調整をする御三間(ごさんのま、昼夜を問わずひたすら火の元を見回る御火番(おひのばん井戸の水汲み、荷物持ちなどの御末(おすえ 、各部屋で雑務を担当した大奥内唯一無給で召し抱えられていた雑用係で、無給なので大奥の他の奥女中の食べ残しを食べる御犬子供(おいぬこどものような下女など身分や役割権限なども様々。


 先代将軍徳川家光の治世下での大奥に相当する場所は本丸だけではなく西の丸や二の丸にも存在していてその人数は総勢で4000人近くなっていたようだが、徳川家光の死後4日たった慶安4年(1651年)の4月24日に、後を継いだ現在の上様である家綱公は江戸城大奥から女中3700人以上を解雇し、西の丸と二の丸などの不要な建物を取壊し、大奥を本丸奥のみにした。


 それでもまだ200人位は大奥で奥女中として働いている。


 尤もそのうちの50人から100人位は無給の御犬子供であるという話ではあるんだが。


 そして大奥の頂点にたつ将軍様の正妻である御台所の一日は将軍の奥向きへの御成に対する対応を中心にして決められているから結構たいへんである。


 だいたい明けの六ツ半(7時頃)目を覚まし、まず厠に行って用を足すと上臈にお尻を拭かせ、上臈に歯をみがかせ、上臈にお歯黒やらせ、口をゆすいだ水も、上臈の差し出す銀だらいに吐き出す。


 次に風呂、朝は必ず入浴し、夜は将軍と共に過ごす日にはそのまえにはいった。


 もっとも、宮方の子どもが生まれることを周りは好ましく思っていなかったのでその機会は殆どなかったらしいけどな。


 風呂の水は風呂焚き下女である御三の間が水と湯をあわせてちょうど良い湯加減を作った、もっとも大奥の湯殿に湯船はなく、桶のかけ湯だけで、御台所は湯殿の中の椅子に座り、上臈が糠袋で全身を洗った。


 その後、部屋に戻り髪の毛を上臈に梳かせながら朝食を取るが、魚の焼き物の身は上臈がほぐし、毒味のために冷めたおかずは上臈が火鉢で温めなおした。


 朝食がすむと洗面、口すすぎ、お化粧、そして正装への着替えを上臈にやらせ、将軍様が大奥入りすると、御台所は出迎えてあいさつを交わし、歴代将軍の位牌が安置してある仏間へ一緒に行き、御仏間に入り歴代の将軍の御位牌に礼拝をする。


 まあこれが御台所が基本的に朝にやらないといけないことだ。


 と言うか殆どのことはおつきの上臈にやらせてるんだけどな。


 それが終わればここで一度着替えを上臈にやらせこの後 「朝の総触れ」が行われる。


 奥女中の中で将軍に直接面会することができるお目見え以上の奥女中が廊下の左右に並んで将軍と御台所に朝のあいさつをするんだな。


 つまりお目見えの奥女中もこの時までには御台所と同じように身支度をしないといけなかった。


 これが終わると将軍は大奥から退出して政務に戻り、御台所も正装から普段着に着替えさせ、昼食を取り少しの間の自由時間をすごし昼八ツの未ノ刻(14時頃)に政務が終わった将軍様が普段着の着流しで大奥に戻ってくる場合は御台様もまた普段着に着替えさせて、二人で仲良く過ごす。

 将軍様が忙しい場合は引き続き自由な時間。


 暮れ六つ(18時頃)になると夕食の時間で、将軍様と一緒に食べる時もそうでないときも有った、一緒に食べる時は酒が出たらしい。


 宵五ツの戌ノ刻(20時頃)には、将軍を再び大奥へ迎えて「夜の総触れ」要するにあいさつ回りが行われ、夜五つ半(21時頃)には寝間着への着替えを上臈にやらせて寝る。


 ちなみに、御台所の着物は洗う手間をかけずにすべて大奥の女中たちに払い下げられ、その都度新しい服を買っていた。


 そうなると一日に何度も着替えをして、臭いや汚れが気になりだしたら他人に譲り渡すのだから当然衣装代が馬鹿みたいにかかった。


 御台所の着物代は年間で5000両(おおよそ5億円)ほどかかっていたから、そりゃ大奥の御用の呉服屋は笑いが止まらんし、幕府の大奥にかかる支出で幕府の財政は火の車にもなるな。


 まあそれはともかく奥女中は総触れなどの挨拶時間とそれまでの身支度の時間を除けば結構暇な時間が多いんだが、お目見え以上の奥女中は外出に厳しい制約があって、暇を持て余している。


 これは機密の維持のためなんで仕方がない部分もあるんだけどな。


「じゃあ、お前さん達。

 大奥の奥女中の暇つぶしにつきあってやって来てくれ」


「あい、わかりんした」


 俺は小太夫を筆頭として中見世の遊女を江戸城へ送り出した。


 そして大奥で遊女たちが演じた能楽や箏曲、三味線などは大好評だったようだ。


 そして”とりかへばや物語”を目録にした寸劇もかなりの評判だったようだぜ。


 とりかへばや物語は公家の家に生まれた内気で女性的な性格の男児ともう1人は快活で男性的な性格の女児が繰り広げる勘違いコメデイだが、女児が成長して若君となり男性として宮廷に出仕したりして自由闊達に生活できることを羨んだりしているようだな。


「ま、つてが広がるのはいいことだ」


 ちなみにちゃんと大奥から遊女の派遣代金はもらってるし、それも結構な額をもらった。


 大奥の奥女中は案外農民や町人も多いので、教養や芸事の個人指導なども頼まれているようだな。


 まあ、いいことだ。

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