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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う  作者: 水源
万治2年(1659年)

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運動公園ができたのはいいことだ、津軽の娘達も馴染んできてるようだな

 さて少し前から大工の親方に頼んで作ってもらっていたフィールドアスレチック施設の運動公園がようやく完成した。


 まあ、運動公園と言ってもそこまで大きいものではないがな。


「ひゃっほーい」


「うひょー」


 気勢を上げながら遊んでいるのは主に男の子だがそれなりの年齢の大人も混じって遊んでいたりする。


 フィールドアスレチックの内容としてはちょっと高くした平均台のような丸太の上をバランスを取りながら歩いたり、網をよじ登って滑り台で滑り降りたり、壁に吊り下がった縄で壁登りや壁下りをしたりできるようにしてある。


 流石に滑車を使うような施設はないな。


 ちょっとした冒険気分が味わえるので、皆夢中になって遊んでるぜ。


 江戸の町人街はこういった遊び場は少ないからよほど楽しいのだろう。


 木材と縄だけでも案外いろいろな施設が作れたりするのだ。


 そして疲れたらハンモックでのんびり横になれるようにもしているし、飯を食える万国食堂の出店もある。


「ふああ、こりゃいいねぇ」


 初夏に体を動かして、少し疲れたらハンモックで横になり涼風を味わうのもいいものだろう。


 その時女性は何をしているのかというと、主に温泉に入ったり買い物をしたり歌劇を見たりと言うことが多いようだ。


「美人湯に入れるなんて嬉しいね」


「ほんと肌がすべすべだよ」


 まあ、この時代ははっきり言えば娯楽のたぐいは多くはないのであるが、女性の楽しみについてはあんまり変わらないようだ。


 この前津軽から売られてきた娘達は容姿が優れていて高級遊女として売れそうな娘は十字屋の禿、容姿がそこそこなら小店の禿、遊女商売は厳しい娘は吉原旅籠屋や吉原温泉の風呂炊きや飯炊き、針子などの下女見習いとしたが、津軽から皆ではぐれないように手と手をつないで歩いてきたためか、とても仲がいい。


 たまにみんなで集まって話をしたり、見世の食い物を持ち寄って皆で分け合って食べていたりするようだ。


 遊女が吉原で売れる条件は一に容姿、二に愛想、三に技術、四に芸事、伍に教養。


 技術というのは会話、床上手、文のやり取りで客を呼んだりバッティングしないようにスケジュールを管理するなどの総合的な技術ではあるが、流石に津軽から出てきたばかりの彼女たちは現状ではまず読み書き算術と廓言葉を習うのが精一杯だ。


 遊女として必要な技術については新造になったらやり手や番頭、抱えている遊女がみっちりと教え込むはずだな。


 遊女上がりの内儀の場合は内儀もその中に加わるが妙は遊女上がりじゃないからちょっと難しいか。


 遊女屋の内儀になるのも大変なのだ。


 俺はなんとはなしに十字屋の娘達に聞いてみた。


「お前さん達、吉原は辛いか?」


 娘は首を横に振った。


「いいえ、つらくはないでやんすよ。

 いいべべを着られて、ちゃんと毎日おまんまも食えて暖かい布団で寝れるんでやんすからこれ以上望んだら罰が当たりやんすよ」


 ウンウンともう一人も頷く。


「あい、野良仕事を手伝ったり弟や妹の面倒を見たりそういうたいへんな仕事もないでやんすし」


 農家の娘はある程度の大きさになったら下の兄弟の面倒を見たり、田畑の野良仕事を手伝うのが普通だからな。


「そうか、その気持を忘れんようにしてくれよ」


 二人は頷いた。


「あい、楼主様」


「わかっていんす」


 うむ、廓言葉もなんとか覚えてきているようで何よりだ。


 勉強勉強で大変ではあるがこればかりは仕方がない。


 一方、下女として働くことになった娘は基本的には読み書きなどの教育より先に仕事の教育だな。


 あくまでも見習いなので仕事を一人でやらされることはないが掃除や食事の給仕、水くみ、炭や薪運び、その他の小間使いなどの雑用に駆り出されている。


 小さな子供にそんなことをやらせるなんて可愛そうと思うかもしれないが、ある程度の年齢になったら親の仕事をちょっと手伝うのはむしろ普通なことなんだ。


 俺は吉原旅籠で働いてる娘達に声をかける。


 どうやら今は燃料の薪運びをしているようだ。


「お前さん達、江戸の生活には慣れたか?」


「あい、もうすっかりなれました」


「あい、皆さまに良くしていただいてます」


 そして手に持っている薪を見てから言う。


「お前さん達、吉原は辛いか?」


「いんえ、津軽ではろくに飯も食えずに雪に埋もれ寒さに震えていたことを考えれば

 全然楽ですよ」


「はい、まいにちおいしいまんまをちゃんと食べられるのはありがたいです」


「そうか、これからも頑張ってくれな」


「あい、わかっております」


「はい、頑張ります」


 容姿の差で働き場所が分かれてしまうのは如何ともしがたい。


 無理に遊女にさせても客が取れなければ苦しいのは彼女たちだしな。


 それでもこの娘達が不幸だと思わないようにちゃんと公平な吉原にしてやりたいものだ。


「とりあえずこの子達は皆で集まって万国食堂で食べられるようにしてやるか」


 多少辛いことが有っても皆で一緒に飯を食えれば堪えられると思いたいものだ。


 幕末の1800年代には遊女屋の遊女や禿の扱いの酷さのあまりに見世への放火が相次いだが、そんなことはなくなると信じたいものだ。

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