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米の育苗前にお湯での殺菌を試してみよう、あと今年の4月の衣替えの時は皆自分で衣服を縫わせてみようか、

 さて、思い返してみると1年前の3月の俺は目覚めてからかなり色々やっていた。


 まずは遊郭の飯をまともなものにして俺も一緒に食べるようにした。


 遊女に休みをちゃんと取らせ、劇場を建設して脱衣劇や歌劇を行わせ、コンドーム代わりの茎袋を付けさせることで性病や妊娠の対策をして、男の陰間に口や素股のテクニックを習わせ、石鹸を作り、白粉を鉛からキカラウスリなどの植物の物に変え、トイレを汲み取りからバイオトイレに変えて、美人楼ともふもふ茶屋を開設しなどほんと色々やったな。


 が、今年は新たにやれることはさほど思いつかなかった。


「まあ、去年がやりすぎだったんだよな」


 そのせいで西田屋に目をつけられたりもしたな。


 しかし、今年の3月は桜の年期明けに合わせての花嫁修行の成果も出たようだしひな祭りもちゃんとまつれたし、墓というか葬られ方についても改善できた。


 花見も去年より盛大にやれたし、まあ、吉原全体もだいぶ良くはなったろう。


 と言うか去年が働きすぎだったように思うから今年からはのんびり行くとしよう。


「たまには妙とのんびり一緒に過ごしたいしな」


「あらあら、いきなり一体どうしたのですか?


「そりゃ、せっかく一緒になったのに仕事仕事でいままでろくに夫婦らしいこともしてなかったしそろそろ落ち着いてきたしな」


「そうですね、そうしてくださればうれしいですよ」


 清兵衛と桜の夫婦も仲が良くて羨ましいと言うのは内緒だ。


「そう言えばそろそろ農家は稲の育苗の季節か」


 種籾の塩水選が終わったら育苗する前に稲の種籾はばか苗病、いもち病、苗立枯細菌病などの原因となるカビや細菌に汚染されていることがあるので種まきの前に種子を消毒したほうが良い。


 21世紀であれば普通は農薬を使うんだが、種籾をお湯に浸たす「温湯種子消毒」という方法でも種子の消毒はできる。


 ただし、60℃のお湯に10分間または58℃のお湯に15分間など湯の温度と時間をきちんと管理しないといけないのが難しい。


 なんせこの時代には温度計もタイマーもない。


 なおかつ、60°Cのお湯に種籾を入れる時に種籾が冷えた状態で入れるとお湯の温度が下がってしまうので、本来であれば種籾を温めたり、用意するお湯の温度を60°Cよりちょっと高めのものを用意しておかないといけないわけだがな……。


「まあ、種籾が煮えてしまわない程度にやるしか無いか」


 沸騰させたお湯と井戸水を均等に混ぜるとおおよそ50℃くらい、6:4くらいに混ぜればおおよそ60℃くらいなのでそれで線香を半分に折って測れば大体15分ぐらいなのでいい感じだとは思うんだが、今年は少し試すだけにしてみよう。


 種籾が煮えてしまったために発芽しなかったら最悪だからな。


 更にお湯を沸かすための薪も江戸では安くないからコストパフォーマンスは塩水選別に比べると悪い。


「まあ、それでも病気で枯れるよりはいいとは思うんだが」


 とりあえず沸かしたお湯と井戸水を6:4で混ぜ、種籾を入れ折った線香が燃え尽きたら、井戸水に浸してそのまま乾かさずに15℃の水なら7日か8日程度水に浸ける事で眠っている種籾の芽を覚ましてやる、この時1日1回は水を取り替え雑菌が増えることを防止しつつ、種籾を水から出して酸素を与える。


 その後一晩、遊郭の内湯の中に種籾を置き一晩保温し芽が1mmほど出れば芽出しが完了する。

 そうしたら土に種まきを行って苗を育てればいい。


「まあこれで収穫量が増えるといいんだけどな」


 そしてそろそろ雪も溶けて去年旱魃で被害が出た津軽などから娘が売られてくる頃かもな。


 小さな子供の足で津軽から歩いてくるのは大変だろうし船を出したりする訳にはいかないのかね。


 まあ船を持ってる女衒はいないか。


 そう言えば船といえば水戸藩は蝦夷と、紀伊藩は琉球と直接交易を去年開始している。


 尾張藩は長崎から大阪と江戸の航路の物資の輸送を手がけている。


 これにより本来は商人が独占していた太平洋側海運を徳川御三家が行うことでその収益は御三家にも入るわけだ。


 もちろん商人が交易を全くおこなわなくなったわけではないけどな。


 これによる収益は結構大きいと思うんだが実際はどうなのか聞いておきたいところではあるな。


 さて、4月になると衣替えで綿入れからあわせに着替えることになる。


「さて、今年は針子に全部任せないで自分で衣装を縫ってみようじゃないか。

 まあ、全部というわけじゃなく一着でいいと思うけどな」


 藤乃が頷く。


「桜はんがやっていたことを考えるとわっちら年増はみなやっておいたほうがええでんな」


「ああ、針仕事はどっちにしろ覚えておいて損はないからな。

 端切れがでたらまた人形でも作ろうぜ」


「そうすれば無駄もでまへんしええんでないですか」


 というわけで4月になる前に遊女たちは皆自分の衣装のうちの1つを自分で糸を解き、中にはいっていた綿を取り出して、もう一度糸で縫い合わせるようにさせた。


 まあ、4月までまだ時間も十分あるし、皆それなりに針仕事にもなれてきたみたいだ。


 無論、太夫や格子太夫は毎日違う服に着替えたりするから沢山服を持っているし、禿や新造だって一つの服をじっと毎日着続けているわけではないから、針子の仕事がなくなるわけではないぞ。


 どっちにしろ洗濯盥ができても洗濯の際には衣服はそのまま洗うわけではなく糸をほぐして洗いもう一度仕立て直すわけだから針子の仕事がなくなることはないんだけどな。

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― 新着の感想 ―
[一言] (この先は読んでいません) 針仕事をやった方がいいというのは分かるのですが、やったことで怪我をした時に本業に影響が出そうですね。
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