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N.M.― 起源分岐戦争  作者: ブラックななこ
死神(過去編)

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観測者の罪

外の騒がしい声や音が響くモーテルの部屋。

ベッドに座った三人がお互いを見つめていた。


「・・・・・・それが第1ロジックですか・・・?」


「いや・・・

第1ロジックは、『動き』『光』『大きな音』・・・あたり・・・

そこを基準に判別が始まる・・・識別プログラムが動き出すって感じでしょうね。」


「その3つが・・・どうなるんです?」


「例えば、ドローンがいたとして・・・ドローンはセンサーを持つ識別者です。」


「識別者・・・?」


「そう、第1ロジックを持った識別者。

先ほどの三つを基準に監視してます。


例えば、『動き』を感知すると、その動く物が何なのかを判断します。

【動物?】か【車など人工物?】

ここで、人工物と判断されたら、即攻撃。

これが第2ロジック。」


ナジは二人に指を立てて説明した。

そして、三本目の指を立てる。


「動物と判断した場合、第3ロジックが発動します。

例えば【二足歩行?】【四足歩行?】

これで、四足歩行の場合は無視


二足歩行の場合は、【人間・霊長類・トカゲ・カンガルー・クマ等】が該当

尻尾の有無や、監視でホッピングなのか、歩行なのかが判別できる。」


「だから、我々のキャンプ地を監視するのか・・・」


「そうでしょうね。

キャンプ地で人間が集まってても殺せないから、

ずっと監視して、隙があるかどうか調べてるんでしょう。


なので、今後も常に動物と一緒に過ごすべきですね。

出来ればゲルには必ず1頭は繋げる対策を取るべきでしょう。

その方が、動物との距離が常に近くなります。」


「なるほど・・・・・・」


ハサルはナジの言葉で、口元を右手の親指で触りながら、床に視線を落とし考え込んだ。

部屋に重い空気が漂う。

誰も口を開かないので、ナジが口を開く。


「というわけで、月が示した動物の壁が証明されたモンゴルのキャンプ地に、

行く必要がなくなったという訳です。

なので、オレは別の場所へ調査に行こうと思うんです。」


ナジはそう言って口角を上げた。

ハサルが頭を上げてナジを見る。


「そう言う理由であれば、無理に引き止めることはできませんね。」


「次はどこへ?」


ガンバヤルが尋ねた。

ナジの顔から笑みが消え、真剣な顔に変わる。


「・・・中国を調査したいと思っている。」


「えっ!? そ、それは危険すぎませんか?」


ハサルはナジの言葉に動揺し、額に汗を滲ませた。

その様子にガンバヤルが不思議な顔をする。


「中国は・・・そんなに危険なの?」


中国情報はキャンプ地では幹部クラスは知っていたが、一般には情報を流していなかった。

その為、ガンバヤルは中国のことをよくわかっていない。


「中国は、壊滅したと言われている。」


「えっ!?」


ナジの言葉にガンバヤルは目を見開き驚いた。


「世界で一番、オートメーション化されていた工場が多かったのは中国なんだ。

多くの死神が発生したと予測されている。

あと、最先端のEVカーが多かったのが・・・中国だ。」


ガンバヤルの背中に冷たい汗が流れた。


「国が・・・なくなったってこと?」


ガンバヤルが二人を見る。

ハサルは険しい表情で目をつぶっている。

ナジは腕を組むと、口を一文字にして頷いた。


「モンゴルには中国からの避難民は居ませんか?

中国の情報が欲しい。」


ナジがハサルに尋ねた。


「いなくはないです。

ただ、国境付近の地方都市や田舎町からの避難民です。

もともと中国人とモンゴル人は色々とあったんで仲良くないですしね・・・

モンゴルに逃げるより、国内の山奥へ逃げてるような気がします。」


ハサルの答えに、腕を組んで考えこむ。


「・・・どこを目指すか・・・悩むところだな・・・」


ナジはバッグの中から地図を取り出し、ベッドに広げた。

ハサルとガンバヤルも珍しそうにのぞき込む。

そして、GPSを取り出して位置を確認する。


「え? GPSが使えるんですか?」


ハサルが驚く。


「ふつうに使えますよ。

ドローンが行動するのに必要なんでしょう。

GPS衛星は、今でも全部正常に動作してます。」


「スマホは使えますか?」


「緯度経度表示するアプリを入れてれば・・・動くでしょうけど・・・

ネットにつなげるのは危険ですからね・・・」


「ですよね・・・」


そう言って、ハサルはがっくりと肩を落とした。


ナジはGPS機器が示す緯度と経度を地図に落とし込む。

今いる場所から伸びる道路を東へとたどる。

ルン郡を抜け、ウランバートルに道路は続いていた。


「とりあえず、ウランバートルか・・・大体200キロってところか・・・」


「ウ、ウランバートルはダメだ! あそこは死神がやってきた都市だ!

チンギス・ハーン空港から飛び立った航空機も次々と落ちたような場所だ!」


ハサルが必死な形相で、訴えてきた。

ナジは、ハサルに手のひらを広げて、言葉を遮った。


「その死神が来てから、だれかウランバートルに行きましたか?」


「いや、我々はウランバートルから逃げるように西に向かっている!

破壊された、ウランバートルから逃げてきた避難民も多数いる!」


ナジは「フゥ~」と息を吐いた。


「少し落ち着いて、オレの話を聞いてくれますか・・・?」


ナジは興奮しているハサルが落ち着くように、静かな声で話した。


「どうです?」


再度尋ねると、乗り出した体をベッドへ戻し、

腰を下ろすと背を伸ばし、太ももの間で指を組んだ。

それを見て、ナジが説明を続ける。


「一度襲われたからと言って、たった一人に対して死神はありえません。

次に死神が来るとしたら、ウランバートルに人が集まった場合だけです。

なので、今ウランバートルは破壊された残骸と、動かなくなった死神があるだけです。」


ハサルは目をパチパチさせ、「は?」という顔をした。

その様子を見て、ナジが続ける。


「ウランバートルが死神に現れたと言われてますが、

ケーブルタイプの死神以外は、必ず電池切れで停止します。」


「確かに、襲ってきた死神は“停止した”と避難民が言ってましたね・・・」


「テイデ天文台やハシラビードなどのキャンプ地を、死神が襲った事案を知ってますか?」


「世界中のキャンプ地に、次々と死神が現れているってのは、

モンゴルのキャンプ地でも議題に出てますが・・・特定のキャンプ地の情報はないですね。」


「そのキャンプ地は、多少は移動や分散はしたとしても、今も存在するってのは?」


ハサルは目を細め、戸惑うように目を左右に動かす。


「その情報は知らない・・・な・・・」


「つまり、NOBUNAGAは死神の運用には限界があるんです。」


「限界・・・・・・」


「そう、限界です。

どの国にも軍事規模ってあるでしょう?

死神に関しても無限ではないんです。」


ハサルがガンバヤルに顔を向ける。

ガンバヤルがその視線に気づき、ハサルを見る。


「なに?」


「いや、お前たちを襲ったドローンは1機だけだったなと思ってな・・・」


「ドローン・・・」


ガンバヤルは手を口に当て、いままで遭遇してきたドローンのことを思い出す。

顔をナジに向けて尋ねる。


「もしかして・・・死神とドローンは別ロジックなんですか?」


ナジがにやりと笑う。


「よく気づいたな。」


その言葉にハサルが“えっ”という顔をした。

そして、ガンバヤルの言葉の意味を考える。


「そうだ。 死神は人間を殺すもの。

死神ドローンは監視と最低限の攻撃を担っている。」


ハサルは理解できず、左手を額に当て、右手を開いてナジに向ける。


「ちょ、ちょっと待って・・・頭が追い付きません・・・

死神とドローンが違うって・・・ロジックが?」


ナジは少し笑いながら、話を戻す。


「最初のロジックがあったでしょう?

第1ロジックから第3まで」


ハサルが頷く。


「つまり、そのロジックは、現在のドローンのロジックです。」


ガンバヤルが首をかしげて尋ねる。


「現在?」


ハサルはガンバヤルの問いに、視線を向ける。


「ああ、現在だ・・・いずれ変化するだろうってことだ。

今はその話はいい。


話を戻すと、ドローンのロジックが第1~第3ロジックで動いています。

つまり、監視。 ドローンはNOBUNAGAの目であり耳です。」


「目・・・?」


「そう。 そして、死神がNOBUNAGAの手足です。


ドローンは当初小型でした。

高速移動と移動可能距離だけを追求し、攻撃方法は自爆。


ですが、ドローンはもともと戦争道具として存在していたため、

人類が対策案を持っており、破壊が容易だった。


その為、NOBUNAGAはドローンを大型化。

そして、自爆ではなくレーザー装置を装備しました。」


「それが、僕とバヤルを・・・」


ナジはコクリと頷く。


「だが、レーザーを搭載したことにより、弱点ができた。」


「弱点?

あれのどこに弱点が?」


ハサルが怒るように自分の足を叩いて尋ねた。


「レーザーを撃つと、ドローンの稼働時間が落ちるんだろう。

人間を殺すためのレーザーだが、10発程度が限界・・・撃ったあとは、すぐに帰投してるので間違いない。」


「・・・・・・え? それはどうやって調べたんです?」


ハサルは背中に冷たいものが流れた。

ナジの口から出てくる言葉がわかっていたからだ。


「そりゃ、観察していたからだが?」


「人が殺されるところを?」


ハサルの顔に怒りが見えた。

ナジは気づいたが、構わず答える。


「・・・まあ、そう言うことだな。」


ハサルは勢いよく立ち上がる。

拳を握りしめ怒鳴った。


「あんた、ソレでも人間か!!」


ガンバヤルが驚いてハサルを見る。

ハサルは「フーッ!フーッ!」と息を荒らげていた。


ナジは目の前にある握りしめられた拳を見つめる。

目を伏せ、口を開いた。


「誰かがやらなきゃならんことさ・・・

オレがやらなきゃ、あんたがやらなきゃならんかも知れない。」


バキャッ!!


ハサルはナジを殴り飛ばした。

ナジの体は、ベッドへ崩れ落ち。

鉄パイプ製のフレームがギシギシと軋む。


「ふざけるな! オレはそんなことはやらん!」


ガンバヤルが慌てて、ハサルの体を両手で抑える。


「何やってんですか!?」


「止めるな! ガンバヤル!」


「クックックッ・・・」


ナジは笑いながら両手を使って体を起こしていく。

ベッドに座りなおし、切れた唇から流れ落ちる血を手の甲で拭うと、頬に血が掠れて延びていた。


「オマエらはいいよな。 動物に守られてさ。

だが、動物と共にいない人たちはどうする?

オマエらが生き残った全員を迎えに行くのか?」


「そっ・・・」


「行けないだろ?

だから、オレのような研究者が、

全員が助かるための糸口を見つけるのさ。」


切れた口から再び、血が滴り床にポトリと落ちる。

ナジは口をもごもごさせて、血のにじむ唾を床に吐く。


ぶっ!!


コン! コン! ココン!……

折れた奥歯が床で何度か弾み、転がった。


再び口を手の甲で拭う。


「オマエらのキャンプ地は、被害者が出てないから綺麗ごとしか言えない!

いいか! オレたちが生きるこの世界は!

今この時! 誰かが殺されてる世界なんだ!


守ってもらうだけの、オマエらの生ぬるい世界じゃないんだよ!」


ナジは血の付いた手で、ハサルを指さす。


「モンゴル民族が守ってもらうだけだと・・・!?」


ハサルの顔が真っ赤になる。

遊牧民としての強さを否定されたようで、怒りが顔にあふれる。


「うぅ~~~~っ・・・!」


体をひねり、ガンバヤルを振りほどこうとする。

ガンバヤルは必死にハサルを抑え込み、ナジに大きな声をむける。


「ナジさんもっ! これ以上煽らないでください!

ハサルも落ち着いて! 敵は人間同士じゃないでしょ!?」


「!!」


ガンバヤルの言葉にハサルがハッとする。

しかし、自分たちを否定するナジを許すことはできなかった。


「オレは作業に戻る!!」


バターン!!


ドアが壊れるほどの音を響かせ、ハサルは部屋を出て行った。


「・・・・・・・・・。」


二人はそのドアを見つめた。


ガンバヤルが“ふ~っ”と大きなため息をつく。

そして、顔をナジに向ける。


「なんであんなことを言うんですか?

遊牧民族ならみんな怒りますよ。 ヘタすりゃ半殺しです。」


ナジはバッグからガーゼを取り出すと、歯の抜けた穴に被せて強く噛む。

そして、ベッドに背中から倒れ込む。


「大丈夫ですか?」


ナジは天井を見ながら、口をあまり動かさない様にボソボソとしゃべりだす。


「・・・ボコボコにして貰いたかったかもな・・・」


「え?」


ナジの言葉にガンバヤルが驚く。


「たくさんの人たちを見捨てた・・・ハサルの言うとおりさ・・・

使命感はある・・・だからと言って、人の命は軽くはないよな・・・?」


命を救われた者として、その問いは重かった。


「は、はい・・・・・・わかります・・・・・・」


ギシ…


ガンバヤルは力なくベッドに腰かけて、床を見つめた。


「なあ、少年・・・」


ナジの言葉に顔を上げる。


「伝言を頼む・・・だれでもいい。

オレのロジックのこと・・・

そして、動物に守られてるだけでは、打開策にはならないと・・・


人類圏は一つにまとまらないといけない・・・

集まれる方法を見つけなきゃならないと・・・」


「ナジさん、それ・・・自分で・・・」


ガンバヤルはそれ以上なにも言えなかった。


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