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N.M.― 起源分岐戦争  作者: ブラックななこ
死神(過去編)

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静寂を離れる日

――― 月面基地・第1発着場


月基地の発着場は、シャックルトン基地からクレーターの縁沿い、約2キロ離れた位置に設置されている。

レゴリスを固めた床が敷き詰められ、周囲にはブラストディフェンスが設置されていた。

ルナ・ホークは、その床の上に着陸アームで立っていた。


その周囲では、床のレゴリスを清掃するためのローバーが、自動で掃除を続けている。


そこに、帰還クルーを乗せた加圧ローバーが2台、リムロードを時速20キロの速度で発着場へとやってくる。

その後ろに、月面バギーに乗った整備クルー達が、2台ほどついてきていた。


――― 加圧ローバー内


帰還クルーが小さな窓から外を覗き込み、ルナ・ホークを見つめる。


「キャプテン! 発着場が近づいてきましたよ。」


リードの方を振り返って伝えた。

だが、リードは気づかない。


「キャプテン!」


クルーが、再度呼んだ。

リードはビクッと反応して、クルーの方を見る。


「よ、呼んだか?」


「はい、キャプテン! 発着場が近づいたと報告を・・・」


「キャプテン呼びに慣れんとな・・・」


リードは頭を掻きながらつぶやいた。

そして、窓を覗き込む。

ルナ・ホークの上部はもう見上げる程まで近づいていた。


「整備した船を、こうして見上げることになるとは・・・」


「リード、そろそろつくぞ。」


加圧ローバーを運転していたミラーが腕を組みながら声をかけた。

ミラーは希望してローバーの運転手となっていた。


「見送りすまんな。」


リードはミラーの肩に手を置いた。

ミラーは腕を組んだまま視線をパネルへ戻す。

ジョイスティックは勝手に動き、パネルには走行ラインが表示されていた。


ミラーは、組んでいた腕を解くと、両手を広げる。


「オレも乗ってるだけだがな。」


そう言って笑う。

ローバーが停止位置にゆっくりと止まる。


ギシ、ギシッ!


少しだけ車体から軋み音が響くと、停止の慣性でリードとミラーの体がかすかにぶれる。

ワイヤーで組まれたタイヤから、レゴリスがパラパラと路面に落ちた。


リードは振り返って、クルー達を見る。


「さあ、着替えの時間だぞ!」


手をパンパンと叩き、指示を出す。

座席に座っていたクルーが立ち上がり、スーツポートへと入っていく。


「ミラー! 2号車にスーツに着替えるよう指示を出してくれ。」

「わかったー!」


スーツポートは宇宙服のバックパックがローバーの外壁に「背中合わせ」にドッキングされており、縦1メートル、横60センチの四角い穴が開いてバックパックの背面がスーツポート内に跳ねあがっていた。

クルーはその穴に足から滑り込み、体を少し斜めにしながら両手と頭をスーツへと入れた。


「ハッチ・クローズ」


そう言うと、スーツが音声認識して、スーツポート内のディスプレイに『ハッチ・クローズ』と表示され、スーツポート内のドアがドッキングしたバックパックのドアを閉めていく。


ウィー……ン、カチリ!


ドアのモーターが自動で閉まり、ロック機構の音がした。


「スーツ・リリース」


スーツが再び命令を認識し、HUDに『リリース』が赤く表示される。


キュイー……ン!


ロック機構が回転するモーター音がスーツ内に響く。


バン!バン!バン!バン!


最終ロックが外れる音が響き、HUDの『リリース』の文字が緑に変わる。

そして、ローバーの外壁に接続されていたスーツが立ち上がって、左右を確認し、ローバーの段差から月面に降りる。


リードはスーツポートに入る前に振り返ってミラーを見る。


「ミラー! 地球で待ってるぞ!」


ミラーは運転席で計器をチェック中だったが、立ち上がり腰を捻って振り返る。

リードの顔を見る。


「焦るなよ。 待ってるぞ!」


ミラーは頷き、親指を立てて突き出した。

リードは笑いながらスーツポートに入って、スーツポートのドアを閉めた。


―――


搭乗8名と、後ろからついてきていたバギーのサポート4名がルナ・ホークの搭乗エレベーターへ近づいていく。


エレベーターの所で、サポートの整備クルーが搭乗クルーにエアを軽くかけていく。

清掃ローダーのおかげで、発着場のレゴリスは99%以上除去されているが、念の為の作業だった。


そして、帰還するクルーがエレベーターで上昇していく。

整備クルーが手を振って見送る。

加圧ローバー内のミラーは、その様子を膝に両肘を置き、顎を手で支えつつ見つめていた。


「リード・・・・・・オレが行くまで、無理はするなよ・・・」


そう言って、ミラーはピースサインを額に当てた。


帰還クルーが船内に入ると、ローダーとバギーはレゴリスの飛散に備え、基地へと戻っていく。


宇宙服を脱いだクルー達が、続々とルナ・ホークの客席室へと入ってくる。

ルナ・ホークは1回の輸送で、最大50人を想定した設計だった。

その為、今回の搭乗員は好きな場所に適当に座っていく。


リードはサポートのクルーと一緒にルナ・ホークの操縦席に座り、チェック項目を一つずつ消化していく。

ルナ・ホークの全チェック項目を終える頃には、1時間近くかかっていた。


「こちら、ルナ・ホーク。

チェック項目オールグリーン! 基地側はどうですか?」


リードはモニターに目を配りながら、ヘッドセットのマイクに指をかけ話しかけた。


「こちらシャックルトン基地。 ローバーとバギーの退避は完了。

アーク7の通過に合わせた発進ウィンドウまで、あと30秒。」


相手はケンだった。


「ケンッ! ありがとう!


シャックルトン! 長い時間、世話になった!


残るクルーのみんなも頑張れよ!

次会えるのは、いつになるかわからんが、これからいつも見上げてるからな!」


基地内のスピーカーに、リードの声が響く。

クルーたちが、基地内のモニターに表示されているルナ・ホークを見つめていた。


「ウィンドウ来ます。 5、4、3、2、1、イグニッション!」


次の瞬間、床の奥底から胃を揺さぶるような低周波の振動が這い上がってきた。


真空の静寂を切り裂き、船体下部から純青色のプラズマが噴出する。

重力に抗う100トンの鋼鉄が、ゆっくりと、だが確実に月面から離れていく。


ルナ・ホークはこの後、アーク7とドッキングしたあと、NRHOを周回して帰還タイミングを調整して、地球へと向かった。


地球帰還まであと5日。


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