第十七話 「古式魔法」
作中の魔法の設定に対する説明回。
エタメモの魔法はかなり複雑な設定にしており世界観にもガッツリ食い込んでいるので上手く説明できればと思います。
追記
描写し忘れていた部分を付けたしました。
歩くこと暫く、グレイスとファランクスの二人は北門の直ぐ近くまで来ていた。
本来であればこのまま門を通って大王都の外へと出る予定であったが問題が発生している。
教会騎士たちが魔法による隠蔽を無効化するマジックアイテムを持ち出しての厳重な検問を行っていたのだ。
その為グレイスは相変わらず簀巻きで丸太に偽装されたままのファランクスを担ぎながら近くへの路地裏へと身を隠していた。
「不味ぃな、よりにもよって古式魔法製のマジックアイテムかよ。街中でも結構見かけたが、使い手は少なそうなのに道具は広まってるとかどうなってんだ?」
しかめっ面で吐き捨てながら、忌々し気に教会騎士たちを睨むグレイス。
小さな独白ではあったが至近距離の為言葉の内容が聞き取れたファランクスは、聞き覚えの無い単語が気になって質問する。
「……なぁ、その『メタリアルクラフト』? ってのは何なんだよ」
「知らんのかファランクス、お前ぇの知り合いの白装束だって使ってただろ?」
「いや、だから俺はこの世界の事は良く知らないんだって。白装束ってリューセンの事か?」
「ああ、そのリューセンって奴だよ。マジかこいつ、あんな見るからにヤベェ術師の知り合いのくせして知らねぇとか……」
呆れたような半眼でダメな奴を見る目を向けるグレイス。
実際知らないから仕方ないのだが、それはそれとして腹立つとファランクスは思った。
「悪かったな何も知らなくて! そう言うのはリューセンに色々教えて貰う予定だったんだよ!」
「あん? 事情通かなんかか? あの白装束」
怪訝そうなグレイスの問いに一瞬応えようかどうか迷ったファランクスだったが、そもそもリューセンとは今日出会ってから半日も経っていない為、大した事は知らないのを思い出す。
また、明らかに教会側から追われているグレイスに、リューセンが聖天教に爆弾を投げ込むくらい敵対的である事を伝えれば、もしかしたら自主するかもと考え知っている事をそのまま伝える事にした。
「旅の考古学者だってさ、世界各地を回ってて色々詳しかったよ。それと、冒険者ギルドとは仲いいみたいだけど聖天教の事すごく嫌ってた。歴史を破壊し、改竄し、冒涜した詐欺師集団だーって。後、爆弾を直接投げ込んだりもしてたな」
「……へぇーぇ?」
ファランクスの返答を聞いて、何やら思案顔となり俯くグレイス。
上手くいったか? と、ファランクスが観察しているとグレイスは何かに納得した様子で顔を上げた。
「――うん、そうだな。しゃあねぇ、どの道しばらく様子見するしかねぇし、その間にオレ様がそのリューセンとやらに代って直々に教えてやるよ。ありがたく思えよな!」
「いや、捕まってる状態でありがたく思うとかありえないんだが?」
「ありがたく思えよな!」
「押し切ろうとすんなし」
わざとらしく「どっこいしょ」と言いながら簀巻きのファランクスを路地裏の壁に立てかけると、自身も壁に背を預けながらつらつらと語り出した。
「いいか? 古式魔法ってのはオレ様の師匠、旧世界時代から生きる大賢者『ジェリー・スピークス』の開発した魔法大系で、開発当時は『スピークス式新魔法理論』って呼ばれてたらしい。ま、開発されたのが昔過ぎてオレ様の生まれた時代じゃ既に文字通りの古式魔法扱いだったがな」
「へぇ……って、旧世界の情報って大体教会に破壊されたんじゃなかったっけ?」
「そこは知ってんか? まぁ、オレ様の場合は生き証人の師匠に直接聞いたからな、千年前でも旧世界の事を知ってる奴はほとんど居なかったよ」
中央大陸以外にはまだ文献やら言い伝えやらが残ってたらしいが、今はどうなっている事やら。
そう言ってグレイスは路地裏の合間から見える空を見上げた。
ファランクスにはそれが何かを思い出しているように、同時に強い悲しみを抱いているように感じられた。
「っと、話が逸れたな。古式魔法についてはどこまで話したっけか?」
「大賢者って人が開発したって事と、その人がお前の師匠だって事しか話してないな」
「おう、そうだったそうだった。でぇ、古式魔法を具体的に説明する前に確認しとくがファランクス、お前ぇは魔法を覚えてるか?」
「見ての通りジョブは戦士系何でな、一番最初の攻撃アーツくらいしか覚えて無いよ」
「思った以上に雑魚だなお前ぇ……」
「ほっとけ! その内レベル上げして強くなるよ!」
死にかけの蝉でも見る様な目つきでファランクスを見るグレイス。
ファランクスとしてはもっと強く抗議したかったが、悲しいかな自分がレベル一の雑魚だという自覚もあるのでそれ以上は何も言えなかった。
「ま、古式魔法はジョブなんぞ関係無く覚えられるからお前ぇもその内魔法が使えるようになるかもだししょげんなよ!」
「しょげて無いわ!」
「それに……レベルなんざその内意味が無くなるしな」
「? それってどういう……」
「ま、詳しくはリューセンとやら聞け、古式魔法のレッスンをしてやる時間は無ぇからな」
そう言うとグレイスはファランクスの目の前で注目を集める様にピッと指を立てた。
「いいか、古式魔法ってのはお前ぇも使ってる『補助機構術式』の大本にある技術だ。この世界の存在は微生物から無機物の石っころまで全部ステータスを持ってるが、それを与える術式を作ったのは師匠だ」
「なっ!? それってどういう「良いから聞け!」」
グレイスはファランクスからの返答も遮って一気に話を続ける。
それは、ファランクスの知らないこの世界の真実の一端であり、何となくそれを感じ取ったが為にファランクスは大人しく話の続きを聞く事とした。
「判るか? 術師系統のジョブが使う魔法ってのは、補助機構術式って言う巨大かつ多機能な魔法の一機能であり、それを使っている内は本当の意味での術師とは言えないんだよ。古式魔法の使い手こそ本当の魔法使いなんだ。お前ぇの知る中じゃ、目の前のオレ様とリューセンとか言う奴がそうだな。術師系ジョブの魔法は最初から設定された画一的なもんしかねぇが、俺たち古式魔法の使い手はその限りじゃない。その場で即興で自由に魔法を作る事も出来るんだ、こんな風にな」
パチンッ、とグレイスは立てていた指を指パッチンの形にして鳴らす。
するとグレイスの指先に蠟燭の火の様な小さな火が灯り、それが渦巻くように形を変えて犬や猫、鳥や馬など様々な動物の形を次々に取った。
「指を鳴らして火を灯す。こいつは古式魔法の基本であり入門なんだ。魔力の感知が出来ないお前ぇには良く判らんだろうが、今オレ様はこの火の魔法を使うのにオレ様自身の魔力は一滴たりとも使って無い。『指を鳴らした時に発生する音と摩擦熱を魔力に変換して火の魔法を発動させた』んだ」
「ハァ!?」
その突拍子も無い発言に今まで黙って聞いて居たファランクスが思わず声を上げて驚く。
当然だろう、システムに寄らない魔法だというだけでも驚きだというのに、その内容が音と摩擦熱を魔力に変換してという訳の判らないものだったのだから。
ファランクスの反応に昔を懐かしむように笑うグレイスは、そのまま説明を続けた。
「ま、そうなるよな。オレ様も師匠に最初説明された時はそうなったよ」
「いやだって、えぇ? 音と摩擦熱を変換って、それこそ魔法じゃないのか?」
「違うんだなぁ、これが。概要は説明してやるから大人しく聞いてろよ」
日が徐々に傾き空が茜色に染まって行く。
検問を続ける教会騎士の数は未だ減らず、グレイスによる魔法の講義は今しばらく続くようであった。
『古式魔法』
千年前当時の『スピークス式新魔法理論』の呼び名。
プレイヤーがステータスシステムはこの古式魔法によって生み出された大魔法『補助機構術式』であり、古式魔法の使い手はステータスシステムの枠に縛られない魔法を行使することが出来る。
物凄くざっくり言うとステータスシステムに頼った魔法使いジョブは『コンビニ弁当派』であり、古式魔法の使い手は『自炊派』。
音や摩擦熱を魔力に変換する技術についてはまた次回。




