第十五話 「丸太は持ったか!?」
前回の『ポロローグ』は強敵でしたねぇ(前話前書きの誤字)。
指はバグるし変換もバグる、誤字脱字からは逃れられないのだ。
後、新作で『転生・竹取物語』ってのを投稿しました。
「竹取物語のお爺さんに神様チート付きで転生したら」って思い付きで一気に書き上げたものです。
続きは未定、ただ十話以内に完結する予定です。
「確かこっちに曲がったはず!」
そう口にしながら慌ただしく路地裏へと突撃するファランクス。
持ち前の直感でリューセンの白布らしきアイテムを持つ人影を見付けた彼は、その正体を確かめるためすぐさま後を追って路地裏へと飛び込んだ。
しかし、
「居ないだって?」
つい先ほど人影が曲がったはずの路地裏、その先には誰も居なかった。
これが更に別の角を曲がったのであれば説明が付くが曲がり角の先は分岐の無い一本道で、しかもそれほど長くない先で行き止まりとなっている。
これは明らかにおかしかった。
「どういうことだ? 扉も無ければマンホールも無いし、上に跳んで逃げたのか?」
周囲の状況からそう考察して行き止まりの壁の上へと視線を向ける。
すると再び自身の直感が放つ音色が脳裏に響き、咄嗟にファランクスは後ろを振り向こうとした。
「っ「勘は良いみてぇだが遅ぇな? 余計な事に首突っ込むと寿命が縮むぜ赤髪」!?」
鈴の音の様な美しい、それでいて粗野でぶっきら棒な言葉が聞こえる。
気付けばファランクスはうつ伏せで地面に倒れ、そのまま背中を踏みつけられていた。
若干混乱しつつもファランクスはすぐさま立ち上がろうとするが、自身を踏みつける足は踏み潰すような圧力は無いもののまるで岩の様に微動だにしない。
何とか首を捻って自分を踏みつける相手の姿を視界に収めるファランクス。
そこには先ほどリューセンらに追いかけられて逃げて行ったはずの少女の姿があった。
ただし、先ほど見た少女が無言、無表情であったのに対し、今ファランクスを踏みつける少女は外見こそ瓜二つだがはすっぱな雰囲気を纏い悪童のような表情を浮かべている為別人のように感じられる。
だが、至近距離で直接相手を見た事で、ファランクスの優れた直感はより正確な答えを導き出していた。
「――さっきのアレは偽物だったのか!」
「お、やっぱ勘が良いな。弱い割にさっき『幻像体』を追いかけてった連中より見る目があるんじゃねぇか?」
特に隠すつもりも無いらしい少女は、そう言ってケラケラと笑っている。
『幻像体』と言うのが何かは知らないが、語感から分身の様な物だとファランクスは理解した。
つまりリューセンたちは、まんまとこの少女が用意した囮に引っかかったと言う訳だ。
「カッハッハ! ……まぁアレに引っかかってくれたのは正直助かったぜ。あんなヤバそうな連中まともに相手したくねぇからな」
「え?」
そう言って笑いながらも冷や汗を流す少女に驚くファランクス。
ファランクスは最初、少女のその尊大な態度からあっさり騙されてしまったリューセンたちを馬鹿にしているのかと思ったが、どうやらそうでは無いらしい。
寧ろ少女は、リューセンたちをかなり警戒しているようだった。
「『補助機構術式』に頼らない『古式魔法』の使い手なんざ今の時代ほとんど居ないと思ってたんだがなぁ……」
「?」
そう呟く少女だったが、固有名詞の意味が判らないファランクスとしては疑問符を浮かべる他無い。
ともかく何とかしてリューセンに連絡をせねばと考えるファランクス。
メニュー画面からフレンドへメッセージを飛ばそうと考えたが、そこで自分がシステムメニューを開けない事に気が付いた。
「っ! メニューが開けない!?」
「ん? あー、お前ぇ補助機構術式なら封印させて貰ったぜ? さっきの連中を呼ばれたら今度は流石に逃げられなさそうだからな」
驚愕するファランクスにそう言い捨てた少女はファランクスの背を踏みつけていた足を退けると、手に持った白布を振るう。
すると白布は意思を持つかのように伸びてファランクスの体へと巻き付き、あっという間にファランクスの体を簀巻き状態にしてしまった。
「ムー!? ムーッ!!」
「よっと、やっぱ便利だなこの布。流石に着の身着のままじゃ心許無かったし、借りといて良かったぜ」
全身をぐるぐる巻きにされ必死に藻掻くファランクスだったが、白布は布地とは思えない硬度でファランクスを拘束しておりビクともしない。
呻き声が聞こえる以外は単なる棒状の荷物にしか見えなくなったファランクスを見た目にそぐわない膂力で肩に担いだ少女は、続けてパチンと指を鳴らす。
するとファランクスの呻き声が聞こえなくなり、少女の姿が『丸太を担いだファランクスの姿』へと一瞬で変化した。
「あー、あー……っし、声はこんなもんか? んじゃ、悪ぃが街の外まで付き合って貰うぜぇ赤髪?」
魔法なのか声帯模写なのか、ファランクスそっくりの声となった少女は丸太に姿を変えられたファランクスにそう声を掛けると、大聖堂とは反対方向の通りへと歩み出した。
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一方その頃。
「捕まえたぞ! って幻影だと!? バカなっ! 情報偽装を掛けた実体のある幻影なんて、プレイヤー以外で現代の魔法使いが使える訳っ!?」
「――あっ、リュー先生じゃん! ヤッハロー、殺し合おうぜぇ?」
「ッ、普段なら大歓迎だが今だけは来て欲しくなかったよ。『レオンハルト・ビスタチオ・エレイン』!」
「やだなぁー、ボクの事は『エレイン』って呼んでよ。フルネームだと可愛く無いじゃん!」
「……自分で決めたプレイヤーネームじゃないのかい?」
「問答無用! 『軍神の弾幕』、装填!!」
「チィッ! 『戦闘起動・星の鏃』! 八連速射っ!!」
Q、何で丸太?
A、布泥棒ちゃんはとある理由から現代の知識が偏っている為、現代には丸太をメイン武器にするのが流行ってると思ってるから。
「レオンハルト・ビスタチオ・エレイン」
名前に見覚えのある月の聖杯戦争経験者は作者と握手。
ビジュアルとしては大弓をメイン武器にするウェディングドレス姿の男の娘で、見た目から色物ですが対人勢上位のプレイヤーです。
リューセン含め、対人勢でも上の方のプレイヤーは目と目が合ったら即バトルが基本なのでエンカウントイコールデュエルという文化を持ってます。(ざっくり言って全員蛮族)
なのでリューセンも、メイン装備盗まれた状況じゃ無ければ喜んで戦ってましたし、盗まれたと言っても取り戻す当てがない訳じゃない為何だかんだ正面から応戦しました。