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<自撰>新染因循詩集  作者: 新染 因循
2015年
27/37

没後(拝啓、0) (死歌 より)

誰しもが地平を恐れている。その先の、奈落が恐ろしいからだ。それは、あるいは安堵ゆえかもしれない。闇へ回帰することを肯定する、その思考自体に恐怖を抱いている。けれど実際にヒトは眠り、意識と肉体は平行すなわち一種の地平という溝を生み出し、その狭間を揺蕩う我々は()()に安心はすれど恐怖しない。

2-1=1,1-1=0,3-2=1,2-2=0,4-3=1,3-3=0,……古来よりヒトは比較あるいは凹凸で0を認識してきた。間接的にのみ存在を証明するのは一種、ホモ・サピエンス種の知の限界を如実に頑なに示している。つまり―――0それ自体を知ることが出来ないという意思表示であり、そしてこれこそが我々に0すなわち虚無への言いしれぬ恐ろしさを抱かせていて、死は0である。ヒトは、理解できぬ事を恐れている。Q.E.F.(……)

石鹸の泡のように、人の一生に為した行為と意義は消え失せる。努力も後悔も嫉妬も保身も惰性も憤怒も慈愛も貢献も、全てが0に呑まれる―――地平に至る。量子力学に裏付けされた化学反応と電気信号による、生命と定義された活動が鼓動とともに時の随に溶け込んだとき、ようやく全てが無意味になり、これこそが死ぬということ。そこに彼岸は無く、神はいない。Q.E.D.(……?)

だが、これはまったく予想だにしなかったことだが―――時流は()()()()()()。引き延ばされ(てい)る。電気信号の()()(愚鈍な思考や痛み)が無限に、そう、無限に引き延ばされ、私はそこに囚われている! 0.0()2のところで、私は減少を止めてしまい、もやは抜け殻に極限に近似した私に、けれど0は何も語らない。Memento mori! そう! これこそが0であると知ったとき、私は真に死という絶望を知り、神という救いを求めたのだった!

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