0.創成期からの言伝
辺り一面に広がる蒼。積雲を浮かべた縹色の空。細やかに涙を遊ばせ瑠璃色に透き通る海。岸上に立つ黄金の髪が爽風に靡く。状景を映す涅色の瞳は、輝いていたーーー
この世の万物は、摂理に従い存在する。自らの性質や環境に応じて法則が設けられ、その恩恵、弊害を互いに享受している。
起こり得る事象には特定の原因があり、生命は歳月を経る為に相応の命を食う。世界に存在する"すべて"に解明し得る理由がある。
しかし基盤とされるその法則は、絶対ではない。元来の自然法則を無視した不思議な力、それに引き起こされた現象を人々は『未知なる贈り物』と呼んだ。
この世界 の生物は大きく四種に分けられる。植物、動物、霊物、そして人間。
その内、意志を持たない生物、植物は他の三種と中立関係にあった。他の種の争いに干渉せず、その何れとも相互関係を保った。そして残りの動物、霊物、人間の三種はこの順に三竦みの関係を持っていた。
霊物は"ドヌムを司るもの"と信じられ、その存在自体が人の持つ知識では解析出来得るものではなかった。揃って黒い影のような体と、煌光の漏れだす双眼のように空いた孔をもつが体長や形体、起こす現象は様々である。不可解な自然現象の多くが霊物の所業であり、主に災いを齎した。また人を見取るとそれを襲ったが、未知の能力を扱えない人間に抵抗の術はなかった。霊物は人間の天敵であった。
対して、動物は"ドヌムを操るもの"と言われ、種族特有の未知の能力を生み出す事が習性化されている。動物は先天的に霊物への抵抗能力があり、余程の格差がない限り退ける事ができる。人間に対しては従順で友好的であり、人間は動物の習性を活用して豊かな生活を営んだ。
そして極稀に人間の中に未知の能力を引き起こすものが現れた。それらは『贈られた者』と呼ばれ、個々に寄り多種多様の能力を有した。ドーニウスと化するための条件は謎であったが、先天的なドーニウス『神より賜りし者』の多くは先人から継承された遺伝的なものであった。
贈られた者の持つ能力は人世に利便と喜楽を寄与し、活動の幅を広げさせた。何より未知の能力を有する者は霊物を退けた。その為、人口の凡そ一万人に一人しか存在しない『贈られた者』を人々は賞賛し敬愛し、崇拝した。
我々は無量の霊物が棲み付く未踏の地を人間の領域と化する事に成功した。広大な円状に広がるこの大地を、人々が安寧の日々を送り、集える事を願って『 調 和 』と名付ける。




