特別なお客さん?
「お勘定頼む」
梅さんは、お客さんのところに行って、値段を告げ、お金をもらっている。
竹子さんが、
「武田さんは、しばらくお勘定はいいわ。慣れないうちは注文とりと料理を運ぶのをやってもらえれば。あと後片付けね」
「はい!」
私は元気よく答える。
まだ羅来国のお金にも慣れてないから、その配慮に助かる。
あ、月白さん、おにぎりもう二個目食べてる。
美味しそうに食べるなあ。見ているこっちまで幸せになってくる。
「お勘定を……」
「武田さん、後片付けお願い!」
梅さんに、言われ、私は布巾を持って、お客さんが食べ終わったお皿とかを取りに行く。
完食してくれた後の片づけは気持ちがいい。
(残さず食べてくれるのって嬉しい!)
月白さんも完食してくれるかな……。
月白さんが手をあげている。
私は後片付けしているので、行けない。別の給仕さんが月白さんのところに行く。
「追加で、鶏の唐揚げを二つ」
月白さん、朝から凄い食欲だな……。それだけ冒険者って過酷な仕事なんだろうな。
さて、仕事、仕事。
私は布巾でテーブルを拭いて、食器を厨房へ持っていく。
「ありがとう、武田さん」
厨房の若い男性(私よりは年齢上みたいだけど)から声を掛けられる。
「いいえ~。頑張ってください」
「お互いにね」
私は微笑みを返し、厨房を後にする。
また手が上がった。
今度は梅さんがテーブルに向かう。
「焼き鮭定食頼む」
(焼き鮭定食も人気ね。朝に焼き鮭、ちょうどいい具合の量だもんね)
梅さんは、注文を取って、竹子さんに渡していた。
「唐揚げ二つ、あがり!」
何故か私に持って行けと梅さんが言うので、私が月白さんのところへ持っていく。
「お待たせしました、唐揚げです」
「……おう」
月白さんは、おにぎりを手に持ちながら、唐揚げを口にする。
(いっぱい食べる人見てるって、気持ちがいいな)
「ではごゆっくりしてってください」
私はお辞儀をして、月白さんのところを去っていく。
「あの獣人さん、よく来てくれるお客さんだから、武田さんと仲良くなれるかも!」
梅さんが楽しそうにそう話している。
「ええ!?そうなんですか」
「武田さん以外、話しかけてるところなんて見たことないもの。みんな無口なのかなって思っていたところだったのよ」
「私にもそんなに話してはくれないですよ。おにぎりの具を教えてくれたぐらいですかね?」
すると、先輩の給仕さんたちが少し驚いている。
「そんなこと話してくれたんだ!……やっぱり武田さんだけ特別なんじゃないかな」
梅さんがそんなこと言い出す。私は、
「……そんなこと、無いと思いますけど……たまたまですよ」
と、言い返したんだけど、先輩たちの目が、どう見ても「そうじゃない」と言っている……。
「あの人、朝来ること多いから、武田さん専属にしちゃおうかしら」
梅さんは楽しそうに笑っている。他の先輩の給仕さんも笑って、梅さんの意見に賛同している。
「……別にいいですけど」
私がそう言うと、梅さんは、
「冗談よ。……でも、お客さんから好かれるって大事な事だから、いいことよ。武田さん」
と、先輩の給仕らしく私をフォローしてくれた。
「はい、わかりました!」
私は元気よく梅さんに答えた。
月白さん、唐揚げ美味しそうに食べてるな。ここで朝食を終えて、冒険者組合にいくんだよね。大変だな……。
月白さんが手をあげる。
「お勘定を頼む」
これはまだ私にはできない。梅さんがテーブルに行く。
「毎度ありがとうございます」
梅さんが言う。月白さんは、頭を下げただけで何も言わずに立ち去る。
「ほら、あの獣人さんはいつもあんな感じよ。ほとんど喋らないの。武田さんだけ違うのよ~」
先輩の給仕さんが私に言ってくる。
「……そ、そうなんですか……」
何故、私にだけ月白さんが話しかけてくれるのか、私にはわからない。
「話しやすいんですかね、私……」
「もう!!武田さん、わかってないわね~」
帰ってきた梅さんが言う。
「武田さん、天然さんなのかしら?」
先輩の給仕さんが言う。
……う。
私、よく昔から言われてきたけど、まさか羅来国でも言われるとは思わなかった。
(私、そんなに天然なのかな……?)




