乙女ゲームのような恋がしたい!
「ごめん…。君とは友達でいたいんだ」
嘘!また攻略失敗!?どんだけこいつ攻略難しいのよ!恋愛イベントもそれなりにこなしてきて、最後の最後で振ってくるって。
SNSを見る。神崎隼人…私の今攻略しているキャラの攻略みんなどうなんだろうとゲームタイトル『ひと夏の恋を君と』…略して『ヒト恋』で検索してみる。
「今回のイベントの隼人の水着姿メロい!」とか出てきた。
(え?!私水着姿見てないんだけど!?好感度足りなかった?それとも、渡すギフト間違えた?)
「はぁ…」
私はスマホに向かって盛大にため息をつく。
(男の人って難しい…ゲームの中でも相当めんどくさい)
私はテーブルに突っ伏した。
私は武田さやか。
乙女ゲームが大好きで、乙女ゲーム的な恋愛に憧れる一人だ。
「こんなにイケメンじゃなくてもいいから、こういう恋愛してみたいな~」
私は今日一日を終え、壁にかかっているカレンダーを見る。
明日は祝日で、会社はお休み。明日こそこの神崎隼人、今回のイベの水着だけでも見る!
私はそう誓って、ベッドに横になった。
次の日。私は食品の買い出しに行こうと、お昼前に部屋を出る。
今日はちょっとだけ冒険をして、いつものスーパーじゃない隣町の新しく出来たスーパーに行く。
いつものスーパーじゃないだけで、少し気分が盛り上がってくる。開店セールで私の好きなシュークリームが特売価格で売られていた。
「安いけど、日持ちしないから、二個ぐらい買ってこ」
私はスーパーの買い物かごに入れて、ぐるっとスーパーを歩く。
「パパ―のパスタ7束で150円はお得!」
私は無類のパスタ好き。毎週最低二回はパスタを食べている。うちにあったトマトソースと凍らしてあるひき肉で簡単なパスタができる。私は嬉しくなって、三つもかごに入れた。
(こんなもんかなー)
私は無人レジで買い物の清算を済ませ、家から持ってきたトートバッグに買ったものを詰め込む。今は買い物のビニール袋も有料だから、買い物する時には必ずバッグを持っていく。
私は動物好きで、トートバッグも猫の写真のモチーフが入ったアイテムだ。
残念ながら、私のアパートはペット禁止なので犬や猫が飼えない。一度ハムスターを飼ったけれど、短命すぎて、ペットロスになってしまったから、また飼うことは怖い。
「さて、帰りますか」
私はさっき来た道ではなく、少し遠回りをして帰ってみることにした。別に理由はない。ちょっとだけ冒険心が疼いたのだ。知らない道には何かあるんじゃないかと思って。
「あれ?こんなところに神社なんてあったんだ」
私は特に急ぐ用事もないので、この神社に寄ってみることにした。鳥居をくぐって、これも猫モチーフの財布から50円を出し、ふいっと投げる。
(武田さやかです。乙女ゲームのような恋愛ができますようにお願いします)
私はくるりと体を回転すると、辺りが真っ白になって道が見えない。
(え?!何、これ…!)
私の体は真っ白な光に包まれた。
(え?!これってもしかして俗に言う異世界転移?私、そういう意味でお願いしたわけじゃないんだけど!…でも、もしかしたらカッコいいイケメン王子様とか居て、恋愛イベント起こりまくりな事が待っているかも!)
ドクン。
ドクン。
期待で胸を高鳴らせながら、私は目を開いた。気づけば私は、畳の上に仰向けに寝かされていた。
そんな私を見て…神主と巫女が喜んでいた。
「転移者様、お疲れ様でした。見事、羅来国への転移が完了されました!」
神主に言われ、私は立ち上がる。
羅来国?聞いたことのない名前の国。ここは異世界――!私は嬉しくなって、そこを飛び出し、窓から外を見る。
普通に鳥居があるんだけど?あれ、石畳とか、木造の建物とか…。
え…中世ヨーロッパ風の物を期待していた私は、ショックを受ける。
(イケメン王子様と恋愛イベントもなし?)
私は先程の部屋に戻って、神主に聞いてみる。
「あのー羅来国ってどういう国なんでしょうか?」
神主は笑顔で、
「中心地は江戸で、人間だけじゃなく様々な種族が住む素敵な国ですよ」
(江戸?様々な種族?)
私の頭が追い付かない。頭の中がクエスチョンマークだらけになる。
すると、そこに一人の男性が入ってきた。
黒髪の短髪で琥珀色の瞳。鼻筋が通っていていて、見た目麗しいイケメンが和服姿で刀を帯刀していた。
「半之助、あとは転移者様の家まで護衛をお願いしますよ」
神主に半之助と呼ばれた男性は、
「御意」
と、だけ。
はんのすけ…名前も江戸時代っぽい。異世界なのに江戸だし、ここはいったい何なの?
「私、武田さやかです、よろしくお願いします」
ぺこりと彼に頭を下げた。
(ひとまず、名前ぐらいは言っておいた方がいいよね)
「私は鈴川半之助。こちらこそよろしく頼みます」
彼は表情を変えずに、私の横に着く。
「あとは半之助が案内してくれるので、転移者様は後をついて行ってください」
後ろで神主さんの声が聞こえた。
…転移者様…、か。一応そういう扱いにはなるんだ。「待ちに待っていた聖女様~っ」ていう感じではなかったけれど。
私はトートバッグを肩から下げて半之助さんについていく。
神社を出ると、町並みは完全に江戸時代そのものだった。ここって京都の太秦映画村じゃないよね?羅来国って言ってたし…。当たり前のように和服の人たちが通り過ぎていく。
「……!」
顔がまるっきり犬で人間のように歩く人?を見た。もしかして神主さんが言ってた人間以外の種族?
「…まったく、最近は魔物が多くて困るよなー」
日本語をしゃべっている!しかも言ってる内容が怖すぎるんですけど!
「あの…半之助さん…。魔物が出るって本当なのですか?」
私は聞かずにはいられなかった。
「…はい」
(そこは否定してほしかった…)
そこを耳の大きな人が歩いて行く。
「すみません、あの人は…?」
「あれは獣人です」
獣人…?さっきの犬の人と同じ感じなんだろうか。
「あら~半ちゃん今日はどこに行くの?」
やけに耳と尻尾が大きな色っぽいお姉さんが半之助さんに話しかけてきた。
(半ちゃん……。もしかして、この人って結構モテるのでは?)
「転移者様をお連れしている。これから家に向かうところだ」
その色っぽいお姉さんは、私を見て、
「ふ~ん、今回は女の子なのね。半ちゃん守りがいがあるわね」
と、言って笑って、手を振り、通り過ぎて行く。
「……どうしました?」
(この人、攻略難易度高いタイプかも……!)
「さっきの人も…」
「狐の獣人です」
「半ちゃんとか言ってましたけど…」
(そこよ、そこ!)
「あれは誰にでも馴れ馴れしいヤツです。気にしないでください」
(気にするなって言っても、気になるよ!)
「魔物は…」
「夜になると出てきます」
「こ、怖いんですけど…」
私の言葉に、半之助さんは、
「夜に出歩かなければ、問題ありません」
(そういう問題なの…?)




