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死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?  作者: わんた


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だが効果的だろ

「どうやって拘束から抜け出した?」


「そんなことどうでもいい! ヘンリエッタ! すぐに拘束しろ!」


 はっとした顔をしてから、僕を掴もうとして飛びかかってきた。


 横に転がって避けてから立ち上がるとイザベル王女が目の前に立っている。


 胸を手で押された。背中が壁に付く。


 ドンッと右耳の近くで音がした。どうやら彼女は壁に手を付けて逃げ出せないようにしたみたいだ。


 女性だけど、かっこいい顔が近づいてくる。


「どこに行こうとしたのかな?」


「おうちに帰ろうかと……ひぃ!」


 急にイザベル王女の眉間にしわが寄ったので、情けない声を出してしまった。


 主導権は完全にあっちがわだ。少しでも気に障るようなことを言ったら、殺されはしないだろうけど監禁ぐらいは容易にしてくる。その後は自由のない種馬生活だ。


 レベッタさんたちにも会えない。


 そんな未来だけはどうしても避けたかった。


「少し冷静になって考えてみたんだが……」


 絶対に嘘だ。男ほしさにおかしくなっている。けど、そんなことを指摘しても意味はないので突っ込むのはやめておいた。


「ヘンリエッタが誘拐した場面は誰も見ていない。このまま失踪しても私たちが犯人だとは分からないのだ」


「何が言いたいんですか?」


「このままイオディプス君を極秘裏にテルルエ王国へ移送させるから、私の国で幸せに暮らさないか?」


「断ります」


「君がスカーテの所へ帰って誘拐の事件がバレたら戦争になる。多くの女性が死ぬことになるが、それでも拒否するか?」


「その言い方はズルいですね」


「だが効果的だろ」


 にやっと自信満々な笑みを浮かべられてしまった。


 普段の振る舞いを観察され、性格を把握されてしまっている。僕が何を嫌がるのか分かってるという顔だ。


 実際、効果的な脅しだから嫌になっちゃうよ。


 どんなことされても女性には弱いのだ。


「否定したいところですが、確かに効果的です。僕は女性が傷つくことは、したくありません」


「だったら――」


「ですから、今回の拉致については誰にも言わないと誓いましょう。僕が迷子になったところを保護してくれた、それで丸く収めませんか?」


 絶対にスカーテ王女は疑うけど、男性である僕が訴えなければ戦争までには発展しない。賠償金か、もしくは貸しとして終わらせてくれるはずだ。


 少なくとも僕は、そう強くお願いするつもりである。土下座だってするつもりだ。


 その覚悟を目の前にいるイザベル王女にも伝わったと思うんだけど、首を横に振られて否定されてしまった。


「我が国はブルド大国と国境を面している。いつ侵略されるか分からない状況だ。ナイテア王国とは同盟を組んでいるが襲われた時に助けてくれるとは限らないし、間に合わない可能性もある。我がテルルエ王国の方がイオディプス君という保険が必要なんだ。助けると思って提案を受け入れてくれっ!」


 今回もまた本能を抑えきれない女性の暴走だと持っていたんだけど、別の側面としてもっと深い事情があったみだいだ。国家間のパワーバランスに詳しくないから詳細まで分からないけど、他国から侵略された際の防衛機能の一つとして僕を望んでいるらしいことぐらいは理解できた。


 国を背負っている王族として、どうにかしたいという気持ちは痛いほど分かる。


 手伝いたいとも思う。


 でも、僕を拾ってくれたレベッタさんパーティや保護してくれているスカーテ王女を裏切るわけにはいかない。


「残念ですけど、それはできません」


「どうして!」


「レベッタさんたちと一緒に暮らすって決めたからです」


 きっと最初に出会ったのがイザベル王女だったら、提案を受け入れただろう。


 悪い人じゃないからね。


 でもそうならなかった。過去は変えられない。


「そうか……なら、力ずくでものにするしかないな」


 雰囲気が変わった。瞳が光る。


 イザベル王女がスキルを発動させたようだ。


「私のスキルは捕縛だ。視界に収めた人、全員の体が動かなくなる」


「口は動かせるんですね」


「相手をいたぶるには便利だろ」


 ヘンリエッタさんがやってきた。手に鞭を持っている。短くて、先端が複数有るバラ鞭と呼ばれるものだ。打たれた時に力が分散するから、一本鞭に比べると痛みが少ない。


 何で知っているかって?


 クソ親父が自慢げに語りながら母さん使っているのを見ていたんだよ。


 思い出すだけで吐き気がする。


「ヘンリエッタさん? どうするつもりですか?」


「わがままな君をお仕置きするんだよ」


 何もない空間に向けて鞭を振るった。パシンッ! と乾いた音が鳴る。


 脅しているみたいだ。


「そんなことして何の意味があるんですか。僕は意見を変えませんよ」


「可愛い顔を傷だらけにして、私だけのものにしちゃいたい」


 うぁ……。この人、いたぶるのが好きな性格なんだ。だいぶ歪んでいる。


 力では絶対に勝てないので、僕だけで逃げ出せない。なんて無力な存在なのだ。


 ダイチはこういった状況が嫌で女性を支配したいと思ったのかな?


 もしそうなら、共感は出来ないけどほんのちょっとだけ同情の余地はある。


「そこまでだ。お前のオモチャにさせるつもりはない」


「それは王女としての命令ですか? それとも女として?」


「両方だよ。せっかく従順で大人しい男なんだから壊す必要はないだろ」

 


==========

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