表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?  作者: わんた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/189

ルアンナが動いた

 アグラエルさんに抱きかかえながら森の中を進んでいる。


 落ちないように腕を首に回してしがみついていると、耳元に息がかかるようになった。全身がゾワゾワとする。心地よいけどちょっと足りない。快楽を感じる直前で止められているみたいだ。もどかしい。


 だからといって求めるようなことをしてしまえばアグラエルさんだけじゃなく、みんなが仕事を投げ捨てて暴走してしまうので、生殺しの時間に耐えなければいけない。


「疲れてないか? 休みたくなったらすぐに言うんだよ」


 僕の自制心を試すかのように耳元でささやかれた。


 さらに強く抱きしめられたことで、顔の位置が変わって髪に触れる。男を誘惑する甘く、とろけるような匂いがした。普段とは違う。抱きしめることを前提に香水を付けていたのかもしれない。


 欲望に頭を揺さぶられながらも、僅かに残った理性を働かせて返事をする。


「はい」


 これ以上は何も言えなかった。目を閉じて何も考えないようにする。しばらくしてメヌさんが抱きかかえてくることになったけど、ずっと同じ状態を続けていた。


 楽しいおしゃべりを期待していただろう彼女たちには悪いことをしているかもしれないけど、これもダイチを倒すためだ。お互いに我慢するしかない。




 森の中を進みメヌさんからレベッタさん、ヘイリーさんと抱きしめる係が変わったところで、ダイチがいると思われる小屋が見えてきた。


 騎士たちはすでに包囲を進めていて隠れている姿が視界に入る。戦う予定のない僕たちは、近くで様子を見ることにすると急にドアが開いた。


 両手を挙げたデブガエルが出てくる。


 泣いているみたいで目から涙が流れていた。


「抵抗はしないから助けてくれ!」


 命乞いしても許されると思うなよ。お前たちは多くの女性を傷つけたんだから、死を持って罪を償う必要があるんだ。


 僕はそう強く思うんだけど、レベッタさんの考えは違うみたい。


「これは保護しないとまずいねー」


「どういうことですか?」


 捕獲とかならわかるんだけど、なんで保護になるんだろう。


「保護を求める男性を拒否してしまうと、トリニティ神聖皇国が攻めてくるかもしれないんだよ」


「無茶苦茶な国があるんですね!?」


「男性を神の遣いと崇める国だからね。イオ君は近づかない方が良い」


 性別が違うだけで、人の上位的な存在として扱われるの?


 意味が分からない。


 アグラエルさんの発言は僕の想像を超えるものだった。


「ルアンナが動いた」


 話している間に現場では変化が出ていたみたい。ルアンナさんと四人の騎士がデブガエルに近づいている。


 剣を抜いて警戒しているみたいだけど大丈夫かな。プライドの高いあの男が本当に降参するとは思えないので、スキルブースターをかけている状態でも心配になってしまう。


 騎士の四人がデブガエルに触れて、腕を後ろに回して紐を結んでいる。


 何も起こらない。


 本当に諦めて降参したのか?


 僕の直感が間違っていたんじゃないかと疑い始めていると、急に騎士たちが痙攣して倒れてしまった。


 拘束される直前で解放されたデブガエルは、ポケットから黄色い球を取り出す。


「あれは魔道具っ!!」


 最初に気づいたのは鍛冶のスキルを持っているメヌさんだった。僕を抱きしめているヘイリーさんごと押し倒す。アグラエルさんが氷の壁を作って僕たちを囲む。


 轟音がした。


 氷の壁が破壊される。


 騎士たちは倒れていた。鎧から煙みたいなのがあがっていて、肌の一部が赤く爛れている。やけどもしているみたい。


 ルアンナさんは膝をついて耐えているみたいだけど、苦しそうな顔をしていた。


「どうだ! 俺様の力は!!」


 倒れている騎士を踏みつけると、大声を出して笑っている。


 強力な魔道具によって優位に立てていることもあり油断していて、僕たちには気づいてないようだ。


「あれは危険だ! レベッタさん!」


「はーい!」


 すばやく弓を構えて矢を放った。狙い通りに黄色い球の魔道具に当たって、デブガエルの手から落ちる。


「まだ生き残りがいたのかッ! 害虫みたいにしぶとい女だッ!」


 文句を言いながら落ちてしまった魔道具を拾うとするけど、氷の矢が飛んで地面に刺さる。次は当てるぞという警告にはなったようで、動きが止まった。


 デブガエルを殺すタイミングは何度もあったけど、彼女たちは実行しなかった。


 男を害することに心理的な抵抗が働いてしまったのだろう。重傷を負っている騎士たちのためにも早く倒さないと。そのためには同性である僕が戦うべきだ。


「僕が行く!」


 殴りつけようとして走り出す。


 一瞬だけ驚いた顔をしたデブガエルだったけど、すぐ笑顔に変わる。


「またお前か! 殺してやる!!」


 瞳が光った。スキルを発動させたみたいだ。近くに転がっている石を投げつけてくると、あり得ないほどの速度をだして近づいてきた。走っているため回避は不可能。腕を犠牲にして払いのける覚悟を決めると、ヘイリーさんが間に割り込んで、盾を使って受け流してくれた。


「イオ君は私が守る」


 自慢げな顔をしているけど突っ込まない。今はデブガエルを潰すのが先だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宣伝
▼新作を始めました▼
防具専門の鍛冶師~異世界に転生して35年。おっさんは隠居生活をすると決めたのに、今さら没落した元悪役令嬢がやってきて手放してくれないんだが~
https://ncode.syosetu.com/n4490lf

8e83c4k0m4w6j1uz35u7mek5e1km_ca_2fw_3h0_biiu.jpg
AmazonKindleにて電子書籍版が好評販売中です!
電子書籍販売サイトはこちら

矛盾点の修正やエピソードの追加、特典SSなどあるので、読んでいただけると大変励みになります!
※KindleUnlimitedユーザーなら無料で読めます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ