彼が魅力的だったからです!
目を覚ましたらベッドの上だった。さっきまで騒がしかったと思ったんだけど、今はすごく静かだ。
周囲には女性の騎士が数十人もいる。ぐるりと囲んで僕を見ているのだから、恐怖を覚えてしまう。しかも黙ったままで誰も話しかけてこない。
男性特区で見たことある顔がいくつもあるので護衛として配置されているんだろうけど、もう少しこう、繊細な気づかいをして欲しかった。
「おはようございます」
体を起こして挨拶をすると数十の顔が一斉に笑顔へと変わった。
なんだか怖い……。
この世界の男が女性に対して厳しい対応をする気持ちが少しだけ分かってしまった気がする。
「イオディプス君が目覚めた。ルアンナ隊長に報告してこい!」
頭に羊の角をつけた獣人の女性が命令を出したけど誰も動こうとしない。
手を出してこないけど舐めるようにして、ねっとりと見られている。男に慣れていないという部分を差し引いても少し異常だ。何を見ているのか視線を追っていくと一点に集中していた。
掛け布団を押し上げ、盛り上がっている。僕の股間、元気な息子がいた。
生理現象を見られたみたい。
かーっと顔が熱くなる。
変な汗が出てきた。
すぐ足を曲げて体育座りして隠す。
「「「えーーーーーっ!!」」」
女性騎士たちから一斉に抗議の声を出した。
さっき命令したリーダーらしき人も同じだ。みんな職務を忘れている。
「あの大きさって標準なのかな?」
「話に聞いていたよりも大きいかも」
「多分、このぐらいのサイズ」
「うそっ。あれがあそこに入るの!?」
「無理だって!」
「でもチャレンジしてみたい」
「「「わかる~~」」」
本人たちはひそひそと話しているつもりなんだけど、僕の耳にもしっかりと届いている。女性の猥談を目の前でされてしまい、さらに恥ずかしさが高まる。
もう誰でもいいから助けてっ!
「お前たちーーーーっ!!」
ドアが勢いよく開くとルアンナさんが入ってきた。
女性騎士たちは手をピシッと伸ばしておでこに当て敬礼をする。
「イオディプス君が目覚めたら教えろといっただろ! なぜおしゃべりしていた!」
「彼が魅力的だったからです!」
羊獣人の女性が即答した。後ろめたさなんて感じてないみたい。むしろ当然でしょ? みたいな態度だ。
会社で働いたことのない僕でもダメな対応だめだってわかったんだけど、ルアンナさんは怒らなかった。
「どこが魅力的だったのか教えろ! 具体的にだっ!」
まさかの発言だ。
この世界の女性を甘く見ていた。
詳細を聞こうとするなんて思わなかった!
チラッと僕のことを見てから羊獣人の女性はルアンナさんに耳打ちをする。
彼女たちの視線が、隠している股間部分に移った気がした。
「その話は間違いないな?」
「はい。私だけじゃなく、部下たちもバッチリ見ました」
「なら仕方がないな。今回は許そう。全員、別室で待機してろ」
「かしこまりました!」
許されるんだ……とあっけにとられている間に、女性騎士たちは部屋を出て行ってしまった。残されたのはルアンナさんだけ。
「寝込みを襲われないように警備していたんだが迷惑だったか?」
「そんなことないですよ」
女性騎士たちは見ていても手を出してくることはなかった。そのおかげで意識を失っている間は快適だったのだ。
上司に評価を下げるようなことを伝えなくてもいいだろう。
「ならよかった」
ほっとした顔をしながらベッドに腰掛けると、ルアンナさんは僕の頬に触れた。
「どうして僕はここで寝ていたんですか?」
部屋に案内された後、テレシアさん、レベッタさんの二人に襲われたところまでは覚えているけど、衝撃的な出来事だったこともあって詳細を覚えてないのだ。
「女性に襲われたことがショックだったみたいでな。レベッタと同じタイミングで気を失ったから、王族専用の寝室に運んだんだ」
少しだけ思い出してきた。
そういえば初めて女性の大事なところを触ってしまい、興奮しすぎて気を失ってしまったんだ。新しい体は、ああいったことに耐性がないみたい。
「君を襲ったテレシアとレベッタは拘留しているから安心していいぞ。希望する処分があったら言ってくれ」
貴重な男性を襲った罪で捕まっちゃったの!?
ダメだよ。そんなの。
「でしたら二人を解放してください」
「え? イオディプス君を襲ったんだぞ?」
「僕は二人が今まで通りの生活ができることを希望します。それが叶わないのであれば、国を出て行く覚悟もありますからね」
脅すようなことを言ったらルアンナさんの顔が真っ青になった。
頬を触れている手が小刻みに震えている。それほど先ほどの発言はインパクトが大きかったのだ。
「わ、わかった。スカーテ王女殿下に今のことを伝えよう。希望は必ず通すから早まらないでくれないか?」
「もちろんです。ルアンナさんを信じて待っています」
「ありがとう。頑張ってくるっ!」
立ち上がると走って部屋を出て行ってしまった。ドアは開けっぱなしで、ヘイリーさん、メヌさん、アグラエルさんが覗き込んでいる。
話がまとまるまで時間がかかるだろうし、三人を招き入れておしゃべりをすることにした。
もしスカーテ王女が拒否したら、一緒に拘束されている二人を奪い取ってから逃げることも出来るしね。悪い考えではないはずだ。
AmazonKindleにて電子書籍版の予約が開始しました!
矛盾点の修正やエピソードの追加、特典SSなどあるので、読んでいただけると大変励みになります!
※KindleUnlimitedユーザーなら無料で読めます!





